ジーン・シャープ From Dictatorship To Democarcyより p.26 -31
原文は無料でダウンロードできます。 第三章「権力はどこからくるか」 政治的力の根源 原則は簡単です。独裁者は、彼が支配している人びとの支援を要求します。それがなければ、彼らはその政治的力の源を維持することができません。これらの源には、次のようなものが含まれます。 ・権威、人びとの間に、この政権は合法的であり、従う倫理的義務があるという信念がある。 ・人間的資源 独裁者に従い、協力し、支援する人びとやグループの数。 ・技術と知識 政権によって特別な行動をとるのに必要とされる、そして、協力する人びとやグループから供給される技術や知識。 ・複合的な要因 心理的、理念的な要因であって、人びとが独裁者に従い、支援するようにさせていくもの。 ・物質的資源 独裁者が管理し、アクセスすることが゛てきる財産、自然資源、財政的資源、経済大勢、コミュニケーションおよび交通手段 ・制裁 従わないひとや協力しない人に対して、脅迫として使われるか、実際に適用されるかする罰則。それによって政権が存在し、政策を実効するために必要とされる受容と協力を確実にする。 これらすべての資源は、政権が受入れられているかどうか、人口が受容し、従うかによっている。また、多くの人びとと、社会の多くの機関の協力に依存している。これらは必ずしも保障されているわけではない。 完全な協力、従属、支援は必要とされる力の源を利用可能にし、どのような政府であれ、その力の要領を拡大するものである。 一方で、圧迫者や独裁者に対する人びとからと諸機関からの協力がなくなれば、すべての これらの資源がなくなれば、支配者の力は弱まり、なくなってしまう。 自然なことだが、支配者たちは、自分の好きな様に振る舞う幅を脅かす行動やアイデアに対して、とても敏感である。独裁者は、服従しない人、ストライキをする人、協力することに失敗する人びとを脅かし、罰しようとする傾向がある。しかしながら、それはこの物語りのおしまいではない。抑圧、残虐ささえも、政権を維持するために必要なレベルの受容と協力を、いつも引き出せるわけではない。 抑圧にも関わらず、権力の源は、必要な期間にわたって制限され、制約される。その初期的な結果は、独裁政権内の不確実性と混乱である。それは、独裁政権の力の明確な弱体化につながることがある。権力の源を引き上げることは、時間とともに、政権の機能不全と硬直につながり、極端な場合には、崩壊となる。独裁者の権力は政治的飢餓によって、ゆっくりとあるいはすばやく、息絶える。 どの政府においても、自由か独裁かの程度は、被支配者の自由で自発的な、自分たちを奴隷化するものに対する抵抗との相対的な程度を、大きく反映しているものである。 一般的な世論と異なり、全体主義的独裁者であっても、彼らが支配している人口と社会に依存しているものだ。政治科学者カールW. Deutschが1953年に書いている。 「全体主義的権力は、その力を行使する必要が少ないほど、強い。全体主義的力が、人口全体に対して、常に使われる必要があるようであるなら、長くは続かない。全体主義政権は、その他のタイプの政権と比較して、大きな力を必要とするので、支配している人口の中に、より広範に広がったコンプライアンスの習慣があることを、切実に必要としている。必要であれば、頼りにできる重要な部分からの積極的なサポートよりも、である。」 イギリスの19世紀の法学論者、ジョン・オースティンは、影響を受けていない人口に直面した独裁者の状況を次のように描写している。オースティンは、人口のほとんどが政府を破壊しようと決意しており、それに対する抑圧を喜んで受入れるとするならば、政府の力は、その支援者たちの力も含めて、その憎まれた政府を保持することはできない。外国からの支援を受けてでもである。支配に抗する人びとは、恒久的な従順さと従属とに押し込めることを力で達成することはできない。と、オースティンは結論づける。 ニコル・マキャベリは、「公衆全員を敵にした王子は、自分の安全を確保できない。彼の残虐さが際立てばきわだつほど、彼の政権は弱体化する」と。 このような洞察が実際的にどういうことを意味するかというのは、ナチの占領に対して抵抗したノルウェーのヒーローによって示されている。