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民主主義と差別のダイナミズム 女性差別の社会思想史

民主主義と差別のダイナミズム 女性差別の社会思想史
安川寿之輔、安川悦子、明石書店、1987
2312冊目


ルソーも福沢諭吉も差別主義者だった。

水田珠枝は、・・・ルソーの近代国家を「家父長的権威を支柱とする自己完結的家族と平等な市民の契約による国家という、対立した原理のうえに成立する組織」だととらえた。10
ルソーの「家族」と「国家」は・・・むしろ「類似性をもつ」ことが強調され、その両者の内的連関の構造が明らかにされる必要があると思われる。10

(このあたり、石田雄さんの分析が有効だなあ。)

近代資本主義が差別を必要とする理由の第一は、経済的理由、熟練労働の不熟練労働への代替
第二の存在理由は、支配者にとっての有効な政治的役割・・・差別をテコとする分裂支配によって、賃労働の搾取
第三の役割、機能として、内で支配・差別される民族が外に向かって支配・差別を欲するというメカニズム・・・排外主義的・侵略主義的民族意識の方向に動員する  25-26

注釈9
すべての差別は・・・例外なく「いわれ(原因・理由・根拠)」をもっているのである。・・・人はその「一定の諸関係」の除去を通して、人間差別のすべての廃絶の可能性を展望することができる。

女性は「出産をになう性」であり、その性差が性役割分担につながり、女と男が愛し合う関係にあることが女性解放運動を遅らせた。28

福沢諭吉の女性論 43-

ウェーランドの『修身論』を下敷きにしている。

しかし、福沢は女性参政権、職業につくこと、公娼制度批判、家庭内では男女平等の四点について、論じることはしていない。47

1893年2月、アメリカからの抗議によって海外渡航扶助取締の外務省訓令がだされていたにもかかわらず、福沢は対外的進出を呼号した。賎業婦の出稼ぎ。70

何万、何十万という女性が、公認されて男性のたんなる性的欲望の充足器官におとしめられているという事実が、その社会の男性の異性観を大幅に歪めることは必然である。そうした社会の男性が、異性を真に自己と対等な人生の協力者とみることは不可能である。・・・「第一の性」としての男性と、自立し得ない「第二の性」としての女性が貧困を媒介にして出会う時、女性の芸者や妾への転落も容易に生じるであろう。71

近代日本の男性は、約2%の男子を除いてなお政治的主体としての自立を認めておられず、また、多くが半封建的な寄生地主制や地主小作人的侶牛関係の支配する工場制度のもとで、近代的な経済主体としても十分自立しえない小作農や「労働者」として存在していた。そしてこの「絶対主義」天皇制下の臣民は、そうした自己の非自立性を、植民地アジアの人民はじめとして、被差別部落民、障害者、女性など各種被差別人民にたいして尊大な「主人」としてふるまうことによって、自己の「奴隷」性を忘れるように求められていた。93

1-3 被差別部落の女性史

差別のゆえに、部落の女は、宿命論者として・・・逆に道徳や常識を足げにし、家族さえも食い物にして阿修羅のごとく生きた・・・この両極の生涯を生きた。106

「村の娘は気が強い」

太平洋戦争中、・・・長野の部落の女性たちは「日本がめちゃくちゃになってくれたら」と祈った。(柴田道子『ひとすじの光』)

上野英信『天皇陛下万歳』
『橋のない川』第六巻
『おんな・部落・沖縄』
東上高志編『わたしゃそれでも生きて来た』

福岡県婦人水平社は、部落の女性は「女性として家庭奴隷・・・無産階級の婦人としては賃金奴隷・・・部落婦人としては誤れる因習的差別待遇」の三拾の迫害のもとにあるととらえた。110

新藤東洋男『筑豊の女坑夫たち』
もろさわようこ『信濃のおんな』
『死んで花実が咲くものか』

女坑夫に部落出身が多い。
女性の割合が減ったのは朝鮮農民が、強制連行されてくる1939年以降。123

「国際的にも最高」といわれるガス炭塵爆発や落盤による災害・・・「世界にもまれな日本石炭資本の罪悪を黙認する、最大の要因」=地主制下における農民の炭坑労働者にたいする激しい侮蔑と差別意識。127


『差別のなかを生きぬいて』
『日本のお母さんたち』
『筑豊に生きる』
『地底の青春』
『近代民衆の記録2』
『地の底の笑い話』

女坑夫のいる筑豊の村はほとんどが被差別部落。

麻生財閥の諸坑が「筑豊第一の圧制のヤマ」「差別と暴力のヤマ」「圧制と低賃金のヤマ」などの悪名をほしいままにしたのは、こうした部落民と朝鮮人坑夫を一番多く雇用していたことによる。128

「未解放部落をもっとも多くかかえているといわれている広島県からの労働者が、ことに多かったこと」130

4 男女平等教育と日本の教育学研究

三重のとらえなおし153
1. 支配階級の自己教育
2. 労働者大衆の教化の組織
3. 労働者の自己教育組織

2. の問題設定そのものが差別構造だが。

そうだったんだあ。わたしは『エミール』を読むことができなかった。手にはとったのだが。まったく、読めなかった。教育学的には必須図書みたいに思われているけれどね。福沢諭吉も読めなかった。
それは宮本輝『青が散る』を読んだ時の吐き気にも共通している。

気持ちがゆれ動いた時が、言語化が必要な時なんだなあ。なんてことに59才になって気づくわたし。気持ちがゆれ動いたことは、気持ち悪いからなかったことにしてきたわたし。記憶にすら止めていないなあ。


【安川書籍】
女性差別はなぜ存続するのか-差別論入門-、明石書店、1996
女性差別の社会思想史 増補・民主主義と差別のダイナミズム、明石書店、1987
福沢諭吉の教育論と女性論 「誤読」による<福沢神話>の虚妄を砕く、高文研、2013

樋口さんが「日本型排外主義」の問題をアジア蔑視の帝国主義とからめて論じたおられたが、安川さんの論証によれば、福沢諭吉こそが現在のヘイトスピーチ問題の種をまいた人という捉え方だなあ。
by eric-blog | 2014-09-24 14:54 | ■週5プロジェクト14
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