レイヤー化する世界 テクノロジーと共犯関係が始まる
佐々木俊尚、NHK出版新書、2013
2166冊目
ジュニア新書のような語り口で、人類の歴史における現代の立ち位置がわかるように構成されている。
中世の真っ最中には、イスラムが帝国の中心で、ヨーロッパは辺境の未開の土地。突然やってきた十字軍は迷惑以外の何者でもない。
過激だったのはキリスト教で、イスラム教の方がおだやか。
「希望」「恐れ」「屈辱」という三つの感情。ドミニク・モイジという政治学者が読み解く、今の世界を動かしている感情である。57
中国やインドは「希望」
イスラムは「屈辱」
ヨーロッパが「恐れ」おののいている。
中世の帝国は多民族。
帝国内では戦争はなかった。
ヨーロツパが勃興する前に、中世の帝国は衰退しはじめていた。「陸の時代」
ヨーロッパは、イスラム帝国の存在のために東に向かうことができず、西に向かい、新世界を発見した。そこに銀があったため、インドなどとの交易において有利にたてるようになった。「海の時代」
続く産業革命。18世紀の終わり。
軍事力。
その背景にあったのが「国家」と「国民意識」。101
「自分たちは同じフランス人なんだ」「イギリス人なんだ」
帝国という権威の消失と小国家の成立。そして、強固な国民国家。
そして、国民国家は戦争に強かった。116
しかも、つねに戦争の危険をむはらんでいる。120
日本でも同じ。「日本人」という意識は江戸時代にはない。125
天皇家の儀式の多くは明治時代につくられたもの。127
イメージ作戦の成功で「天皇陛下万歳」と叫んで死んでいく。
権威は神様や王様のなかにではなく、自分たちのむなかにある。130
「立派な自分」「自立していく」という決意が民主主義の無スタート。132
では、なぜ、ヨーロッパのシステムが衰退しつつあるのか。
1.経済のけん引であった「産業革命」による経済成長が続かなくなった。
2.第三の革命、ねっと革命が、国民国家の「ウチとソト」を瓦解させている。
3.格差化がすすむ→不満がたまる→政府に向かう→不安定化する
さまざまなつながりを生み出す「場」が重層的になっている。
民族
国境
言語
政治
金融
産業と流通
雇用
文化
それぞれのレイヤーにおいて、
民族、職業、出身地、出身校、食の好み、趣味、恋愛、身体状態、自分の個性の明るい部分と暗い部分、まじめなレイヤーとふまじめなレイヤー。252
マジョリティは他者とつながることが難しくなる。253
複合的な評価が重なりあったところで私達は社会と接続していく。262
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いま時代の感覚に近いところが、描き出されている。