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九月、東京の路上で 1923年関東大震災 ジェノサイドの残響

九月、東京の路上で 1923年関東大震災 ジェノサイドの残響
加藤直樹、ころから、2014
2202冊目

「右翼政治家たちがけしかけ、メディアが展開する、集団ヒステリーのような「非人間化」=レイシズム・キャンペーンを誰も疑問に思わない状況。それはどこにたどり着くのだろうか。私たちはそのなかで、いつまで当たり前の共感を手放さずにいられるだろうか。」205

「様々なアイデンティティーをもつ人々が行きかう東京が、私は好きだ。しかし、そうした多様性を豊かさへと育てて行くには、努力が必要なのだと思う。関東大震災時の虐殺を隠蔽せずに記憶しておくことは、その一部である。」あとがき、p.215

ヘイトスピーチに抗して新大久保に毎週のように通ったという著者によってまとめられたこの本は、単なる記憶の書ではない。いまにつながる何かが、そこにあると見たために、まとめられたのだ。

日本だけでもない。『災害ユートピア』というレベッカ・ソルニットによる本では、2005年のハリケーン・カトリーナによる被害を受けたニューオリンズで起こったことは「エリート・パニック」と名付けられている。保安官が噂を流して自警団を暴走させたのだ。192

それはまったく関東大震災の時に起こったことと同じである。関東大震災の時、流言飛語を飛ばしたのは正力松太郎である。さまざまにあがってくる情報に対し、パニックを起こした彼は、「朝鮮人が謀反を起こしているといううわさがあるから触れ回ってくれ」と新聞記者たちに要請したのだ。40

これが流言にお墨付きを与えることになる。

しかし、彼がその責任を問われて処罰されることはなかった。

同じことが石原慎太郎発言でも繰り返されているのだ。無批判に。
196

一方で、もちろん、警察署が駆け込んだ朝鮮人らを保護したケースもあった。しかし、寄居署に保護された具学永の場合は、留置所に押し寄せた群衆によって、なぶり殺される。9月6日のことである。100

寄居の町では知らない人はいなかったとされる飴売りだった具。その隣人の死に対して墓が建てられたという。名前と出身地がわかり戒名がつけられているこのケースは、稀有な例だという。101

寄居、正樹院
http://tokyo1923-2013.blogspot.jp/2013/09/1923962.html

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正力や石原のような権力者に対抗するのに、「当たり前の共感」だけに頼っていていいのか? それが私が感じた疑問である。

これを読んでほしい。

■人権と死刑
欧州連合は世界中で死刑制度が廃止されることを求めています
http://www.euinjapan.jp/world/human/penalty/

彼らは言います。

「暴力の連鎖を暴力で断ち切ることはできません。生命の絶対的尊重というこの基本ルールを監視する立場にある政府も、その適用を免れることはできず、ルールを遵守しなければなりません。さもないと、このルールの信頼性と正当性は損なわれてしまいます。」

そして、彼らは確信している。
「死刑廃止の是非は、世論調査によって決めるべき問題ではありません。」

==============
エリート・パニックとは、権力者が、自分自身が抑圧している対象の影に怯える現象だ。そして、その抑圧の手先として大衆を動員するファシズムである。

ファシズムの語源は「団結」である。

それに対抗するのは「一人ひとりの人間の尊厳」なのである。

さてはて、「当たり前の共感」は、ファシズムに対抗できるのか。

この距離がなあ。国際理解教育には埋めがたい課題なんだよなあ。

いちばん主張が近いのは、「さらば独裁者 1945年以降を生きる私」としてスピーチをした
辛淑玉さんかなあ。

■2014/04/25 緊急集会「さらば、独裁者 徹底検証 暴走する安倍政権」 講演 鈴木宗男氏、辛淑玉氏、小森陽一氏ほかhttp://iwj.co.jp/wj/member/archives/20900
辛さんのスピーチは1時間27分あたりから。

アウシュヴィッツから始まり、アンネ・フランクは戦争で死んだのではなく「人種差別で死んだのだ」と中山成彬氏のコメントを批判、そして安倍首相の「たとえどこかの外国で日の丸が焼かれようとも、わたしたちはその国の国旗を焼いたりしない」という自民族優越主義を批判し、そして、1945年以降のわたしたちの生き方を問うている。

1945年、そして1947年の世界人権宣言。国家権力による人権侵害は認めない。国際社会は断固としてこれを阻止するために動くという決意。

それが、死刑という国家権力による基本的人権の侵害は、これを認めない。というところにまで合意がすすむのに、半世紀がかかった。

その間、日本は何をしていたのか。

『明日は 騒乱罪 学校にない教科書』という1980年に出版された本の完全無修正復刻版を読みながら、
1980年代からやり直しなんだなあと、改めて、自覚を深めている。

