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ルポ賃金差別

ルポ賃金差別
竹信三恵子、ちくま新書、2012
1845冊目

「低賃金でも構わない」人びと。あの人たちは「低賃金で当たり前」という感覚。それは具体的には
○夫や親が食べさせてくれる人たちだから安くても我慢すべき
○家事や育児のあいまに好き勝手に働きたい人たちなのだから安くても我慢すべき

あるいは
○男性の補助的仕事
○女性は早くやめるから重要な仕事を与えられない。

それを受入れてしまった社会の感覚が、低賃金の構造を生み出したのだと著者は言う。実力主義や成果主義は、正社員だけに当てはまり、低賃金構造に組み込まれてしまうと、どれだけがんばっても賃金は上がらない。そのようなカテゴリーに入れられている人びとが労働者の三人に一人になったと。013

正社員と同一労働でも賃金差別は続く。

それに対抗するために1987年、カナダの「ペイ・エクイティ法」では、職務評価による差別是正が試みられ、それは各国に広がった。064



労災をめぐって戦いを起こすと、「アカだ」と夫の職場にまで圧力がかかる。

取り上げられている差別賃金に対する異議申し立て事例の多くが60歳代の女性であるのだが、いまや賃金差別構造は、女性だけの問題ではない。

それが「違う会社」に請け負わせる構造だ。

「違う会社の人」に仕事を請け負わせることで、働く人の賃金を、なめらかに、静かにさげることができる。172

例にあげられているのが、警備会社だ。競争入札による警備管理会社の決定。

もちろん、最近よく聞く例では東電の孫請け、ひ孫受けだ。

エネルギー・環境の選択肢に関する意見聴取会も、博報堂に7000万円で丸投げしたことが問題にされたが、博報堂などは、下請けのイベント会社に何割かをさっぴいて投げているだけだ。警備会社は土日出勤の手当など、出してもらえたのだろうか。

人種差別の結果まきおこった公民権運動への嫌悪感が、アメリカ社会の格差拡大の背景にあると指摘しているのはノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマンだ。185

「あの人たちが差別されていても仕方ない」と思う気持ちが、社会の沈め石になる。

まったく、日本という社会はオルダス・ハクスレーの描いた『すばらしき新世界』をそのまま生きているんだなあ。違っていても、怒らない。その怒りのなさが、「分」意識であり、身分社会の記憶なのではないだろうか。具体的にいまも、それを支えているのが「役」「役割社会」なのではないかと思うのだが。

平議員と安冨さん出演のトーク番組。「発狂している」専門家たちに任せておくことはできない、と、一人ひとりが変わらなければと。特効薬はないそうだが。
http://www.ustream.tv/recorded/24166664
by eric-blog | 2012-07-26 14:45 | ■週5プロジェクト12
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