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深い淵から-ハンゼン氏病患者生活記録

68-1(309) 深い淵から-ハンゼン氏病患者生活記録
堀田善衛・永丘智郎 編、新評論、2002

元は昭和31年発行のもの。新評論の前身、新評論社から出たものをコピーPDFだと思うが、そのまま再版したもの。おもしろい、このような再版の方法があるなんて。

複数の元患者さんたちの手記だが、256ページもあり2900円なり。研修参加者の鈴ちゃんからいただいた。ハンセン氏病療養所でお勤めとのことなので、もっとお話が聞きたかったのだけれど、主催側であり、コーディネーターもしていたので、十分時間がとれませんでした。一度お話を伺うチャンスを創ることができればと思います。

これまでにハンセン氏病のことについては『しがまっこ溶けた』と熊本の『ゆーかりの…』を紹介している。『ユーカリの』が明治から大正のあり方を描き出していたのに対し、『しがまっこ』が1996年以降を描いたものだと言えよう。それに対してこの『深い淵から』はまさしく戦前戦後から昭和30年までの戦いを描いたものだ。戦争中は塀の中でも外でもひもじいのは同じであったのだろうと思いはするものの、以下のような「隔離」の腐敗が痛ましい。
・戦局が悪化し、ものがなくなるにつれての施設の管理者や高級職員の汚職
・病をもった者同士の低賃金での介護労働および運営のための労働

特に、生活するということについて、女性患者のつらさに、改めて思い当たる。
昭和26年頃から治療薬プロミンによって回復の希望がもたらされるのだが、その恩恵をすべての患者が得られるようにと国と戦う力がすごい。もちろん、その時代の熱気もあってのことなのだろうが。

もう一冊、その30年代から1996年までを語るいい本に出会いたいものだ。単なる運動の年表ではなく。

鈴ちゃん、ありがとう。
by eric-blog | 2004-12-14 14:25 | ■週5プロジェクト04
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