この本の第一章で紹介した勇気あるポーランド人、ドイツ人、チェコ人、スロベキア人、その他、共産主義と独裁者に対抗した人びと、そして、最終的にはヨーロッパにおける共産主義の崩壊につながった。これは、もちろん、新しい現象ではない。非暴力的な抵抗は、少なくとも、紀元前494年に、平民がローマ貴族院に対する協力を引き上げた事例までさかのぼることができる。非暴力的な闘争はアジア、アフリカ、両米、オーストラリア、太平洋島嶼国、そしてヨーロッパなど、さまざまな時代に、人びとによって実践されてきた。 どの程度まで政府の力をコントロールすることができるかを決定する要因は以下である。 (1)政府の権力に制限をつけたいという庶民の欲望の相対的な程度 (2)被支配者の独立的組織や機関が、権力の源から集団的に引き上げる相対的な力 (3)人びとが同意と支援を維持することのできる相対的な能力 民主的なパワーの中心 民主的な社会の一つの特長は、そこに多くの非政府組織的グループが多数存在することである。例としてあげるなら、これらには、家族、宗教団体、文化的協会、スポーツクラブ、経済機関、同業者組合、学生組織、政党、村、近隣協会、ガーデニングクラブ、人権団体、音楽グループ、文壇、などがある。これらの団体は、彼らの目的そのものを達成するために必要であり、また、社会的なニーズに応えるためのものである。 さらに言えば、これらの団体は、大きな政治的重要性を持っている。それは、人びとが、自分たちの社会の方向性についての影響を与え、彼らの関心、利益、活動や目的を不当にせばめようとする他の団体や政府に対抗するためのグループや機関的な基盤を提供するものである。孤立した個人、そのようなグループに所属しない個人は、社会に対して大きな影響を持ち得ず、いわんや政府に対しても、ましてや独裁者に対して、大きな影響を与えることはできないのである。 その結果、そのような団体の自立と自由が、独裁者によってとりあげられるならば、人口は相対的に無力化される。また、これらの機関が、中央政権によってコントロールされたり、新たなコントロールのもとに置かれたりすれば、個人のメンバーや、社会に置けるその方面の両方を支配することになるだろう。 しかしながら、これらの独立した市民社会機関の自立と自由が(政府のコントロールをはずれて)維持され、再強化されるならば、これらの機関は政治的不服従の応用の場として、とても重要である。独裁者が、分断され、弱体化された事例を紹介したが、それら共通するのは、勇気ある大衆による、政治的な反抗の実践によるのである。 述べて来たように、権力の中心は、人口が圧力をかけることができる、あるいは独裁者のコントロールに対抗することができる組織的な基盤を提供することである。将来的には、これらの諸団体組織は、自由な社会における構造的な基盤として必要不可欠な部分を構成するだろう。彼らの恒常的な独立と成長は、自由と解放を求める闘争の成功の前提条件なのである。 もしも、独裁者が社会の自律的団体を破壊し、コントロールすることに、おおむね成功してきているとすれば、抵抗者にとって大切なことは、新たな社会グループや機関を創造し、あるいは現存するあるいは一部コントロールの元にある団体の民主的コントロールをふたたび確実にすることである。1956年57年のハンガリー革命では、直接的な民主的協議会が生まれ、さらには諸機関やガバナンスの連邦的なシステムを何週間かにわたって維持していた。1980年代のポーランドでは、労働者は非合法の連帯組合を維持し、場合によっては、公的な、共産主義に支配された同業者組合のコントロールにすら成功した。そのような機構的発展は、とても重要な政治的な結果につながる。 もちろん、これらのことは、独裁者を弱体化させ、破壊されることが簡単だと言っているわけではない。また、すべての試みが成功すると言っているわけでもない。このような闘争に、犠牲者がでないということも意味しない。なぜなら、独裁者につきしたがっている人びとが、政権への協力と従属へと人びとを押し戻そうと反撃してくるからである。 権力についての以上のような洞察は、しかし、独裁政権を崩壊されるための意図的な行動は可能であるということを示している。独裁政権は、特に、スキルの高い政治的不服従に対しては、もろいという特長をもっているからだ。次に、さらに、これらの特長について、見てみよう。
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