ザ・ニューリッチ アメリカ新富裕層の知られざる実態
ロバート・フランク、ダイヤモンド社、2007
資産が100万ドル以上の世帯800万、その子どもが、400万人以上いる国。って、今日のレートだと7700万円じゃん。たいした数字じゃないなあ。とは言うものの、日本でも「60歳代以上の貯蓄が6割をしめる」、そして80歳代から60歳代への遺産の堂々巡りが起っている。お金をもっている人たちは、お金の使い方がわかっていないのだ。
アメリカのニューリッチでも、75%は、遺産を自分の子どもに残したいと思っている。
しかも、資産が株であったり、金融商品であったりするので、「資産を減らさない」ための努力も求められる。特に、次の世代をどうトレーニングするかが課題なわけである。
それも、「子どもに贅沢させる」派は「子どもには苦労させる」派もいるようだが、ここでも後者は少数のようだ。
これらの富裕層での薬物依存の割合は、貧困層のそれと肩を並べるという。
アメリカのニューリッチを著者は資産100万ドルから1000万ドルのlowerリッチ、〜1億ドルのmiddleリッチ、1億ドル以上のupperリッチに分けている。そして、彼らは「別の国」リッチスタンを形成しているのだと。
つまり、アメリスのトップ1%の資産、1兆3500億ドルは、フランス、カナダ、イタリアの国民所得を上回っている。国家予算レベルを軽々と超えている。彼らが享受しているサービスも、人間関係も、まったくアメリカという国の現実と別なのだという。
この本は、リッチスタンという国で起っていることのレポートだ。なんとこの著者、ウォールストリート・ジャーナルの「富裕層担当記者」なのだ。そして、2003年に、最初に書いた「ニューリッチ文化」についてのレポートが人気を博し、本にまでなったというわけだ。
最終章で著者は言う。「国民は所得の多くを不必要な贅沢品につぎこみ、その一方で公立学校制度や道路・橋、医療、環境といった切実な問題への資金は不足している。」253
人類史上、ありえないスピードで、富裕層が拡大している。
ブラック・スワン、重力にしばられない世界がここまで来ている。