戦争の読みかた グローバル・テロと帝国の時代に
加藤朗、春風社、2008
2464冊目
ニーチェの言葉、「良心の疚しさ」
負債は負債にしかすぎない。それを負い目や罪責と感じるのは「良心の疚しさ」があるからだ。105
「敵意、残忍、迫害や襲撃や変改や破壊の喜び----これがすべてが、こうした本能の所有者自身へと方向を転ずること、これこそが<良心の疚しさ>の期限なのだ。(ニーチェ、463頁)
脱近代思想と、民族主義、共産主義などを生み出してきた西洋近代思想の衰退。
1968年が分水嶺。現代テロの始まりの年。
イスラム世界の「ルサンチマン」という弱者の正義によりそい、植民地主義という負債を「良心の疚しさ」のなかへ押し戻すことで、近代西洋文明世界に新たな原罪を生み出した。105
西洋文明世界に植民地主義という暴力をふるわれ債権者となったイスラム世界がテロを快楽と感じる心情
「おのれの権力を無力なモノの上に遠慮会釈なくふるうことができるという快楽できるという快感でもあれば、「悪をなす楽しみのために悪をなす」という悦楽でもみあれば、暴行を加えるということの享楽でもある。」
ニーチェ、434頁、『善悪の彼岸』ニーチェ全集II、筑摩書房、2003より
イスラム・テロがなくなりそうにもないのは、テロが西洋文明世界には自虐の快楽を、イスラム世界には優越、悪行、暴行などの快感を与えるからである。107
「苦悩は負債の補償」と西洋文明世界はテロを受け入れる。
「苦悩するのを見るのは愉快、苦悩させることはさらに愉快」とイスラム国はテロを実行する。
ルサンチマン(怨恨)と良心の疚しさの相互応答のなかで生まれた暴力。
果てしのない怨恨の感情と疚しさの道徳の相互応答。
Zur Genealogie Der Moral
第三部 「新しい世界」とは何か
第五章 「新しい世界」の政治
第一節 配分政治と承認政治 100-
欲望と気概
配分価値と承認価値
配分政治と承認政治
生存の手段的価値=福祉価値=安全・富み・技能・健康=利益体系
生きがい=名誉価値=権力・地位・愛情・徳義=信条体系 社会状態において意味を持つ。
第6章「新しい世界」の安全保障
グローバル公共圏
その権力構造は情報/知。
市民社会と非市民社会
財産と教養を入場基準とする市民社会。
何が「公共の利益」かを定義し、また「公共の理解」に反する人びとを非市民として差別する権力を有している。247
自由・平等・公正という正義も、じつはキリスト教西洋文明に固有の正義であって普遍性はないのではないか。また民主主義や人権の概念も一元的ではなく、文明や文化、国や地域によって異なり、多元的ではないか。248
このような市民社会の独善的、一元的な価値にもとづく独断的な価値判断が公共圏に権力構造を生んでいる。そしてこの価値判断への承認的正義にもとづく異議申し立てとして、グローバル・テロリズムが発現する。(斎藤『国家を超える市民社会』、217-228頁)
テロへの共感はどこからくるのか?