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ERIC NEWS 338号 ともによりよい質の教育をめざして 2013年6月2日 市民性教育 第四回 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (文責: かくた なおこ 角田尚子 http://ericweblog.exblog.jp/ twitter : kakuta09 FBも) 昨日、大学生向けのショートプログラムの実践で、発行が送れましたが、6月2日号ということで、ご笑覧ください。PDF版はERICホームページにアップする予定です。 個人的には、5月から小学校と中学校で、それぞれ週二回、一学期に4回、ボランティア指導員をやることが決まりました。二校とも、自転車でいける距離の学校なので、ラッキー! 運動不足解消、です。小学校では四年生担当。かわいいことこの上なし。 ERICの受託研修もぼちぼちで、暇をかこっております。で、新機軸。暇だからね。場所もあるし。 きっと、学び続けたい人々はたくさんいるはずだと、来年度から、「ゼミ」を開く予定です。国際理解教育の観点から、学びつづける場、生涯学習を支援する場を提供する試みです。学びつづけるための空間・時間・仲間を提供する「ERICゼミ」。ぜひ、ご活用ご参加ください。 来年はユネスコ勧告から四十年という節目の年。2024年には国際理解教育誕生から半世紀になるのですねぇ。 国際社会が苦労して合意してきた「人権条項」や国民国家の共存の枠組み、そして、これからの未来を、共に創り出していくための共通基盤となる価値観など、一顧だにしない政治的リーダーによる「失言」が続く昨今、国際理解教育のこれまでを検証し、ESDとして継続・発展を考える必要があります。 わたしたちは、主体的に、国際社会とともに、これからを共に、よりよいものへと願いをもって、生きていくことができるのでしょうか? http://ericweblog.exblog.jp/17881740 ゼミの「プレ・ゼミ」として、「熟議塾」をこの6月から始めます。都合のよい時間を選んで参加することができます。ERICが提供するのは、「熟考」「議論」の場とファシリテーションです。 予約可能な時間は、Yahooカレンダーで確認できます。申し込みは、ERICホームページの「主催研修参加申し込み」フォームから、あるいは「お問い合わせ」フォームをご利用ください。 http://www.eric-net.org/inquiry/gaibu.html 【熟議塾カレンダー】 https://calendar.yahoo.co.jp/kakutanaoko07/aac8bd90710f9b1e4873d828649ea04a?od=131 【熟議塾概要】 日時: 予約制(2時間一コマ、予約可能な時間はカレンダー参照) 場所: ERIC事務所 塾費: 入塾時2万円(4コマ分) 4コマ終了後は一コマ5000円 「プレ・ゼミ まずは熟議力をつけよう」基本4回コース 第一回 わたしのからだは頭がいい 第二回 ものの見方・考え方=思考スキルを磨く 第三回 対立上等、対立から学ぼう 第四回 価値観は育ったかな これまでにERICの主催研修を受けた方は、基本コースの受講は必要ありません。その旨、お知らせいただき、一コマから、予約してください。 <<>>>>ニュース項目<<<<<>> 1.市民性教育 第4回 2.ERIC2013年度主催研修 3.ERIC25周年! & 国際理解教育40年記念 <<>>> 1. 市民性教育シリーズ 第4回 4つの教育は一つ-共通する課題 1気づきから行動へ-市民性教育とワールとスタディーズの本質 130217 2価値観とビジョン-わたしたちはどこへ行くのか? 130324 3市民としての行動力を育てる-政治的リテラシー、アドボカシーへ 130428 44つの教育は一つ-共通する課題 130602 5社会科教育は、市民性教育か? 6倫理、道徳は、市民性教育か? 7市民性教育と消費者教育や反貧困教育、労働者としての権利の教育-セーフティネットとしての教育 8市民性教育とESD-未来のための教育へ >>>四つの教育は一つ 共通する課題 「四つの教育は一つ」というのは、オーストラリア環境教育学会の会長でもあったジョン・フィエンさんの言葉で、環境教育、開発教育、人権教育、平和教育という四つの教育は、それぞれ「環境について教える」「人権について教える」という部分では個別の内容を持っているが、教えるべきスキルや共有すべき理念や概念については共通しているという主張です。 ESD持続可能な開発のための教育というのは、これらの人類共通の課題(1974年のユネスコ勧告より)についての教育、すなわち国際理解教育とも共通しているものであるのです。「について教える」と同時に、共通のスキル・概念・理念を教える必要がある。 市民性教育というのは、これらさまざまな名称で呼ばれ、実践されている教育の共通項であるということです。 