人気ブログランキング | 話題のタグを見る

犯罪・非行の心理学

犯罪・非行の心理学
藤岡淳子、有斐閣ブックス、2007
2030冊目

心理学を中心に、社会の対応を考えるには法律学・行政学、回復支援には社会福祉学・教育学、大きな社会を測るときには目盛りの大きな社会学、一人ひとりを見るときには目盛りの小さな心理学のものさしで見るという、複眼的思考が必要であり、同時にそれらの視点をたばねる「自分」も不可欠。

法務省矯正局で鑑別技官の仕事から始めた著者の立ち位置は、学問的・研究的であるよりは「犯罪・非行行動をどのように変化させるか」にある。

第一部は基礎理論
・パーソナリティ要因
・発達障害
・家族関係
・学校職場地域

第二部は心理臨床
・処遇システム
・アセスメント
・治療教育
・犯罪被害者の精神的被害

反社会行動の二次元軸分析。
犯罪・非行の心理学_a0036168_7375435.jpg


子どもの権利条約に基づいて設置されている国連・子どもの権利委員会から2004年2月に少年司法について勧告されている。190
・ガイドラインを全面実施すること、特に37条、39条、40条
・少年に対する無期懲役の廃止
・身体拘束の代替措置を強化
・逆走の廃止
・法的援助
・問題行動を伴う子どもを犯罪者として取り扱わないこと
・改善更正再統合のプログラム強化

第13章は課題と展望の最終章であるが、その最後に、治療におけるグループの効用が言及されている。

治療者に求められるものとして、次のふたつの特徴が重要であることが実証されている。248
・犯罪者と意味ある関係をつくることができる、温かく、的確に共感でき、ほめたり、報いたりできる
・向社会的方向性、すなわちスキルや問題解決能力や、価値観を与えることができる
つまり、肯定的な信頼関係をつくり、そのうえで犯罪的ではない考え方や価値観を教え、それを実行できる力を育成していくこと。(Andrews & Bonta,1994)

治療教育における集団療法には、専門家との一対一の個別療法にはない力がある。と言われている。248

エビデンス・ベイストがここでも言われている。

国連高等弁務官の緒方貞子さんが「勘」だと言い、経験値があるからこそ働く直観があるという。

システムが複雑である時、アセスメントは難しい。

4月の学力テストの結果が公表された。知識の応用が課題だという結果が出たようだ。一人ひとりの子どもがこれからの社会に生きていくために必要な「学力」とは何かという議論も、エビデンスに基づきながら継続する必要もあるし、また、それがどのように測れるものなのかも、検証していく必要がある。

学力論争にも、この本と同様の複眼思考が求められることだろう。

【参考文献】
『性暴力の理解と治療教育』2006 「正しい病」をやっつけろ

【学力テスト結果】
http://www.nier.go.jp/13chousakekkahoukoku/data/research-report/13-summary.pdf
by eric-blog | 2013-08-28 07:37 | ■週5プロジェクト13
<< 校内研修 2時間 人権 禁原発と成長戦略  禁原発の原... >>