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「戦後」と安保の60年 同時代史叢書

「戦後」と安保の60年 同時代史叢書
植村秀樹、日本経済評論社、2013
2149冊目

国家の安全と国民の安全とが衝突する。

福島第一の原発事故は「原発をベース電源にする」という国策が、国民の安全を根こそぎにした事例である。

国家の安全のために強行された「オスプレイ」の配備は、地元住民の安全を脅かし続けている。沖縄は米軍基地負担をおカネと引き換えに押し付け続けられている。

その背景を探るのがこの本。

1951年9月8日に調印された「日本国とアメリカ合衆国との安全保障条約」
1960年1月19日に「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」と改定。

1951年9月8日には、「日本国との平和条約」、講和条約。

2010年、50周年を祝う共同声明を日米政府が発表。

2012年、沖縄返還40周年。

1995年のアメリカ兵による少女暴行事件を受けて、大デモ。村山富市首相がSACO協議を開始。

1996年、2月、橋本龍太郎首相が、普天間基地の返還をビル・クリントン大統領に要求。条件付きで合意を得る。

1996年12月、SACO普天間基地一部返還と、代替施設の建設を含む最終報告を出す。

2006年5月、代替施設を辺野古に建設する「再編実施のための日米ロードマップ」に合意。

2009年9月の政権交代で、鳩山由紀夫首相、見直しを。

2010年、1月24日、名護市長選挙で移設反対派の稲嶺進当選。

2010年5月28日、県外移設をあきらめた鳩山首相のもと、共同声明発表。

民主党政権が明らかにした「密約」

○1960年の安保条約改訂時の核持ち込みに関する密約。
○朝鮮戦争のとき、在日米軍基地からの出撃について、事前協議の免除。
○沖縄返還のさいに沖縄への核の再持ち込みについて。外務省には資料がなく、佐藤首相の自宅から発見される。
○沖縄返還にあたって、アメリカが負担すべき地権者に対する土地の原状回復補償費を日本側が肩代わりした密約。

すべて、密約の存在が確認された。が、政府は否定。16

密約問題を「闇」と呼ぶのは、密約が重ねられてきたこと、その存在が明らかになっても政府が一貫して否定しつづけてきたこと、重要な文書が紛失していること、その多くは外務省の手によって廃棄された可能性が高いこと。18

密約の多くは、アメリカ軍の運用上の都合を最優先するためのものである。19

俳優の吉永小百合さんは、朗読CD『第二楽章』「ウミガメと少年」の発表にあわせて、2006年、「今の日本が向かっている方向は怖い。戦争ができる国になろうとしている。いつまでも世の中が”戦後”であり続けてほしい」21

9月2日は、対日戦勝記念日。
1937年から始まっていた中国との戦争、マレー半島への上陸作戦、真珠湾攻撃、東南アジア各地の占領、オーストラリアへの爆撃など。日本が戦った相手は多い。24

平和条約第三条によって、アメリカの施政権のもとに沖縄、奄美、小笠原はおかれた。アメリカ領でないことによって、基地を拡大することができた「法的怪物」。アメリカは欲しいものをすべて手に入れた。63

テロも戦争と同じく政治の産物である。239

戦争のプロパガンダ。

9.11テロを機に、日米安保は新たな段階に入った。再定義によってアジア太平洋に拡張された日米安保は、再々定義によって、今や世界に拡大された。246

2007年1月、防衛庁の昇格。海外への自衛隊派遣も本務のひとつになった。248

軍事問題とは政治的意思の問題。

基地が沖縄経済に占める割合は5%。

本当に、海兵隊は、米軍基地は日本に必要なのかを議論すべきである。254

海兵隊は沖縄には必要ない。それが著者の論である。

神話としての日米同盟。「抑止力」をご本尊さまとする思考停止。260


自衛隊のあり方についても、「限りなく侵略戦争に近い武力行使が自衛の名の下に行われること」には警鐘を鳴らす。262

「憲法との関係で存在が疑問視されてきたことが、・・・自衛隊を健全に育てるのに一役買った。」264

「外国での活動においても、自衛隊らしさが発揮されている。実弾を発車してぃなぃ。地元との関係を重視し、見下すことがない。乱暴なふるまい、横柄な態度がない。」264

防衛出動、治安出動、民生協力。

主権者として、しっかり判断しよう。そのつとめを果たすことが、わたしたち国民の平和と安全への道である。266

平和運動の第二楽章。

アフガニスタン・イラク戦争の二つの戦争で亡くなったアメリカ兵だけでも9.11テロの犠牲者の二倍を越えている。社会復帰がむずかしい元兵士が10万人を超え、テロとも大量破壊兵器とも無関係の犠牲者が10万人を超え、難民は百万人をはるかに超えている。・・・戦費だけで3兆ドル。270

はたしてこれが賢明なことか。

安全保障における軍事力の有効性は、明らかに低下している。「強い国」わめざすのは賢明とは思えない。

「賢い国」とはどのような国か。271-272
・自衛隊を海外に出すときは、あくまでも国連PKOや国際緊急援助隊の活動にとどめる。
・日米安保体制を存続させるならば、このような方向を目指す自衛隊と連携するにふさわしいものにしなければならない。

あとがきにさらに。

アンポハンタイは負け、自衛隊違憲論も負けた。戦後護憲派は負けつつある。「戦った」ことにしがみつくのではなく、それらを踏まえて次にすすむことだ。
「太陽と土と水をこの手にもとう」それがただ一つの知恵。
わたしたちが手にすることができる平和や安全は、わたしたち自身がしぼった知恵と同じだけのものなのだろう。
by eric-blog | 2014-02-03 12:31 | ■週5プロジェクト13
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