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カウンセリングの展望 いま、カウンセリングの専門性を問う

カウンセリングの展望 いま、カウンセリングの専門性を問う
下司昌一、ブレーン出版、2005
2061冊目

第37回日本カウンセリング学会大会のまとめである。なんて立派な!
2004年9月18日-20日 明治学院大学において開催
学会長である國分康孝さんの高揚感も、「刊行に寄せて」から伝わってくる。

大会記録なので、網羅的であり、かつ、先駆的であり、学会の課題共有もありと、まとまっているというよりは、意欲的である。ということで、つまみグイ。

カウンセリングの概念があいまいになったのは、臨床心理学出身でなければスクールカウンセラーになれないという状況があったからというのは、うなづける。一対一で治療的に行なわれる精神分析の方法論が、学校という集団と発達を中心とする場と関係性の中にどう位置づくのか、わたしはつねづね「カウンセリングと教育は違う」と言い続けてきた。もう10年も前の整理だから、いまはまた違ってきているのだろうけれど、セリグマン氏が「精神分析的カウンセリングと幸せの心理学のアプローチは違う」と指摘していることもある。

カウンセリングの3つの目標 6
人間的成長への援助
豊かな社会生活の実現への援助
生涯において遭遇する諸問題の予防と解決のための援助。

カウンセラーの6つの仕事 9
1. カウンセリング
2. コンサルテーション
3. コーディネーション
4. 啓発と提言
5. 個人と集団のアセスメント
6. スーパービジョン

ネットで「カウンセリング」で検索すると産業カウンセラーがトップでヒットですものね。それはコンサルやろう! と突っ込みたくなりますが。

基本的にカウンセリングの対象は「健常者」であり、心理療法(サイコセラピー)とは異なる。17 (國分による)

ロジャーズは健常者と病理的人格の区別をしなかった。日本の臨床心理学者の多くもロジャーズと同じ。

しかし、國分さんは「カウンセリングの目標は発達課題の解決を援助すること」と健常者に対する援助であることを主張している。「育てるカウンセリング」
そりゃあ、通らんわなあ。一人、日本カウンセリング学会が主張してもねぇ。

「現代社会とカウンセリング」を執筆している平木典子さんは、次のように整理している。pp.29-39
現代は・高度産業技術工業化経済社会である。・モビリティが高い・課題達成、成果主義型という三つの特徴でとらえ、心の問題として
・ 自己の生命・健康維持力の低下 所属と愛の欲求が満たされない
・ 人間関係の維持力の低下
そのために現代社会が「人間力」を取り戻すための3つのリソースを示している。37-
1. 違いを認める力
2. 自己分化を促進する関わり 知性的働きと情緒的働きを区別していく
3. 協働の必要性

スクールカウンセラー
家族両方
キャリアカウンセラー
論理療法

論理療法で紹介されているABCDE理論というのは、ハーバード交渉術でも取り入れられていたなあ。学問間の相互乗り入れもあるからなあ。

ABCDE理論
A Activating event
B Belief
C Consequence
D Dispute
E Effective

論理療法というのは、アルバート・エリスが1955年に創始したもので、Rational Emotive Behavior Therapy。論理で心理療法を成し遂げるもの。

出来事があり、そのことでどんな感情や考えがあるか。どのような行動を結果として取ったのか。結果が「障害を生む破壊的な感情と行動を持たせる非理性的な考え」であれば、Irrational Beliefであり、同じ出来事が起こっても、その出来事をどのように捉えるかで、結果が変わってくる。捉え方のBeliefをRational Beliefに変えることで、結果を変えようというのがこのアプローチだ。

ハーバード交渉術を学んだときも、分からなかったのが、「相手は変わらないのだ」という考え方だった。だから、自分自身の捉え方を変えるのだと。ならば、なぜ交渉する?

ここで、読んで、ABCDE理論が、自分を変えるための方法であることが了解できた。なるほど。自分で自分のIrrational Beliefに論駁するのがDisputeなのね。

Dispute5つのスタイル。 149
ソクラテス
教訓調
ユーモラス
自己開示
友達論駁




構成的グループエンカウンターについても、III-1で報告されている。
自己理解、自己受容、自己表現、感受性、信頼体験、役割遂行。6つのねらい。
共通基盤づくりに当たるものを「リチュアル」儀式と呼んでいるんだねぇ。

描画療法
インタラクティヴ・フォーカシング
生活分析的カウンセリング

IV-1 p.243-
学校臨床カウンセラー
14の役割! 過剰だ。
ファシリテーションは「関係促進」と訳されている。なるほど。
ここで、井上孝代さんが、カウンセラーとアドボカシーをつなげて論じているのが、おもしろい。

Advocacy in counsellingという論文も出ているのだねぇ。
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by eric-blog | 2013-10-08 11:41 | ■週5プロジェクト13
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