ネグレクト 育児放棄

67-3(305) ネグレクト 育児放棄
真奈ちゃんはなぜ死んだか
杉山春、小学館、2004年

第11回小学館ノンフィクション大賞受賞作。少年犯罪やいじめ事件などについて書かれたものの中で、かなり読みやすい。決め付けやステレオタイプ的な描写がなく、18歳で親となった少年少女(と言いたくなる)の、本人たちもネグレクトされていた生育歴。子育てについての現実感の欠如、若くして、しかも親の反対にもあっての結婚出産について後ろ指を指されることへの恐怖。仕事についたばかりで、その緊張感と『男は仕事、女は家事育児』という観念から判断停止してしまう男性。

2000年という児童虐待防止法ができたばかりでの厳罰かもしれないが、二人は一審での判決懲役7年の刑が最高裁まで争って確定。いま、刑に服している。

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全国の児童相談所に寄せられた虐待の相談処理件数は26569件。2003年度。前年比11.9%の伸び。社会的な介入を必要とするケースが35000件発生しているという。そのうち虐待死した子どもは少なくとも180人にも。2000年

しかし、この真奈ちゃんのケースから、著者は、いま、1割が虐待、2割が予備軍、親の3-4人に一人が不適切な子そして育てを行っている現実があると、決して「凶悪な」「鬼畜」による事件ではなく、普遍的な課題があることを描き出していく。

ひとつには自らの成育の中でも暖かい子育てを知らないこと、そして、このケースでは、親、つまり祖父母らの世代に子育て支援をする力が欠けていっていることが指摘されている。「家族が支えあう力はしだいに失われ、弱いものがむきだしのまま、社会にさらされるようになった」211
それは、決して特殊なケースではないだろう。だからこそ、社会的な支援体制が求められるのだが、このケースでは、真奈ちゃんに1歳半の検診で発達の遅れが見られ、保健師によるサポートや病院や児相との連携もありえた。にもかかわらず、ケースを継続的に検討する体制が作り出されることはなく、そのまま3歳で死んでしまうまで、断片的に病院や保健所との関係が繰り返される。ときには危機感に近いものを、関係者が心にいだきながら。家庭内のことを他人がうかがい知ることの難しさを思う。著者は虐待についての知識が関係者に広がれば、さまざまな兆候がキャッチできただろうと指摘する。また、それがいま求められることだとも。

半月の間に衰弱していったのは、真奈ちゃんだけではなく、母親も精神的に衰弱していたというのが胸に苦しい。

人は、人にどれほど関わることができるのだろうか。制度で、システムで、あるいは善意で、協力で子どもの成長を保証することができるのだろうか。

一気に読んでしまった本でした。
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by eric-blog | 2004-12-05 22:18 | ■週5プロジェクト04 | Comments(0)
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