土とふるさとの文学全集9

土とふるさとの文学全集9
家の光協会、1976年
2371冊目

なんと、全15巻も出ている全集。

第一巻の内容は、こんな感じ。
遠野物語 / 柳田 国男
お山 / 石坂 洋次郎
大根の葉 / 壷井 栄
暦 / 壷井 栄
多甚古村 / 井伏 鱒二
蕗のとう / 山代 巴
気違い部落周遊紀行 / きだ みのる
かんころめし / 町田 トシコ
越後つついし親不知 / 水上 勉
子種 / 有賀 喜代子
甲府盆地 / 熊王 徳平
苦海浄土(抄) / 石牟礼 道子
死屍河原水子草 / 野坂 昭如

解説の杉浦明平さんは、9巻のことしか語っていないので、全集の意図がどこにあるかはわからない。この巻自体は農民を主軸とする被支配階層を歴史的に眺めようとした文学が納められているという。

再び草の野に / 田山 花袋
義民甚兵衛 / 菊池 寛
本郷村善九郎 / 江馬 修
コシャマイン記 / 鶴田 知也
土の中からの話 / 坂口 安吾
沖縄島 / 霜多 正次
秩父困民党 / 西野 辰吉
辛酸 / 城山 三郎

もちろん、足尾銅山つながりで『辛酸』を読むために借りたのだけれど、すごいものに出会ってしまった。

杉浦さんの解説によると
1. 土に縛り付けられた農民・農奴の上に古代国家が築き上げられた。
2. 平安朝以降は貴族文化から泥のにおいが消える
3. 貴族らは精巧な官僚組織をこしらえて、中級下級役人の人事権・任命権を掌握し、全国から租庸調を運び込み、貴族世界を支えた。
4. 今昔物語にのみ、草創期の武士が泥のにおいをさせながら活躍していることが描かれている。
5. 中央・都・貴族・僧侶の文化と地方・田舎・農民の文化のあいだに質的な差が開いていた。
6. 中世、社会に下克上は起こったが、文化の面では下克上はまれ。
7. 江戸時代は鎖国と封建的管理によって思想・言論が取り締まられた。特に農民に対する厳しい制限。衣食住までも。『江戸時代の農民の生活』
8. 百姓一揆とは陳情であり、収奪の度合いをゆるめてほしいという願いであり、社会の転覆をねらうものではない。
9. 百姓一揆に関する情報は禁圧された。
10.歴史が天皇史観から解放されるとともに、庶民生活史料が豊富に提供されるようになった戦後、百姓一揆を描くことができるようになった。
11. 農山村には敗戦にいたるまで前近代的習俗・人間関係が濃厚に残されていた。

百姓の生きる姿は、描かれてこなかったのが、日本の文化なのだ。

民主主義ってなんだ?

いまだに、「百姓」の生きる姿がどのようなものであるか、認識が共有されていないのではないか。

昨日も、埼玉県の地元の人たちとお茶飲み話をしていたが
・共産党の票は減っている。
・投票の優先順位は「親族・地域・企業」で、戦争や原発や有機農業などのテーマで投票する人はいない。

そうなのだ。地域の自治体はいまだに「中間集団全体主義」なのだ。
http://ericweblog.exblog.jp/17147865/

だからこそ、「民権」そのものを訴えて、最後まで戦った田中正造の戦いの意味は大きく、また、同時に理解されなかった。主張ではなく、陳情だと、受けとめられたのだ。

そして、そのことを、死の床にあった田中正造はつぎのように喝破する。
「みんな正造に同情するだけだ。正造の事業に同情して来ている者は一人もいない。」588

ともあれ、この巻に収録されている「沖縄島」はすごい。すごいものに、また出会ってしまった。
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by eric-blog | 2015-10-11 13:47 | ■週5プロジェクト15 | Comments(0)
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