文化の日。朝から4000人の人々が受けたという褒章の報道が喧しい。
このようにして天皇制に絡めとられていくことが、たまらなくいやだ。 いっとき、昭和天皇も亡くなり、平成天皇はリベラルで、少なくともその長男もリベラルで、といったことが続いていた1990年代。わたしのこころは、武装解除してしまっていた。 いまは、平静ではいられない。ピリピリしてしまう。 子どもの頃から、嫌いだった。「押し付けがましいJapan」が。Pushy Japan,I hate it. しかし、いろいろな事柄を知ってしまったいまは、理論的にも嫌いだ。 ・行政がさまざまな施策を、地域に浸透させるために活用する「政策主導団体」の一つが自治会であること。 ・それらの組織が、戦後民主化されずに昔からの「郷党」組織をベースにしていること。 ・地域の名士や名家を中心とした郷党組織が、選挙の時の基盤にもなること。つまり、市町村単位の議員は、昔からの「名家」から出やすかったりすること。 ・それらの市町村単位の選出議員が、都道府県や国政選挙の基盤となっていること。 ・そのように地域の「たばね」を勤め上げると受賞できる。 ・その他、政策主導団体の長などを歴任すると、褒章が受けられる。 地域と天皇制の連動の形。これでは、戦前と変わらないではないか。天皇制に帝国主義に、地元に貢献すること、絆を大切にすることが、絡めとられない保証は、ない。 父親は、教員だった。 管理職にはならず、褒章からも遠かった。 わたしの「押し付けがましい日本」に対する感性の元は、 この父と、その妻である母からだと思っている。 大阪で教員を1950年代ぐらいからしていて、 日本教職員組合の組合員で、 共産党のシンパ、であれば、かなり左。 その父が、いつの頃からか「海軍時代の同窓会」に出かけるようになった。 たいていは、泥酔して帰ってくる。 そして、その「懐かしい」海軍時代の階級そのままの関係を、彼らはいっとき生きるのだ。職位で呼びあい、敬礼し。軍歌をうたう。 人がそのように「青春だったから」という理由で、 いまは生きることのない階級社会を追体験することが できることが、いやだった。 その父の姿に、彼のコア・バリューは微塵も感じられなかった。 帝国主義の、そして軍隊の階級社会の論理で、ブルドーザーのように均され、兵士化されてしまった父のからだ。番号となってしまった、彼の存在。 樹木希林のような異端が受賞することすら、「組み入れられていく」恐怖となって襲ってくる。 変質しない彼らと、併合されていく異端たちと。 「帝国」という併合するパワーが存在する限り、この違和感は消えない。 帝国主義史観を復活させる教科書の登場、 慰安婦記述の中学校教科書からの抹消、 議論なき「道徳教育の教科化」、 『わたしたちの道徳』の全国配布とセットにして考えたとき、 これは国定教科書の復活なのではないか。 文化の日、わたしは併合され、均されていくことを、心底恐怖しつつ、「わたしらしさ」に囲まれた場所で、ほーっと、深く息をする。 1980年代の「より高次なアイデンティティへの統合によってしか、わたしたちは協力することはできない」という発見によって、「押し付けがましい日本」から自由になれたと思った。 その自由を、わたしは手放さない。 より高次なアイデンティティとは人権であり、正義であり、地球市民性であり、平和であり、環境倫理であり、ホモ・サピエンスであり、人類であるということ。 多様性はありつつも、より高次なアイデンティティを共有していると信じることができるなら、共存できる。それが万民の法だ。 それらの高次性を踏みにじり、国民国家を自らの力の源泉へと併合する帝国主義という危険性を、日本の天皇制は払拭することができなかったのだと、感じさせることが多すぎて、身が縮む。 なぜ払拭できないのか。「力は力を付与する人がいるから発揮できる」からである。 わたしの父親が、青春をなつかしんだから、 わたしが無害だと思って「力を付与」したからだと、 ふりかえって思うことがないようにしたい。 危険なことは危険だと、言おう。 がいこくじんとして、この日本に暮らすために。 うちゅうじんとして、この地球で生き延びるために。
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| 2014-11-03 15:11
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