PDFバージョン参照、『いっしょに考えて!人権』p.12より >>>>「について」教える前に、人権としての教育を 人権教育の四つの側面という、人権教育の内容、方法、目標を考えるための枠組みがあります。As, about, though, for「としての」「についての」「通しての」「のための」です。 人権教育は「人権としての教育」であるという、そもそも人権教育はという原則論がasであり、そういう意味では国際理解教育も、環境教育も、開発教育も、人権としての教育であるといえるでしょう。「人権」はこれからの共生社会を作っていく上で、欠くことのできない共通価値であるとともに、教育によってわたしたちが達成しようとしている未来の社会の原則でもあるのです。 国際理解教育という「人類共通の課題」について学び、問題解決のために協力するという教育は、その共通の課題の一つに人権をあげているのです。国際理解教育をすすめることは、人権尊重社会のための教育をすすめることでもあるのです。 開発教育が人権としての教育であり、人権のための教育であるということは、南北格差や貧困という問題を取り上げていることからも明白です。途上国のかかえる問題に対して支援する、そしてそれを支援することがなぜ必要なのかを、先進国の人々に理解してもらうことから始まった先進国における開発教育ですが、すぐに、「いまの先進国の開発のあり方も見直す必要がある」、だからこそ、開発教育は先進国でこそ取り組まれる必要があるのだという認識が育ちました。 一方、1970年代、パウロ・フレイレの『被抑圧者のための教育学』は、途上国という抑圧状態にある人々にとって必要な「意識化」のための教育、そしてそこからの解放という「行動力」につながる教育であると、示しました。先進国で行われている教育の移植が、彼らにとって必要な教育ではない、ではどんな教育をすることが求められているのかという問いに対する答えでした。 1972年の国連環境サミット以来、共通の課題に取り組むための協力が求められた時、「格差とその根源にある歴史的な経緯をどうするのだ」という問題提起に答える必要があったのです。 南北格差、人種差別、女性差別など、社会的文化的に「劣っている」と扱われることで、人は差別を内化し、自分も自分を差別する主流派の視点を取り込んでしまう、自分自身を劣位に位置づけてしまう、自信を持てないということが起こります。被抑圧者のための教育というのは、社会的文化的差別の根源を理解し、自らを肯定的に受け止めることのできる力、エンパワメントの教育であったのです。 ERICがいちばん最初に翻訳出版した『ワールド・スタディーズ』は1984年に出版されており、イギリスという植民地支配をしてきた旧宗主国において、歴史和解を出発点とするための教科書だったと言えるのです。日本国憲法が、アジア諸国に対する日本の謝罪であったとするならば、『ワールド・スタディーズ』はイギリスの旧植民地に対する謝罪であったと言うことができるでしょう。 『ワールド・スタディーズ』の主要なアクティビティがなんであるかを見れば、そのことは一目瞭然であるのです。ぜひ、お手元にあるテキストを見直してみてください。 ・もしも地球が100人の村ならば ・ことば(英語)の家=(英語の言葉にはさまざまなルーツのものが入っている) ・教室の中の世界 相互依存、つながっている世界の意識化 ・コーヒーの値段 原産国は貧困なまま ・世界を分割したヨーロッパ ヨーロッパ諸国による植民地支配の歴史 ・家では誰が何をする? 性別役割の固定化について考える すでに、80年代には、これらの課題を共通認識として持っておかなければ、これからの世界をともに「協力」して築いていくことはできないのだということを、イギリスの教育者たちは発信していたのです。 人権としての教育の原点は、なぜいまの人類社会が、いまあるようなあり方をしているのかを、読み解き、「わたしは何者であるのか」を意識化するところにあるのです。それこそが市民性教育の根源に据えられている必要があるでしょう。 >>>>「についての」研究の進捗が・・・ 国際理解教育や開発教育がすすむと、実践だけでなく、研究もすすみます。大学でもそれを研究する人が生まれ、そして・・・ いまの研究・学会体制というのは「新奇性」「専門性」「細分化」が特徴であって、論文が量産されていきます。 本来の「知」というものが、実践についての「知」を深め、よりよい質の実践へと「改善」していく「システム思考」に利するものであるはずなのに、現場にはあまり役に立たない、現場を知らない人や人たちのための「情報提供」のための調査や研究に終始しています。文部科学省が行っている「実態調査」などは、その最たるものでしょう。調査にかかる時には、すでに手だても予定されているのではないかとすら、思えます。 参加型地域調査の方法として、ERICが学んだPRAは、1980年代の開発計画が、専門家による現地調査と、その調査結果に基づく外部の開発計画立案者によってなされているために、一年、二年というようなタイムラグが生じる問題点を克服するために改善された「地域評価法」でした。 