ヒトラーの子供たち
ジェラルド・ポスナー、ほるぷ出版、1992 2449冊目 原著1991年 いま紹介している一連の本は、BS世界のドキュメンタリー「ヒトラー・チルドレン」に触発されてのことだ。 その中に「Der Vater」という父への思いを書いたニコラス・フランクさんが紹介されている。2005年に出版された本だ。 こちらの本は12人のナチス時代の幹部の子供たちに取材したもの。 ハンス・フランク ルドルフ・ヘス カール=オットー・ザウァー ヒャルマール・シャハト ヨーゼフ・メンゲレ カール・デーニッツ クラウス・フィリップ・シェンク・フォン・シュタウフェンベルク エルンスト・モヒャール ヘルマン・ゲーリング マクス・ドレクセル ハンス・フランクの二人の子供は対照的だ。 兄であるノーマンは理解を示し、ニコラスは憎むのだ。 ニコラスの本は、ドイツ語だけで、英語もないし、原著は1万円以上の高値なので、まだ見ていない。が、ドキュメンタリーの中で、ニコラスは言う。「自分も、幹部の子供として、追い立てられるユダヤ人を見て、笑っていた」と。 それが、許せない。だから、彼は、誰も信じないという。表面的な反省や、嘆きや、非難など、すべて嘘っパチでしかないと。 そんな経験をした「戦争時代の子供たち」が日本にもいるのではないか? 軍需に沸く経済の中で、「ぼっちゃん坊ちゃん」と持ち上げられた体験や、満州や中国でかしづかれた体験。そして、植民地の人々を追い立て、あざわらい、大人とともに笑った体験をした子供たちが、日本にもいるはずだと。 ドイツの罪は消えない。それは戦争犯罪だけのことではなく、ホロコーストがあるからだ、と感じる。 ある人種を組織的社会的に抹殺する試み。人類史の恥。 では、日本には「戦争犯罪」しかないのか? 人道の罪はないのか。 アジアを蔑視し、収奪し、そのいのちをなんとも思わなかった精神は、そこにないのか。 その部分を断罪せず、「戦争犯罪」だけに焦点化するから、亡霊が立ち上がるのだ、何度も、何度も。「おじいさんがそんな悪いことするはずない」と。「国のために戦った人は等しく美しい」と。 日本のアジアに対する差別的、非人道的な態度そのものが断罪されない限り、同じ亡霊に、わたしたちは惑わされ続ける。 太平洋戦争は、日本のアジアに対する、帝国主義や西洋近代化の東洋に対する、科学技術産業社会の人類社会に対する、侵略だ。 その侵略の姿、その侵略の非人道性とは何かを見つめない限り、わたしたちは次の未来を導くことはできない。いいポジショニングなのになあ、日本。 Der Vater: Eine Abrechnung Taschenbuch – Illustriert, 2005 von Niklas Frank こちらから見ることができます。 https://www.youtube.com/watch?v=DoSgAlmy3k0 http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/130815.html ヒトラー・チルドレン ~ナチスの罪を背負って~(再) //title data 2013年8月15日 木曜深夜[金曜午前 0時00分~0時50分] 13年10月4日 金曜深夜[土曜午前 0時00分~0時50分] 14年3月27日 木曜深夜[金曜午前 0時00分~0時50分] 15年1月28日 水曜深夜[木曜午前 0時00分~0時50分] 15年2月5日 木曜 午後6時00分~6時50分 15年3月12日 木曜 午後6時00分~6時50分 ヒトラーとナチスによるユダヤ人集団虐殺、ホロコーストを指揮したナチス幹部たちの残虐な行為は、彼らの子孫に何を残したのだろうか。 ヒトラーの後継者に指名されていたゲーリングを大叔父に持つベッティーナ・ゲーリング。「彼の残虐性を受けついでいるかもしれない」血筋を断絶したいと、兄とともに避妊手術を受けた。ナチスの親衛隊長ヒムラーの弟の孫、カトリン。家ではヒムラーのことはタブーだったが、沈黙を破り、その過ちへの罪悪感を綴った本を出版した。今はユダヤ人と結婚している。アウシュヴィッツ収容所の所長だったヘスの孫、ライネル。父は収容所敷地内の邸宅で育った。今回初めてアウシュヴィッツを訪れたライネルは、邸宅から壁一枚隔てた場所にガス室があったことを知り、絶句する。イスラエルから訪れていた学生たちから辛辣な質問を浴びせられたライネル。ホロコーストを生き延びた老人から「君がやったわけじゃない」と声をかけられ、堪えていたものがあふれ出す。 ナチスの重要人物の息子や孫、子孫に当たる5人のドイツ人を取材。親族をホロコーストで亡くしたユダヤ人監督が、過去を背負いながら生きる彼らの姿を描く。イスラエルとドイツの共同制作。 