なんだかなあ。青木保さんが指摘した「日本文化の重層性」というのは、進歩主義史観とは真逆なんだよね。

□埼玉県におけるぎや


■2019年11月27日 「日本を逃げ出したい」アリサさんに対する答え
https://www.iphonejoshibu.com/12809?fbclid=IwAR2xsmlvAL0iEc08uYGoDtAllgUg14Z-DhOLDvO0sNOh0pQqAemeYEIPqBE

九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響という、僕はことあるごとに推薦している、本当に全国民必読だと考えている凄まじい名著があるんですが、ここからわかるのは、さっき言ったような、普段であれば差別的言動にもしっかり嫌悪感を抱くであろう良識ある人たち、要は我々のようなフツーの人々でさえ、知らず知らずのうちに世の中の空気に飲み込まれ、「義憤に駆られて」集団的暴力に加わりかねないのだ、ということ。

もし仮に、再び日本で大きな災害が起きたとき、同じようなことが繰り返されたら……間違いなくこの国は、二度と世界から相手にされなくなるでしょうけども。

真におそろしいのは、それが今さら決して起こり得ないこととも言いきれない、この現実ですよ。過去の失敗から何も学べない集団には、ロクな未来もないでしょうよ。

そんな世の中、そんな日本は嫌だ!と思うならば、せめて自分のできる範囲のことをしてゆかないと。

たとえば、もし「同僚が飲み会でチョンと発言」するような局面に居合わせたなら、無論勇気は要るだろうけど、まともな人たちはその場でしっかり怒って、諫めるべきだし。

アリサさんのような当事者が同席しているのならなおさら、人としてそれは許しちゃダメな話でしょう。

こばなみ:けっこうびっくりですよね。今の世の中で同僚がこんなこと言うなんて。

宇多丸:就職差別の件だって、いまどき信じられない!って感じだけど、まだまだ現実にはあるんだろうねぇ……

とはいえ近年はさ、SNSの影響力もあって、そういう発言が表に出れば、それなりに問題になるようにもなってきているとは思うんですよ。まだまだ少しずつかもしれないけど。

#metooムーブメント以降、これまでは泣き寝入りしたり一方的に我慢するしかなかったような、言わば社会的に容認されてしまっていた不正や非道を、これ以上見過ごすのはやめましょうよ、という方向で、いろんなところから声が上がるようになったわけじゃない?

いやもちろん、その点でも日本はまだまだなんだろうけど……それでも前よりはずっと、いろんな問題が少しずつでも顕在化しつつはあって、それは間違いなく、世の中の進歩だと思うんですよ。

逆に言うと、心ある人たちが実は相当数いても、黙ったままだったらやっぱり、どれだけ間違ったことを言ってようと、デカいほうの声だけが世に鳴り響くことになる。

せめてアリサさんが「あんなのはごくごく限られた連中にすぎないんだから、大丈夫」と思える程度には、大半のまともな日本人もしっかり意見を表明し続けてゆかないと。

少なくともこの国の中では僕らは多数派であり、強者なんだから。そのぶんの責任がありますよ。

こばなみ:そういえば、私の後輩が在日一世のおばあさんたちの写真を撮っているんですけど、ヘイトスピーチに対してやめて、こわいというような文を一生懸命書いていました。最近になって日本語を書けるようになって書いた文章がそれっていうのにも、胸が痛みました。

宇多丸:まず、在日韓国人/韓国人の歴史的背景などについて、僕ら一般的日本人が知らなすぎ、学んでこなさすぎ、っていう問題もあるよね。

なにも、堅い本を読まきゃならないような話じゃなくて、そういうのをわかりやすく語ってくれてるエンターテインメント作品とかだって、いろいろあったりするんだからさ。

たとえば焼肉ドラゴンとか、映画版には大泉洋さん、真木よう子さん、井上真央さんなどそうそうたるメンツも出演してるし、基本コメディタッチのホームドラマで敷居も低いので、手始めにいいんじゃないですかね。

もちろんパッチギ!という大傑作もありますし。

こばなみ:宇多丸さんに聞いて『焼肉ドラゴン』、観ました。わかりやすかったけど、またもういろいろ思うことがあり……。でもこういうのを観たら、差別的用語とか思考をしていることが恥ずかしく、悲しくなると思うんですけどね。

宇多丸:もっとも、まさにその『焼肉ドラゴン』でも描かれている通り、在日外国人に対する差別自体はそれこそ戦前からずーっとあったものだし、なんなら今よりずっと深く、日本の社会に浸透していたかもしれないくらいですよね。

今はむしろ、そこが一応は現代的良識に照らしあわせて問題視されるようになったからこそ、悪例が目立つ、というのもあるだろうし、ぶっちゃけ、日本という国がかつての勢いを失うにつれ、それをシンプルに誰かのせいにしたくて仕方ない層が増えた、というのが大きいと思うんですよね。

どこの国もだいたいそうだけど、差別する側こそが被害者意識に囚われてたりするもんで。

いっぽうで、特に若い世代は、K-POPの影響もあって、韓国の人や文化を、普通にイケてるものとして受けとって、ファッションから何から、ガンガン影響を受けまくってたりするわけじゃない?

