エネルギー・原子力大転換 電力会社、官僚、反原発派との交渉秘録
仙谷由人、講談社、2013 1982冊目 1年6ヶ月、内閣官房副長官、民主党政調会長代行という立場からかかわったドキュメント。 国のエネルギー政策は転換を求められた。 2010年6月には、民主党政権下で「エネルギー基本計画」を閣議決定している。2020年までに温室効果ガスを25%削減する、2030年までに原発依存度を53%まで高めるというものだ。54 仙谷さんは問う。マニフェストの脱ダム、世界に約束した温暖化対策はどこに行ったのかと。 ☆ 「地球温暖化対策のための税」が平成24年10月1日から導入されました。 ☆ 2011年に排出量が最も多かったのは中国(29%)で、以下米国(16%)、EU(11%)、インド(6%)、ロシア(5%)、日本 (4%)の順であった。世界最大の人口を持つ中国では、一人あたりの平均CO2排出量は9%増で7.2トンと、主要工業国の排出量(6トン~19トン)並 みとなった。また、経済協力開発機構(OECD)加盟国からの排出量は現在、世界全体の排出量の約1/3だが、9%増の中国と6%増のインドの排出量を合 わせると同等になるという。http://daily-ondanka.com/news/2012/20120731_1.html ☆ 環境省が発表した2011年度における国全体の温室効果ガス排出量は、CO2(二酸化炭素)に換算して前年度から4.0%増加した。火力発電の拡大によって化石燃料の消費量が増えたことを最大の要因に挙げている。http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1304/17/news018.html 民主党が3.11以降に出した方針は次の三原則。「エネルギーPT」の検討による。 1.原発の40年運転制限を厳格に適用する 2. 停止原発は原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ再稼働する 3.原発の新設・増設は行なわない 菅直人さんが「政治運動論」の立場から「原発ゼロ」を主張。党内はまとまらなかったという。 枝野幸男経済産業大臣、古川元久国家戦略担当大臣は、脱原発派。 仙谷さんは、国際情勢が多様な要素で動くことわ考えた場合、2030年と時限を区切ったり、目標値を定めるべきではないという立場だったという。30 福島で原発事故の収拾に当たっている人々の志気、再処理工場の建設に協力してきている青森県の反発、再処理を認めてきた米国などへの配慮があったという。 いずれにせよ、「放射性廃棄物の最終処分の見通しもないまま、原発だけが政官民の利権構造の中で県施さされたこの事業は、まさしく”矛盾”に身悶えしてきた歴史を抱えているのだ。それを今、すべて直ちに解決しろ、というのは土台無理な話しである。」42 再生可能エネルギーの利用推進のためにも、燃料費のために「三兆円」という国富の流出はやめるべきだと、エネルギー自給率4%しかない日本のあり方を踏まえて、仙谷さんは指摘する。 1954年 第五福竜丸事件から核実験反対の署名運動は3000万を集めた。120 電力が逼迫する中、最初に再稼働の動きがあったのは、中電の浜岡原発であった。しかし、それは政治問題に発展すると、「いやな予感」があった。118 それが総理の判断での停止命令。 玄海原発の再稼働もストレステスト、やらせ問題でストップ。128 東京電力は2012年7月31日「原子力損害賠償支援機構」による出資を受け入れ、実質国有化された。130 なかなか会長人事が進まない中、下河辺和彦氏が「一年だけ」ということで、2012年4月に就任にいたる。149 やる気の失せた班目春樹原子力安全委員長のもと、2012年3月に発足する予定であった原子力規制委員会の遅れるまま、原発再稼働に必要なストレステストを3月までに安全委員会が了承していたのは、大飯原発3号4号機だけだった。160 機能不全の原子力安全委員会にかわって、関係四大臣による狭義で決める仕組みをつくった。暫定基準ではあったが、それらはそれまでの安全委員会などの項目も服得手のことだから、判断に問題はなかったと。 最後に、原発輸出について推進派として、仙谷さんが言うのは、「新重商主義時代」ということである。途上国におけるインフラ整備の受注競争である。196 電力、水道、鉄道・道路、空港・港湾など。2030年までに41兆ドルにも達する。日本はほとんど参入できていない。 日本のガラパゴス化。 仙谷さんは、小水力の水車の安価なものがベトナムで作られていることを知っているのだろうか。世界が脱原発に向かう中で、いまさら巨大な投資をして原子力を呼び込むことは、これから先も日本の原子力産業におんぶにだっこになることだ。 ドイツは、すでに脱原発に舵を切り、「廃炉」ビジネスを手がけていこうとしている。 失われた20年を嘆いても仕方のないことだが、インフラ整備やシステム輸出の必要性はわかるが、そのためには外交をしっかりする必要があるだろう。 一度は東電の会長にと、白羽の矢をたてられた丹羽宇一郎中国大使などは、その後の日本の外交転落に驚天動地しているに違いない。 ひどい話しだ。石原暴走をとめられなかったのも、民主党政権である。 これですべてかな? 再処理はできない。原発は維持する。 活断層の心配がなさそうなのは、玄海原発だけ。 原子力行政の傲慢さのツケは大きい。
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| 2013-05-27 17:06
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