その特徴は、「地域の人が知り」「地域の人が決定する」。ことにあります。地域の人が現実をもっともよく知っている。当たり前のことですよね。にもかかわらず、そのような対策や手だては、教育の現場においてはとられることがないのです。「公平性」や平等、制度が邪魔をしているようです。 調査研究と改善の手だての乖離が、大学・文科省・現場の間に存在するのではないでしょうか? 「開発」についての研究、「国際理解」についての研究がすすむことで、教育現場に得られた利益は何でしょうか? 「について」の研究や教育は、ともすれば博物的・知識注入型になってしまうことの弊害を、十分に意識しておく必要があるでしょう。どうすれば、現場の実践力につながる調査研究を行えるようになるのでしょうか。 >>>「のための」教育 共に社会を築く市民性教育 スキルと理念 『ワールド・スタディーズ』は、南北格差、人種差別、女性差別について問題提起し、これらについて意識化し、学び、考えることを、国際理解教育の共通基盤とすることを提案したのですが、教材としてもう一つの工夫がありました。 それは「概念を教える」ということでした。ワールド・スタディーズが提案した10の概念は、ESDにも生き続けています。 『ワールド・スタディーズ』による和解と、これからを共に創るために提案された共有価値。なんども紹介していますが、あらためて、紹介しておきたいと思います。これらの価値観がすばらしい点は、点検の視点として、国連人権規約委員会や政府にも訴え出ることができる、とても「ワーカブル」な実践的な価値であるということです。 ■『ワールド・スタディーズ』の10の基本概念 •相互依存 •公平さ •似ている点・異なる点 •コミュニケーション •協力 •力の分配 •対立 •原因と影響 •社会の変化 •価値観と信念 アジア諸国に対する謝罪としての日本国憲法と、その憲法が提示する諸価値が、政治的リーダーによってその土台がゆるがせになりそうになる日本との大きな違いですね。 すべての日本軍がレイプしたわけではない。慰安所は合法的に運営されていたのだから、利用した兵士たちが避難される謂れはない。強制ではなく、セックスワーカーとしての仕事として選んでいたのだ。女性たちを押し出す貧困が背景にあったのだ。というような主張から、他の国の軍隊もやっているじゃないかという「罪を隠すなら罪の中」のような主張まで、「なんで日本軍だけ?」ということでしょうか? 日本軍のその名誉を回復することが、日本が国際社会で名誉ある地位を回復することだと、思っているということでしょうか。すでに、67年間の「平和」という理念のもとに名誉を回復しつつある実績をかなぐり捨ててまで、取り戻したいのですね。残念です。 日本が、国際社会がこれからを共に築くために、共通価値として、何を提案したいのか、それが問われていると思います。先人の名誉のためであれ、自衛のためであれ、侵略の罪を罪として認めないところに、未来はありません。理想化したい「明治」が、国際社会に共通価値として暗示しているものは何か、想像力を働かせてみてはどうでしょうか。 昨年、ERICの研修は「ガイドラインを活かす」でした。それはリスク・コミュニケーションの教材開発にあたって、ガイドラインを作成しようとしたのですが、すでに作られた「より高い質のための教材ガイドライン」がどのように使われているのか、誰が合意し遵守しているのか、バラツキがあることに気づいたからでした。 ガイドラインと言っても、3つほどの原則がそうである場合もあれば、数十ページに及ぶ詳細なものもあります。工事仕様書のように、守られなければ、ペナルティが課されるものもあれば、精神的協定のようなものもあります。 大切なことは、ガイドラインの目標が、1人ひとりの実践者の「内化」した目標となることです。どうすれば、ガイドラインを使って、内化させていくような実践ができるのか。三年越しに予告し続けている『いつでもESD』にようやくまとまりそうです。 >>>『いつでもESD』完成一歩手前の、とてもパーソナルな、故に政治的な事情 いつもは5月の連休にあるTEST in大阪に合わせて編集していたのですが、それがなくなったために、編集の集中力が低下、加えて安倍政権やら橋下発言やらで、深く疲れはて、やる気を失い、怒りを覚え、と「ローラーコースター状態」がやっと収まった気がしています。 自分に対する暴力が「侵略」であったかなかったか、わからないほどに「近代国民国家日本」に飼いならされた兵隊さんたちもたくさんいるようですが、自分に対する侵害が、レイプか否かがわからない人はいません。レイプの否定は、セカンドレイプです。 第二次世界大戦中、日本軍が組織的に史資料を焼却処分してしまった「歴史に対する罪」を問うことなく、資料主義で「証拠」の在不在を問う姿勢、そして、「侵略」の定義を1974年の国連決議で考える姿勢など、侵略された側が声をあげ続けた歴史の蠢動を、あまりにも無視した考え方です。「侵略」についての国際社会の合意は1933年にもすでに試みられているのです。