人はなぜ御用学者になるのか 地震と原発
島村英紀、花伝社、2013
2043冊目
これまでにも地震予知の研究について、たくさんの著書のある海底地震計測器設置では世界一という実績の持ち主が、地震予知と原発という二つの巨大国策科学について、メスを入れる!
1965年に地震予知研究が始まってから、一度も成功していない。すでに研究所の名前からも「予知」は消えている。こっそりと。
大きな予算がつくと、そこから離れられなくなる。成果がでなくても、軌道修正は難しい。そもそも、科学者にとって「成果」というのは、そんなはっきり見込みが立つものではないのだ。当たり前のことだけれど、未知なるものに向かうのが科学であり、結果として出てくるものが「善い」ものかどうかの保証はない。
硬直した官僚制度と、不確実な科学と、煽るメディアに乗る大衆の組み合わせが巨大科学の不幸であると、この本は指摘しているのだ。
別役実が指摘するように「進歩は中毒」なのだと。162
それを加速するのが「孤独な戦士」を煽る競争だ。学会誌への投稿、研究成果、果ては、研究資材そのものまでが、盗まれるのである! 著者らが開発した小型海底地震計測器は、まさしく、その憂き目にあったという。197
日本の科学研究に費やしているカネはお寒いものだと著者は指摘する。詐欺的な数字のトリックで、米国に次ぐ二位だと言っているが実態は、実用科学の応用研究、商品化のための投資も、その中に入れているだけにすぎないと。202
これからの南極の領有と開発をどうするかも、人類の試金石であることは間違いない。
科学に対する社会からの健全なフィードバックが、科学の成長のためには必要なのだと、著者は提案する。さて、それはどのように可能なのかな?
『「地震予知」はウソだらけ』
『直下型地震 どう備えるか』