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新春 第一書 ワンダフル・ライフ

70-1(315) ワンダフル・ライフ-バージェス頁岩と生物進化の物語
スティーブン・ジェイ・グールド、ハヤカワ文庫、2000年 単行本1993年
原著Wonderful Life--The Burgess Shale and the Nature of History
Stephan Jay Gould, 1989
訳者 渡辺政隆

単行本より文庫本の方がいい場合がある。この本もそうだ。1993年の単行本にはなかっ
た訳者によるあとがきが、この本が出版されて以降の動きやグールドの断続的進化論
とドーキンスの漸進的進化論の対比などが簡略に紹介されている。日本に紹介されて
いるのは次ぎのような著作である。
・『カンブリア紀の怪物たち』コンウェイ・モリス、講談社現代新書、1997
・『Unweaving the Rainbow』ドーキンス、1998、『虹の解体』2001
ドーキンスも本が多い人だが、『利己的な遺伝子』が有名。まだ読んでいない。ヘンな解釈が先立っているのがいやで。『遺伝子の川』が読みやすい。
さらに、この文庫以降のドーキンスの著作が2004年立て続けに翻訳出版されている。
・『盲目の時計職人』『悪魔に仕える牧師』
とはいえ、たぶん前者は1993年出版の『ブラインド・ウォッチメイカー』の再版なのではないかと思うのだけれど。

グールドは、この本よりも、わたしは『人間の計り間違い』の方をおしますね。やっぱり遺伝子の問題については、ドーキンスの方がおもしろい。『ドーキンスvsグールド』という本も出ているようなので、読んでみますか。

頁岩は「けつがん」と読みます。入力したら出て来たので、改めてコンピューターの
言語能力の高さに驚きました。簡単なものでも出ないこともあるのだけれど。でも、
それがどういうものかというのはわからないのですが、泥板岩というもう一つの訳語
からすると、泥岩の一種なんですね。しかも、それが重要語7000に含まれているなん
て! shale oil とかの用法があるせいなのかな。日本語からは「けつがん」の項目
はないのに。
しかも、なぜ「バージェス」と命名されているのかも、まったく説明なし。

要するに、と571頁もある本を要約してしまってはいけないが、カナダのヨーホー国
立公園内にあるバージェス頁岩層で発見された5億3000万年前以降に起こった生物の
爆発を示す化石について、その復元と分類・系統を辿った古生物学者たちの物語なの
である。
同時期の化石層としては中国雲南省澄江化石層、グリーンランドのシリウス・パセッ
ト化石層などがある。そして、彼等古生物学者らが化石からその生物の元の姿を復元
するのに格闘している間に、放射性年代測定がカンブリア紀の開始時期についての新
たな推定を出したり、遺伝子解析技術によって、相同遺伝子の共有関係などから分子
のレベルで生物の系統を探ることも行われて来て今日に至る、というようなことらし
い。分子生物学や発生生物学の分野の台頭である。生物的多様性の爆発はどのように
して起こり、そしてそれはどのように次につながったのか。

いずれにせよ、1989年のこの本は、カンブリア紀という時代、生物の多様性の爆発への焦点につながった出版物であったことは間違いない。っていうじゃない。でも、ドーキンスの『利己的な遺伝子』も同時期だったのだけれどね。さて、誰が切られるのか。
by eric-blog | 2005-01-06 09:31 | ■週5プロジェクト04
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