91-1(421)先生も人間です
ジャック・グリーンシュタイン、晶文社、1989 原著は"What the Children Taught Me", 1983 著者は、37歳から13年間教員をし、そしてその後10年間校長を勤めた人。率直に、教室での出来事、学校でのできごとを、462ページにもわたって書いている。彼が勤めていたのは小学校なのだが、1973-74年という時にアメリカの高校にいたわたしとしては、懐かしいような状況でもある。 徹底した「体罰反対」の立場に立って実践してきた人で、「怒ってはならない」ことをいましめに、しかし、もちろん、人間だからうまくいかないこともあるけれど、工夫を重ねてきた人。本紹介のコピーには「教室は舞台、先生は役者」と書いているけれど、実際に読んでみるとそんな印象は薄い。「教員」という役割をわきまえ、その役割にふさわしい態度、姿勢、行動と、そのための工夫をしてきているというだけだ。て、そのことが大変なことなのだけれど。 例えば、こんな場面だ。「お楽しみ祭り」という小学生とその家族のための資金集めを兼ねたバザーがある。高校生はトラブルを起こすので立ち入り禁止だ。しかし、「弟のために、親がわりに来た」とかなんとか言って、すべりこんでいるグループがいる。しかも、黒人系とメキシコ系の両方が来ているので、お互い、相手のグループが出て行くまでは出て行きっこない。しかも、すでにチケットを買って、最後の抽選会で当たりが出るのを待つつもりだという。 「状況はむずかしくなった。三人いっぺんに、みるみるうちに、まるで2.3インチ背が伸びたように思えた。助けを呼んだほうがいいかもしれない。それだけは避けたかった。もう私は汗だくだった。...私は自分に言って聞かせる。もう一押ししてみることにする」321 ね、こんなことなんですよ。しっかりとその役割をまっとうしようよ、ということ。 そして、著者は、教員の役割というのは人間的に語りかけ、働きかけ続けることなのだと、全編を通じて言っている。 「えてして、一年か二年の経験で、その結論を一般の人たちに問う資格ありと思い込む連中が専門家だ。かりにそんな短期間で「専門家」になれる職業があるとしても、それはぜったいに教えることではない。」24 と、まあ、グリーンシュタイン校長、教育調査と教育調査で何かがわかると思っている教育学者には批判的なのです。 あまり理論的にまとめてある部分は少ないのだが、この二つはなかなかだ。 「教師のためのべからず集」34-36 1. 宿題は多すぎない 2. 終わりのない作業はさせない 3. ノートをつくることを要求しない 4. みてくれのよさを偏愛しない 5. 感想文やテストで読書の楽しみをうばわない 6. 罰のための宿題をたくさん出さない 7. ひっきりなしに生徒をどなったり、わめいたりしない 8. 体罰を与えない 9. 自分が生徒のときに教師にやられていやだったことを、生徒に決してしてはならないそして、ひとつ否定的でないものを入れるとすれば、「こどもの声に耳を傾けよ」これは子どもに同調せよということではなく。」 体罰の悪について342-351 1. 体罰を加えた教師が親になぐられることがある 2. 生徒の仕返しをうけることがある 3. 体罰が増えると教師の腕力の強さやボクシングの腕前が高く評価されるようになる 4. 体罰は生徒・教師の双方にとって屈辱的だ 5. 破壊行為は残る 6. 体罰は生徒の手本となり、暴力が処罰の方法としてふさわしいと思うようになる 7. 体罰を加えられた生徒は、教師と学校に恨みをもつようになる 8. 体罰を認めると、そんなつもりがなくてもけがをさせることがある 9. 教師のゆきすぎと自制心の欠如によるけががおこりえる 10. 体罰が多い学校ほど、規則が徹底しているとは言えない 11. 倫理的に、教師には生徒の役割モデルであってほしい 人を育てるということは、一筋縄ではいかないことだ。そして、それは自分の人生ですらそうなのだ。
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| 2005-07-08 10:01
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