ハーメルンの死の舞踏
ミヒャエル・エンデ、朝日新聞社、1993
2000冊目
劇作なのだが、公演はされなかったようだ。ご存知、ハメルンの笛吹き男の物語。ペストの流行とその予防として種痘をうった子どもたちを、男が連れて、ヨーロッパの他の地域での蔓延を止めたのではないかというような解釈も存在する。
解説に、訳者でもある子安美知子さんが書いているエンデの問いはこうだ。
1. ねずみの大発生の原因はなんだったのか。
2. なぜ、笛吹き男に報酬が払われなかったのか。
ねずみの増えた原因そのものを男が要求し、町はその原因であるものを手放すことがなかった、というのがエンデの仮説だ。なるほど。
ねずみ大王は、ゲルトシャイサー(金の糞)を放り出す。町のお偉いさんたちは、この異形のものに仕えている。支配されている。もっともっとお金が欲しいから。
この大王がねずみを惹きつける。そして、町の人々は困窮する。
笛吹き男が現れて、ねずみ大王を報酬として要求する。しかし、町のお偉いさんたちは、その要求が分からぬふりをして、支払いをこばむ。こばむだけではなく、男をさらし首にしようとすらする。
軍事国家を築いている近隣の伯爵が、町を襲い、支配する。
この本を紹介していたのは、安富教授の授業で、なのだが
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/84517
このメタファーのすごいところは、授業で扱われているブローデルの問題提起を余すところなく、暗示していることだ。
ねずみに困りながらも、その根本原因を手放すことができないという病。
記念すべき2000冊目。
過去・現在・未来、時々、エンデ。