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ERIC NEWS 362号 ともによりよい質の教育をめざして 2013年11月24日 市民性教育 第8回 最終回「ケアする心を育てる」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (文責: かくた なおこ 角田尚子 http://ericweblog.exblog.jp/ twitter : kakuta09 FBも) 日本では放送されていないのでしょうか。米国ではトイザラスが「今日は、野外学習!」と学校バスに乗り込む児童に伝えると、子どもたちは「えっーーーー」と不満そう。バスに乗り込んで、「いやあ、実は今日はトイザラスに行くんだよ」と告げると大喜びする。 そんな野外学習を愚弄したようなコマーシャルが出たのだそうです。早速反応した環境学習指導グループがいた! サンタフェ流域協会。 ぜひ、ご覧ください。こんなユーモアのある返し方、いいですねぇ。 Santa Fe Watershed Association’s response to the recent Toys R Us ad mocking outdoor education. Please view the Toys R Us video first! Toys R Us video: http://www.youtube.com/watch?v=q5SXybm6bss http://www.youtube.com/watch?v=XbpQJXvMB8s Outdoor education improves critical thinking. Outdoor education reduces childhood obesity. Outdoor education improves student test scores. Outdoor education encourages creativity. Outdoor education leads to less classroom discipline. Outdoor education is inquiry-based. Outdoor education is interdisciplinary. Outdoor education is FUN! 野外教育はクリティカルな思考を育てます。 野外教育は子どもの肥満を軽減します。 野外教育は生徒のテストの点数をあげます。 野外教育は創造性を奨励します。 野外教育は学級の規律のためにかける力を軽減します。 野外教育は探究中心です。 野外教育は学際的です。 野外教育は楽しい! 「楽しい」、そして子どもの目がきらきらする実践を広げましょう! ■『平和教育: 平和の文化への道』翻訳プロジェクトのその後 “Peace Education: a Pathway for the Culture of Peace” 英文のダウンロードはこちらから。 http://www.peace-ed-campaign.org/resources/cpe-book-14oct2010-FINAL2.pdf 翻訳プロジェクトのブログはこちらから http://pepathway.exblog.jp/ 日本語訳のダウンロードは、三部に分かれています。 http://eric-net.org/news/pePartI.pdf http://eric-net.org/news/pePartII.pdf http://eric-net.org/news/pePartIII.pdf 翻訳しながら、「かなわないなあ、キリスト教の背景は」と感じていたために、今回、PGL Peace As Global Language という英語講師を中心とした平和教育者たちの年次大会に参加して、ワークショップをさせてもらいました。 以下が、ワークショップのプログラムです。 http://www.eric-net.org/news/PGL2013program.pdf http://www.eric-net.org/news/PGL2013presentation.pdf http://www.eric-net.org/news/PGL2013.pptx やってみて、ほっとしたのは、そして、次に紹介するジョン・フィエン氏の論文にも言われているような仏教の「慈悲」という概念など、普遍的な概念というのは、どこの社会でも、一人ひとりが獲得しなければならない課題なのだということでした。 ■□■市民性教育第8回■□■ さて、今回が最終回の「市民性教育」。ESD持続可能な開発のための教育との関係を今回は、まとめて、終わりにしたいと思います。 1気づきから行動へ-市民性教育とワールとスタディーズの本質 130217 2価値観とビジョン-わたしたちはどこへ行くのか? 130324 3市民としての行動力を育てる-政治的リテラシー、アドボカシーへ 130428 44つの教育は一つ-共通する課題 130602 5社会科教育は、市民性教育か?130811 6倫理、道徳は、市民性教育か? 130915 7市民性教育と消費者教育や反貧困教育、労働者としての権利の教育-セーフティネットとしての教育 131023 8市民性教育とESD-未来のための教育へ 最終回の今回は、オーストラリアのジョン・フィエン氏の論文『ケアすることを学ぶ:教育と共生感』という論文の紹介を中心に、市民性教育とESDの関係を考えたいと思います。 