リスク・コミュニケーション論
平川秀幸、土田昭司、土屋智子、大阪大学出版会、2011 1877冊目 どこやらの地震津波予測の報告書と同じく、2011年3月7日の出版である。 第一講「リスクガバナンスの考え方」は、PLTの『リスクに焦点』に書かれていること、引用されている内容とほぼ同じである。 日本化学会リスク・コミュニケーション手法検討会が出している『化学物質のリスク・コミュニケーション手法ガイド』から7つの原則が紹介されている。 『リスクに焦点』でも、リスク認知に影響する因子が紹介されているが、(p.34)少し違うので、紹介しておこう。28-29 1.破滅性 2.未知性 3.制御可能性・自発性 4.公平性 5.信頼性 6.主要価値類似性 最近のリスク認知の要因として再整理されたものに特長的な項目は、「未来の世代」だと言える。Understanding Factors of Risk Perception By David Ropeik http://translate.google.co.jp/translate?hl=ja&sl=en&tl=ja&u=http%3A%2F%2Fwww.nieman.harvard.edu%2Freports%2Farticle%2F101384%2FUnderstanding-Factors-of-Risk-Perception.aspx&anno=2 (ちなみに、この自動翻訳は結構いい) さらにこの本で紹介されているものでわかりやすいと思ったのは、リスク・コミュニケーションに含まれる要素として ・ケアコミュニケーション ・コンセンサスコミュニケーション ・クライシスコミュニケーション リスクが顕在化してしまった状態 の三分類が紹介されていたことだ。173 わたし自身は、リスク・コミュニケーションを「コンセンサス合意形成」のためのコミュニケーションだと理解していたように思う。しかし、3.11以降求められていたのは、あきらかにケアコミュニケーションであり、現実的にはクライシスコミュニケーションであったのだ。そのフェーズあるいはニーズの理解のずれが、リスク・コミュニケーションそのものを阻害したのかもしれない。そして、この視点は『リスクに焦点』にもまったく含まれていない視点なのである。要検討であるね。 第二講は「参加型手法」について。平川さん 第三講は「リスク・コミュニケーションの社会心理学的様相」土田さん 原子力発電の危険性の認識は「他者管理型」であるからで、「自己管理型」のリスクであるという認識に変えて行くことが大切だ、と指摘しています。108 国会人事であった原子力規制委員会の人事も、総理の判断でGoなど、原子力行政について「自己管理型」と認識するために必要な条件とは何なのでしょうか?ちょっと知りたいですね。 p.147の図3.6「リスクの四つのタイプ」とその受け止め方の四パターンの整理もおもしろいので紹介しておきます。 四つのタイプ分けは「便益性」の縦軸と「危険性」の横軸の二次元軸での四象限で分けられています。 第一象限は、便益性が高く、危険性も高い「ハイリスク・ハイリターン」のtype1。特に、前ページで著者が指摘しているように、人は起こる確率ではなく、「事故の大きさ」で危険性を判断しがちなので、多くの人は原発をこの象限のできごとだと捉えていると。この象限のリスク認知は心理的緊張が高く、規範的実質的判断が求められるものとなる。基本的にはリスクというのはこのタイプのものについての判断のこと。 それに対し「ハイリターン・ローリスク」のtype3はメリットの高い「良いもの」と評価され、リスク判断の対象にならない。 「ローリタン・ハイリスク」のtype2は「悪いもの」と判断され、これもリスク判断の対象にならない。そこで動いているのは感情ヒューリスティックなのだと。 実際には原子力発電は、type3なのではないか、と著者はいいたげなのだが。 そして、いまや、リーダー任せではなく、分散型意思決定社会、成熟型民主主義社会、成熟型市民社会になっている。専門家がリーダーとして信頼されていない。 第四講は「リスク・コミュニケーションの実践方法」は土屋さん。P.167〜 対話・共考・協働をリスク・コミュニケーションの和訳と現実的な意味と考えていると。 4. リスク・コミュニケーションのプロセス ●目標の設定 ●情報の受け手を決める 受け手分析 ●計画の策定 表4.7 リスク比較のガイドライン (Covello, et al. 1989)p.197
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