原題:Hitler's Children 制作:Maya Productions / WDR (イスラエル/ドイツ 2011年) この番組についての感想で感覚的に近いと思ったブログ。根本的には違うけど。 http://blogs.yahoo.co.jp/shibuyaumare/68135682.html ■My Father’s Keeper The Children of NAZI Leaders—An Intimate History of Damage and Denial Stephan Lebert, ドイツ語での出版2000年、英語版は2001年。 Der Faterの価格に驚いて、安いこちらを購入。 これはこれでおもしろい。 というのも、1959年に、著者の父親が行ったインタビューを踏襲して、その息子のジャーナリストが1995年にその後をインタビューした記事とで構成されている。 著者の父親は、1929年生まれ。戦争が終わった時は、16歳。熱心なヒトラー・ユーゲントのメンバーであったという。 7人のヒトラー重鎮の、子どもたち。子どもたちの間でもリアクションはさまざまだ。 あとがきに紹介されているのは以下の本。うむむむ。これも翻訳がなさそうだ。 Living Against the Shadow, Martin Bormann
by eric-blog
| 2015-02-28 10:00
| ■週5プロジェクト14
|
最新の記事
ERICからのお知らせ
2023年度ERIC主催研修
ESDファシリテーターズ・カレッジ 前期 テーマについて学ぶ 【ESDイシューズについて学ぼう!】 3つのイシューズから課題に気づき、問題解決に取り組む 前期 【テーマ: ESDイシューズについて学ぼう!】 3つのテーマから課題に気づき、問題解決に取り組む 環境/PLT 2023年6月24-25日 国際理解 2023年7月29-30日 人権 2023年9月23-24日 後期 【スキル: ESDコンピテンシーを育てる!】 3つのキー・コンピテンシーで問題解決の力を高める わたし 2023年10月28-29日 あなた 2023年11月25-26日 みんな 2024年 1月27-28日 各講座土日開催です。 TEST教育力向上講座は2024年3月に開催予定。 参加はオンライン受講も受け付けます。お問い合わせください。 参加申し込み: webでの申込はこちらから https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfCwrZxu0NEhmJINrbtxX7knhM_eqIX3Qahd--mdkvgyowGlw/viewform ==問い合わせ== eric(a)eric-next.org メルマガ登録はこちらから。 http://www.mag2.com/m/0000004947.html 検索
カテゴリ
●3.11地震・津波・原発 ○子ども支援・教育の課題 ◎TEST 教育力向上プロジェクト ☆よりよい質の教育へBQOE ☆アクティビティ・アイデア ☆PLTプロジェクト ◇ブログ&プロフィール・自主学習ノート □週5プロジェクト23 ■週5プロジェクト22 ■週5プロジェクト21 ■週5プロジェクト20 ■週5プロジェクト19 ■週5プロジェクト18 ■週5プロジェクト17 ■週5プロジェクト16 ■週5プロジェクト15 ■週5プロジェクト14 ■週5プロジェクト13 ■週5プロジェクト12 ■週5プロジェクト11 ■週5 プロジェクト10 ■週5プロジェクト09 ■週5プロジェクト08 ■週5プロジェクト07 ■週5プロジェクト06 ■週5プロジェクト05 ■週5プロジェクト04 ■週5プロジェクト03 △研修その他案内 □研修プログラム □レッスンバンク ▲ファシリテーターの課題 ?リンク 草の根の種々 ERICニュース 国際理解教育and You詩歌 □ 最新のコメント
フォロー中のブログ
PLT2006年版翻訳プ... ERIC用語集 PLT 幼児期からの環境体験 リスク・コミュニケーショ... アクティブな教育を実現す... プロジェクト・ラーニング... エコハウスでのエコな生活... 外部リンク
以前の記事
2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2005年 01月 2004年 12月 2004年 11月 2004年 10月 2004年 09月 2004年 08月 2004年 07月 2003年 05月 最新のトラックバック
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||