塩の道

79-4(370) 塩の道
宮本常一、講談社学術文庫、1985
1979年、80年、81年に初出された「塩の道」「日本人と食べ物」「日本の知恵と伝統」をまとめたもの。

宮本常一と言えば、1981年昭和56年に73歳でなくなった民俗学者。実はERICの創立にかかわっていた吉田新一郎さんやその連れ合いの小泉順子さんなどから、彼の本を紹介されたり、あるいはこんな話が宮本の本には出でいたよ、というようなことを聞いたというERICにもかかわりの深い著作の数々。

時はポスト高度成長期。日本とは何なのか、日本はどこへ行くのかがようやく問われ始めた頃なのだろう。そしてその後で言えば網野善彦さんなんかが、「掘り起こし」してものと比べても、宮本さんは「民俗」学者であるのだが、そのように言うとするなら、網野さんは歴史民俗学者みたいなものだ。宮本さんは聞き取りを大切にしているのだが、網野さんは史資料に対するていねいな「聞き取り」をしているのだし。

さて、そのような本から、何を紹介すればいいのか。

「塩の道」について言えば、塩を新潟の山の人が自給するために木を切り出して川に流す。木には自分の家のしるしをつけておき、川口に網を張って引っ張りあげる。その木で塩を焼いて持ち帰る。それが第一段階の自家生産。。それは不便なことなので、塩を焼く以上の木を流して川口の人々に焼いてもらうのが第2段階の委託生産。そして、塩を専業で作っている地域からの購入・交換の段階へと。
だから、塩と木は不可分。塩の流通には牛。どこで牛を飼い、どこで売り払ったかそういうことがすべて関連して発展していくという。

「日本人と食べ物」では、ひとつは日本は農民を巻き込んだ全面戦争、人口激減につながるような戦闘がなかったということ。もうひとつは、日本では時代時代に新しい作物が出てくるのだけれど、どのように広がったがなかなかはっきりわからない。
古事記あたりでイネ、ムギ、アワ、キビ、ソバ、ダイズ、アズキ、ヒエ、サトイモ、ウリ、ダイコン(オオネ)
平安時代にササゲ、エンドウ、キュウリ、トウガン、ナス,ヤマノイモ
戦国時代の終わりに、サツマイモ、トウモロコシ、カボチャ、ジャガイモ、スイカ、
ちょっと下がって、インゲン豆、ソラマメ、サトウキビ
しかも、それぞれに広がり方が早いのだという。

「暮らしの形と美」でおもしろいのは、「軟文化」と「硬文化」。特に軟文化の比重が大きいのが日本の特徴だという。189
つまり、わらでぞうりを編む。子どもでも自分の分を編む。子どもの頃からからだでできるようになる。そして、そこに工夫を加える。自分のしるしを入れる。などなどが特徴なのだという。

この文章が最晩年のものであることを考えると、宮本さんの日本文化にそそぐあたたかさが、身にしみる文章です。
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by eric-blog | 2005-04-15 09:28 | ■週5プロジェクト05 | Comments(0)
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