ジョン・フィエン氏は、ERICの人権教育テキスト『いっしょに考えて! 人権』(p.46)にも紹介している「4つの教育は一つ」という洞察を共有してくれたオーストラリア、グリフィス大学環境教育センターの所長です。環境教育、人権教育、開発教育、平和教育の4つの教育は、それぞれ「環境について教える」「人権について教える」というコンテンツ・教育内容については独自の分野を持っているけれど、「環境のために教える」とか「平和のために教える」という視点からは、同じように社会改革のための「市民性教育」という共通のスキル目標を持っているのだというのが、フィエン氏の指摘したことです。 その後、ESDの取り組みが始まると、ESDによって環境教育がどのような質的転換を遂げなければならないかを論考していました。ESDは4つの教育の集合体であるだけではだめなのではないかと。 今回紹介する2003年の論文では、環境問題の解決のために構造的社会的問題に取り組むだけではなく、「ケアする心」や「compassion」を育てることが大切なのだと論じています。フィエン氏は、社会派環境教育者と分類できると思いますが、社会改革につながる行動だけが大切なのではなく、「自分自身」や「他者」を大切にケアする心が、大切なのだ、そのバランスをどう取ればいいのか、そして、果たして、フィエン氏らの実践がバランスのとれたものであったのかどうか、再点検をしておられます。 その事は、すでにERICが「社会的な関心や気づき」だけではなく「無力感」から有力感へという個人の指標を大切にしてきたことと軌を一にしています。 社会的な共通の課題についての「気づき」からERICのテキストも開発されてきたのですが、一人ひとりが「わたし一人が何かしたって」という無力感を学習しているのであれば、まずは、「有力感」の基盤を育てる必要がある、そのために人権教育で言われている「自尊感情:セルフエスティーム」や「相互尊重的自己主張:アサーション」などの人権を通して人権尊重社会を実現するためのスキルを身につける必要があると、言ってきました。 それがERICの「学び」とテキスト開発の三期であるのです。(『環境教育指導者育成マニュアル』ERIC,1999年、資料編p.70参照) (1)気づきから行動へのアクティビティを中心としたテキスト開発 (2)セルフエスティームやコミュニケーション能力などの演習テキスト開発 (3)社会的合意形成のための方法論、フューチャーサーチ会議やワークショップの方法論 市民性教育と言うと、ERICの学びの第三期にあるような社会的合意形成の方法やスキルのことだと思われがちですが、教育である以上、ホリスティックであること、学習者を全的な存在、生活者であり、市民であり、唯一無二のいのちであり、生徒であり、子どもであり、それらのすべてが、一人の中にあるというようにアプローチすることは、当然の要請です。 市民性教育というのは、地球や他者に対する「ケアする心」を育てること。育てるというのは「広く」「深く」していくこと。他者に対してケアするためには、自分自身をケアできていること。 今回、翻訳していてもっとも難しかったのは「compassion」でした。最初、共感と訳していたのですが、sympathyやempathyとどう違うのか。同義語辞典を引けば、sympathy=compassionとトップに出てきているのですが、フィエン氏が「異なる」意味を付与しているものは何かを考えた時、共感を一歩すすめた言葉が必要だと感じました。 共感というのは、同情でも、同感でもなく、他者が感じた感情になるべく近い感情を自分自身も感じること。 それが、わたしたちが「共感的傾聴」のトレーニングを行っている時に、説明していることです。同情というのは、状況への理解であり、同感という状況に対する同じ判断ということですが、共感というのは、状況が理解できなくても、同じ判断が持てなくても、他者が感じた感情を感じることができること、です。 Empathyの場合は、感情移入と訳されたりするので、よりわかりやすいですね。 Compassion の語源の成り立ちはシンプルです。Conが共に、passionが熱意。特に、キリスト教的背景ではキリストの受難という意味もあるようです。 共感が感情のレベルであるならば、compassionは、フィエン氏が言わんとしているように「行動につながる熱意」のレベルまでを含む言葉として訳す必要があるということです。 感情は、価値観の現れであり、感情は行動の基盤です。強い熱意が行動につながります。 そういう意味では、共感と訳して十分であるはずなのですが、「感情」だけいう印象は否めません。 Compassion 共感だけではなく、その思いの共有から行動力へと、行動の源泉につながるものというジョン・フィエン氏の定義を尊重するならば、それは「共生感」とでも訳すべきものだと言えるのではないか思い至りました。 自分自身を、他者を、そして地球を「ケア」=大切な存在として扱うこと。 わたしたちが身につけるべきスキルであり、モラルであり、価値観ですよね。共に生きるために。 ケアするという具体的な行動につながる心、共感=共生感を育てるための教育が、いま、すべての教育の基盤として求められている。それが地球市民としての「市民性」の背景にある考え方であり、持続可能な開発のための教育がめざす人材育成だと思います。 ぜひ、フィエン氏の論文をお読みください。 