62-6(283) 戦うカレン民族-ビルマ辺境訪問記
岩永友宏、凱風社、1995
2000年には「先住民族ブナン」を出版している、らしい。1965年生まれの報道写真家。
カレン民族の解放区コートレイ「花咲く大地」とその地域を取り巻くビルマ軍との前線にあたる尾根を訪ねた記録である。
1月31日は解放を求めて武装蜂起を決めた革命記念日。1949年以来の戦いなのだ。中には、日本軍からそのまま残って、カレン独立のために戦った人もいるとか。
物量ともに、国軍に劣るカレンだが、山頂からの防御は、攻撃側に不利である。山を降りても安逸な生活などどこにもないのであれば、軍隊勤務もつらくはない、というのが現実。
『ローマ人の物語』では、カエサルの時代にしてすでに、山ではなく、河が防衛線になっていたということの意味を、攻める側、攻められる側、守る側、奪う側、支配する側、される側などの対照性の軸からさまざまに考える。
炊いたごはんを山頂に運び上げてもらいながら、戦い続けるカレン兵。ビルマ軍に徴発され、逃れてカレン軍に投じる人々。
避難民村で成長する子どもたち。
カンボジアのラタナキリを訪れたときの山、空気、風のながれ、木立を行く道と黄色い土を思い出した。
一方でビルマの国自体にも1988年以来の軍事政権による民主化弾圧。ここにも多重的な様相が、見えてくる。