どう決着したかは政治的な事柄であって、「侵略」された側が問題提起をしてきているという歴史に変わりはありません。あまりにも、ばかげた議論、軍人たちの名誉を守ろうとする言説に加担するなど、国家主義に取り込まれた発想です。 絶望こそが希望である。そして、地球の資源の3/4を使っているわたしたちに、絶望するというぜいたくは、ゆるされない。Think Nukes by 30% of your power. 自分で決めた三原則に従って、後もう少しの編集作業をやり遂げようと思います。がんばれ、わたし。 <<<<<<>>>>>>>> 2. 2013年ERIC主催研修 <<< 2. テーマ「環境」 2013年7月27日28日 3. テーマ「人権」 2013年9月28日29日 4. スキル「対立」 2013年10月26日27日 5. スキル「市民性」 2014年2月22日23日 6. スキル「TEST14 Teachers' Effective Skill Training 教育力向上講座 2014年3月 予定 今年度の統一テーマは「熟議力」です。実施要項はこちらから。 http://eric-net.org/detail_new.html?newsReleaseId=a0X10000002jyJWEAY <<<<<<<<>>>>>>>>>>>> 3ERIC25周年! & 国際理解教育40周年 ERICは1989年設立です。今年が満25年ということですね。 25周年を記念して、ERIC事務所の内装を改善し、機能性を高めたいと思っています。永年使い続けている身にとっては使い勝手のよい事務所なのですが、どう見ても、初めて来た方にフレンドリーとは言いがたい。どう改善できるか、課題なのですが、内装に手をつけるのはお金がかかる! みなさまの場としても、活用のご希望をお寄せください。そして、また、ご寄付も。 昨年は、解放教育研究所、『解放教育』の廃刊に寄せて、7名の方々と対話しました。たぶん、対話できた相手の方は、志を同じくする同志でしか無かったのかもしれません。そこから、また、次の対話へと、すすんでいきたいと思っています。インタビューの報告は、記録ができているものが、ブログにあげられています。 http://ead2011.exblog.jp/ 次の対話は、1974年のユネスコ勧告からの40年が何だったのか、ふりかえりつつ、できていること、これからの課題を考えたいと思います。 >>>>>>>ERIC25周年に向けたご寄付のお願い <<<<<<<< 1989年誕生の参加型学習老舗のERIC国際理解教育センター。 これまで続けて来られたのも、企画委員、運営委員、理事、テキスト購入者、ファシリテーター育成事業参加者など、みなさまのおかげです。感謝です。 これからもよりよい「指導者育成のための実践」推進のための情報提供、研修プログラムの提供などに努力していきたいと思います。 日常活動に加えて、25周年に向けて、事務所のリニューアル、フューチャーサーチ走向未来ワークショップの開催など、企画しています。 特別活動支援のために、テキスト活用、研修参加などのご支援に加えて、ぜひ、ご寄付をお寄せください。よろしくお願いいたします。 ご寄付先 金融機関 ゆうちょ銀行口座: 10020-3288381 名義:トクヒ国際理解教育センター(ゆうちょ銀行同士) ◯◯八(ゼロゼロハチ)店008-0328838 名義:トクヒ国際理解教育センター(他の金融機関から) ********************************************************** (特定非営利活動法人)国際理解教育センター ERIC:International Education Resource & Innovation Center 〒 114-0023 東京都北区滝野川1-93-5 コスモ西巣鴨105 tel: 03-5907-6054(研修系) 03-5907-6064(PLT・テキスト系) fax: 03-5907-6095 ホームページ http://www.eric-net.org/ Eメール eric@eric-net.org blog 「 ESD ファシリテーター学び舎ニュース http://ericweblog.exblog.jp/ blog 「PLT 幼児期からの環境体験」 http://pltec.exblog.jp/ blog 「リスク・コミュニケーションを対話と共考の場づくりに活かす」 http://focusrisk.exblog.jp/ blog アクティブな教育を実現する対話と共考-ESD的教育力向上を目指して http://ead2011.exblog.jp/ blog 平和の文化への道を拓く平和教育 翻訳プロジェクト http://pepathway.exblog.jp/
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| 2013-06-03 17:13
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