わたしたちが共に生きるために共有すべき価値観を、示しつつ、そこからどのような行動や態度をとるかの選択と決定は、一人ひとりに任されている。それが「教化」ではなく、「教育」のなすべき役割なのだと。 Learning to Care: Education and Compassion John Fien Australian School of Environmental Studies Director, Griffith University EcoCentre Professorial Lecture 15 May 2003 http://www.griffith.edu.au/__data/assets/pdf_file/0018/314613/fien03.pdf 日本語訳 http://ericweblog.exblog.jp/18988618/ http://ericweblog.exblog.jp/18988625/ http://ericweblog.exblog.jp/18988628/ ■□■ご案内 世界森林センター2014年セミナー■□■ オレゴン州ポートランドにある世界森林センターが毎年開催している「国際教育者学舎」の日程が決まりました。2014年7月13-19日です。 25名の募集で、3月1日締め切り。選考結果は3月15日までに、わかります。 参加費は$1800で、6泊の宿泊とすべての食事(ベジダリアン対応可能)、 見学会などの交通費を含みます。 We are pleased to announce registration is now open for the World Forestry Center International Educators Institute July 13-19, 2014. http://wfi.worldforestry.org/index/international-fellowship/international-educators-institute.html ぜひ、内容をチェックしてみてください! ■□■ERIC主催・ESDファシリテーター養成講座■□■ 今年も6本の主催研修を行います。要項はERICホームページから。 http://www.eric-net.org/ 前期の三本は、テーマから迫ります。そして、後期はスキル育てです。 3. テーマ「人権」 平成25年2013年9月28日29日終了しました。 http://ericweblog.exblog.jp/18703175 4. スキル「対立」 平成25年2013年10月26日27日終了しました。 http://ericweblog.exblog.jp/18871676 5. スキル「市民性」 平成26年2014年2月22日23日 6. スキル「教育力向上講座」平成26年3月末予定 ■□■ERIC25周年に向けたご寄付のお願い ■□■ 1989年誕生の参加型学習老舗のERIC国際理解教育センター。 これまで続けて来られたのも、企画委員、運営委員、理事、テキスト購入者、ファシリテーター育成事業参加者など、みなさまのおかげです。感謝です。 これからもよりよい「指導者育成のための実践」推進のための情報提供、研修プログラムの提供などに努力していきたいと思います。 日常活動に加えて、25周年に向けて、事務所のリニューアル、フューチャーサーチ走向未来ワークショップの開催など、企画しています。 特別活動支援のために、テキスト活用、研修参加などのご支援に加えて、ぜひ、ご寄付をお寄せください。よろしくお願いいたします。 ご寄付先 金融機関 ゆうちょ銀行口座: 10020-3288381 名義:トクヒ国際理解教育センター(ゆうちょ銀行同士) ◯◯八(ゼロゼロハチ)店008-0328838 名義:トクヒ国際理解教育センター(他の金融機関から) ********************************************************* (特定非営利活動法人)国際理解教育センター ERIC:International Education Resource & Innovation Center 〒 114-0023 東京都北区滝野川1-93-5 コスモ西巣鴨105 tel: 03-5907-6054(研修系) 03-5907-6064(PLT・テキスト系) fax: 03-5907-6095 ホームページ http://www.eric-net.org/ Eメール eric@eric-net.org blog 「 ESD ファシリテーター学び舎ニュース http://ericweblog.exblog.jp/ blog 「PLT 幼児期からの環境体験」 http://pltec.exblog.jp/ blog 「リスク・コミュニケーションを対話と共考の場づくりに活かす」 http://focusrisk.exblog.jp/ blog アクティブな教育を実現する対話と共考-ESD的教育力向上を目指して http://ead2011.exblog.jp/ blog 平和の文化への道を拓く平和教育 翻訳プロジェクト http://pepathway.exblog.jp/
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| 2013-11-24 07:56
| ERICニュース
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