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市民の政治学—討議デモクラシーとは何か

市民の政治学—討議デモクラシーとは何か
篠原一、岩波新書、2004
1960冊目

ギデンズによる「モダニティの制度」によって、近代を複数の要素の結合体と。13

資本主義=産業主義
個人主義=近代国家
科学主義

『成長の限界』など、近代の限界が指摘されだした1970年代以降に、「新しい社会運動」が始まる。それは近代のそれぞれの側面に対する「警告行為」と言える。30

産業主義: 公害、都市問題、交通問題、地球温暖化
資本主義: 労働問題、消費者問題、大量廃棄問題、南北格差
個人主義: ジェンダー・マイノリティ、障害者問題、社会の原子化
近代国家: 平和と核、自治と分権、地域福祉、グローバリズム
科学主義: 原子力、医療、遺伝子操作

科学主義に対する批判から、科学に対する「文民統制(シヴィリアン・コントロール)」が求められている。40

ギデンズ「近代という時代が到来するとともに、自己内省性は異なる特質を呈するようになる。・・・あるしきたりを、それが伝承されてきたものであるというだけで是認することができなくなった。」近代社会が自己変革力をもつ。46

近代は再生産の過程で自己のモニタリングを行って自己を変革していくのである。
このような新しい社会はリスク社会とよばれている・・・47


「第一の近代」の発展のすえ、・・・完全雇用を達成。
「第二の近代」の特質は完全雇用の崩壊。65-66

パートタイム革命

近代の変容とともに完全雇用が行き詰まり、勤労所得が減少したため、財政資金の調達にも限界が生じ、また労働運動の弱体化のため、組織労働者の要求によって社会的公正を保持することも困難になった。72

このディレンマを克服する一つの方法として新しく「基礎所得」という考え方が登場。72

第5章 討議デモクラシー

討議制意見調査Deliberative Pollの歴史。160〜
1994年に、フィシュキンの指導の下に、イギリスで実行された。これまでにイギリスでは五つの報告書が出版されている。
アメリカでは1996年より。

コンセンサス会議は、この本の出版の時点で唯一日本で実践されていた討議デモクラシーの制度。174
2000年9-11月「遺伝子組み換え農産物を考えるコンセンサス会議」
2000年11月から12月「ヒトゲノム研究を考えるコンセンサス会議」

さらに、「紛争解決」を加えた制度としてMDVがある。181

討議と参加と紛争解決の機能「多段式対話手続き」
第一段階で、ランダム・サンプリングで選ばれた一般市民に対して、問題の解決方法について一時間半ほどインタビューする。第二段階で、インタビューを受けた市民、利害関係者、専門家が15名ほど選ばれ、約3時間の討議を行う。問題の整理と問題解決に向けての試案を示す。
第三段階で、計画細胞*で討議する。市民提案を作る。

観察・判断・行動を組み合わせたもの。

*計画細胞とは、ランダム・サンプリングで選ばれ、一つのグループは約25名であり、討議を有効にするためにそれをさらに5名ほどに分けて討議をすすめる。会議は四日間にわたって、一日に1コマ90分の討議が4コマくまれる。会合を重ねると、ヒエラルキーが生まれるので、構成は会合ごとに入れ替える配慮もしている。


あとがきに、筆者は用語の問題を指摘している。

Deliberation
審議、協議、討議、熟議
議論を尽くして合意に達するのではなく、異論をたたかわせることが本質である。203


2002年秋の婦選会館で行われた政治教室連続講義をもとに、書き下ろされたもの。
by eric-blog | 2013-05-06 10:21 | ■週5プロジェクト13
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