ノアの洪水

かくたです。

いよいよ2004年最後の週5プロジェクトです。みなさま、よいお年を!

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69-2(314) ノアの洪水
Noah's Flood
ウィリアム・ライアン、ピットマン、ウォルター 集英社、2003

旧約聖書に書かれた大洪水は本当にあったのか。メソポタミアから黒海近辺まで、広
く語られている大洪水の物語り。あるいは天地創造の始まり。何らかの事実が、物語
りの根拠となっているとしたら、それはどのような事実だったのか。その探究の物語
りであるこの本は、19世紀のイラク遺跡探検の旅で見つかった楔形文字の粘土板から
始まる。
著者であるライアンが、駆け出しの研究者として参加した1961年の黒海とマルマラ海
を結ぶボスポラス海峡の音響調査による探査は物語りの第二部だ。1970年には地中海
の海底堆積層の掘削調査。そして1993年の黒海での海底ソナー、海底堆積層の掘削調
査を中核に、チェコスロバキアでの地層からの発見、年代同定法の進化の物語りがか
らめられ、洪水の輪郭が明らかにされていく。紀元前5600年に、黒海に海水がなだれ
込んだ変化を、すでに定住し、農耕・牧畜していた人々が記憶したのではないかとい
う。
そして第三部はその人たちは誰だったか、ということについての、今度は考古学、遺
伝子人類学、文化人類学、口承伝統研究などの研究結果との照合である。

物理的には、氷河期と暖期はくりかえしているのだが、氷河期の訪れは段階をおって
ゆっくりと進行し、暖期の変化は早い。氷河期に北極を中心に氷河がはり出し、アル
プス造山帯近辺のくぼみも砂漠化し、あるいは海から断絶された湖になった。暖期の
訪れとともに再び海とつながるようになるが、そのときにジブラルタルやボスポラス
などの狭い峡谷から押し寄せ続ける海の水が、洪水として記憶されているのではない
か、ということらしい。海底堆積層調査については川上さんの『縞々学』にも紹介さ
れていたが、この本の監修も実は川上さんである。
おもしろいと思ったのは、堆積層をボーリングして、地層ごとに含まれる生物、鉱物、
化石などの含有物と層の重なり具合などから、何かを読み取ることをプロファイラ-
と表現していることだ。膨大な物証から、その時の環境のそして生物の、そして人類
の動きを活写していこうとする試みはプロファイリングに通じるものがある。

と、そのような地球科学だけなのかと思って読んだのに、人間遺伝学などに加え、口
承伝統からも洪水の物語りに迫っているところがこの本のおもしろいところだろう。
縞々学的に言えば、時間スケールの違う手法がうまく橋渡しされているということか。

254
文字にされたことのなか死んだ言語はその末裔との比較と、音韻学的変化を司る
法則に従った過去への遡行によってしか再構成することはできない。
...音は意味よりも数世紀以上安定している
275
一つの神話がくり返される朗唱を無傷で生き延びるためには、その神話は強力な物語
を必要とする。

1940年生まれの著者のさらなる神話の背景のプロファイリングに期待したい。
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角田 尚子
(特活)ERIC国際理解教育センター
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by eric-blog | 2004-12-31 14:48 | ■週5プロジェクト04 | Comments(0)
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