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黙殺

62-7(284) 黙殺
仲 晃、NHKブックス、2000年

米英中を代表して1945年7月26日に出された「ポツダム宣言」を、当時の鈴木貫太郎
宰相が「黙殺」し、そこから日本の終戦への道筋が違った展開をしていただろうとい
う「神話」に米国の豊富な資料から迫った本。
仲自身1926年生まれで、「戦争」というものにトラウマと言ってもいい感覚、「あの
時どこにいて、何をしていたか」を語りあうだけで、距離が縮まるという。そして、
この本を書いた段階での米国については、その「戦争」とはベトナム戦争なのだと指
摘する。送られた兵士延べ874万人。
そんな後書きを読みながら、これからの米国にとって「戦争」とは、何になっていく
のかと思う気持ちは強い。昨日11月3日は、一日、進展しないテレビの大統領選開票
速報を見ていた。ゴアがの得票がブッシュを40万票上回りながら、選挙人の数では負
けた前回と違って、得票数では300万票も上回っているブッシュが、選挙人であれば、
どうなるかの行方をおっていたのであるが。ブッシュのイラク攻撃に対する支持、が
アメリカ国民の半数はあるということ、でもある。もちろん、反対も、あるのだが。

「ポツダム宣言」を黙殺したことが、原爆投下、ソ連の参戦、引き揚げ者の難苦、シ
ベリア抑留などの終戦、戦後処理へとつながっていったのではない、と筆者は言う。
「黙殺」は最初ignoreと訳され、その後rejectとなっていくらしいのだが、その訳語
の語調も無関係。
戦争の早期終結には「天皇制の存続」を明確に言うことが効果あり、と推測しながら
も、「無条件降伏?いうことにこだわったこと。原爆投下の戦略的、社会的、文化
的、倫理的諸課題についての開かれた論議なしで、「使う」ことに向かっていくトルー
マンの心。
宣言文が一転、二転、三転する4日間。

日本政府の側にも問題があった、と筆者は言う。日本からアメリカ政府に和平を働き
かけることができたはずだ、と。
グルー国務次官、スティムソン陸軍長官、マックロイ同次官補、フォレスタル海軍長
官、リーヒ大統領軍事顧問らが展開していた「天皇制存続を認めることで戦争の幕を
早期にひく」という努力に呼応しただろうと。

35万人の都市ヒロシマ。そしてナガサキ。数十万人の犠牲。「民間人口への打撃」が
目指された原爆の利用。
戦争とは、そして?争の早期終結とは、何なのだろうか。「終結」のために考えた
人々、原爆の脅威に驚き、ヒロシマ・ナガサキ以上の使用は進めなかったトルーマン。
何が人々を引き戻し、何が人々をおしやるのであろうか。エノラ・ゲイのテニアン島
からの出撃にあたって、記念撮影の列に入らなかった核兵器投下準備担当のパーソン
ズのエピソード202を読んで改めて思う・
by eric-blog | 2004-11-04 18:20 | ■週5プロジェクト04
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