僕も、韓国映画の水準の高さには毎度毎度感服させられているわけだし。

そんな感じで、民間レベル、草の根レベルでは、差別意識どころか悪感情も別にない、なんなら日本より全然カッコいいと思ってる、というような人たちが、どんどん増えているのも事実でしょう。

ま、自分の待遇に不満をため込んだおじさんとかは、まさにそここそがイラつきのタネだったりもするんでしょうが……(笑)。端的に、だせえ!

言うまでもなく、先の戦争が遺した禍根は明らかにまだまだ完全清算にはほど遠い状態だし、しょせん国家は国家ですから、お互いダメなところなんてのはいくらでも出てくるわけですけど、国民同士は別にそこと律儀にシンクロする必要なんかなくて、文化交流やビジネスを通じて勝手に理解を深めあって、ウィンウィンの関係を築いてゆければいいのにな、と思います。

まさに今みたいに、国同士のしょーもないチキンレースに巻き込むのとか、マジ勘弁してほしいの一語でしょ。

こばなみ:今回は本当に、みなさんに読んでほしいし、まわりの人に伝えても欲しいですね。

宇多丸:アリサさんの訴えに対して、恥ずかしいし情けないし申し訳ない、できる範囲で何かしてゆかなきゃ、と思ってくれる方が大半であることを祈りますよ。

このまま我々がいろんな差別や不正義を放置し続けたら、そのしっぺ返しは間違いなく僕ら自身に返ってくるはずだろうとも思いますし。それも意外と遠からず。

たとえばさっきの「同僚が飲み会でチョンと発言」事件にしてもさ、世の中の意識もどんどん進んでるんだから、ひょっとしたらいずれは、放言した当人はもちろんだけど、レイシズムを文字通り黙認した同席者たちまで含めて、さかのぼって社会的に糾弾されて当然、という時代だって普通に来るかもしれない。

セクハラとかが、少なくともかつてのようには、野放しではいられなくなってきたようにね。

国レベルで言っても……たとえばこのあいだ、難民映画祭改めWILL2LIVE映画祭で、『ミッドナイト・トラベラー』という、アフガニスタンから難民として国から国へと移動していく映画監督の家族のドキュメンタリーを観たんだけど、途中、ブルガリアで、そこそこ大規模なヘイトデモの圧力を受けるくだりがあるんですよ。

もちろんどこの国も政策上難民を無条件で歓迎してるわけじゃないんだけど……やっぱりここでブルガリアの排他主義者たちが見せる露骨な攻撃性は、本作のなかでもすごく強烈なインパクトを残していて。正直、ブルガリアという国に対していい印象は持てなくなっちゃいますよね。

たぶん本人たちとしては「愛国的」行動のつもりだったりするんだろうけど……やってることと言えば、女性や子どもに寄ってたかって罵声や脅迫を浴びせかけていたり、なわけですから。

こばなみ:何もブルガリアに対して思いはなかったけど、それ聞くと最悪って思っちゃいますね。でもそんなふうに日本も……!?

宇多丸:そうそう。そういうの、日本でもぜんぜん見たことある光景だったりするわけじゃないですか。とても恥ずかしいことだけども。

難民や移民に優しい国とも言い難いですしね。まったく人のこと言えませんよ。

そして、おそらくだけど、ブルガリアのほとんどの人たちも、問題の場面を観たら、そんなのはごく一部の連中なんですよ!って言いたくなるんじゃないかと思うんですよね。

そこもきっと僕らと同じ。

だからやっぱり、そういう良からぬ声のほうが堂々と鳴り響くような状況を、我々も許してちゃいけないんですよ。

沈黙は同意とみなされる、というやつですよ。

ということで、いつかまた、アリサさんたちが生まれ育って良かったと心から思えるような国になれるよう、できることからやってゆきましょうよ。

目の前の差別的言動を許さない、流さない、というのはもちろんだし……その手の発言を公の場でたれ流したような政治家なんかが改めて当選などしないよう、しっかり参政権も駆使していかなきゃいけない。性差別などと同様に、ね。

そして最後に改めて、アリサさん、本当にごめんなさいね……


by eric-blog | 2014-05-07 08:31 | ■週5プロジェクト14
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