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ファシリテーター100の概念1 

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ERIC NEWS at ERIC ともによりよい質の教育をめざして
    教師教育学とファシリテーター100の概念
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(文責: かくた なおこ)

2011年、平成23年、新年あけまして、おめでとうございます。

年明けから、高等教育無償化は可能かを検討するために、「高等教育のコスト・
ベネフィット」などの試算を見ていました。http://ericweblog.exblog.jp/

こんな試算をしている間は、構造改革はないなと思いました。

なぜならば、これらの試算の大前提が次の2つだからです。

1.世帯を養う「男性」に求められる給与水準で物事を考えている。
2.高等教育を個人的投資とのみ考えている。

世帯扶養給与水準というのは、かつて「社畜」と呼ばれた会社人間とそれを支え
る「専業主婦」の
無償労働に対して支払われるべき金額です。

私立大学がより大きな比重を占めるという、世界でも珍しい日本の高等教育環境
をすぐに変えることは
できないことでしょう。
しかし、「高等教育の無償化」は、人材育成は個人投資ではなく、社会投資であ
るべきであるという理念によるものです。

ERICは国際理解教育、環境教育、人権教育、ESDの分野における教育的人材育成を
行なってきました。
主催研修と受託研修の二本柱がありますが、圧倒的に受託研修が多いのが現実で
す。主催研修でも、
公的な資金で参加される場合もありますが、少数派です。受託研修は、公的な資
金で行なわれる場合がほとんどです。
つまり、人類共通の課題についての学習に対する個人投資は少ないのです。現実
として、人権・環境について学ぼうとするのは、公的な投資で進められて来たの
です。

環境をビジネスチャンスにつなげること、それは多いにあるべきことです。
しかし、そのことと、ベーシックな基盤として、教養として、わたしたちの社会
の共通基盤としての環境教育は、必要です。

ESDや国際理解教育も同様です。これらの教育は、私たち人類の生き残りのための
教育であり、
すべての国々における共通の努力として、行なわれるべきものなのです。

わたしたちが地球や人類について「知る」ことは、すでにそこにずっと存在して
いたことを、
発見しているのにすぎません。

あるのだけれど、知らない。
知っているのに、わからない。
わかっているのに、できない。

そんな世界に、生きる互いを、認め、励ましあう。そんな力をつけていきたいも
のです。

人を啓き、社会を開き、未来を拓く

このことを共に追究し、考えあってきた仲間とともに、これからを展望する
2011年にしたいと思います。それぞれの場で、次の世代、未来のために努力を続
けておられるみなさまに、感謝しつつ。

2011年のERICニュースでは、「ファシリテーター100の概念」について、ご紹介し
ていこうと思います。何? それ? 

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◆ ESDは価値観の教育である = 概念や理念を教育ツールに ◆  
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ESD持続可能な開発のための教育は価値観の教育だと言われます。
正義や公正さ、
自由や平等、人権
など、わたしたちの社会を方向付けるビジョンや
予防原則による行動選択、
協力、相互依存の尊重、
多様なものに対する共感
など、姿勢や行動の原則となるもの。
それを共有することが、ESDのいう、価値観の教育です。

『ワールド・スタディーズ』や『PLT 木と学ぼう』はまさしく
そのような価値観や概念を共有することを、アクティビティを通して
行っているものです。

ESDの教育的指導者、教員、教師、教育者に求められることは、
価値観を共有する参加型手法やアクティビティに習熟ことに加えて、
アクティビティを体系だてて、学習者に提供できることです。

PLTのカリキュラムが5つの概念とストーリーラインによって組み立てられている
ように、カリキュラムを構成することは、コースやコンテンツを組み立てる上で
大切なことです。

わたしたちの社会がすすむべき方向やビジョンを示し、共有していくために、
「理念」や「概念」を教育的なツールにする、それは教師教育においても同様だ
と言えるのです。

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  ◆ 指導者育成のガイドライン = リテラシーとコンピテンシー ◆  
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では、教師教育のためのカリキュラムは、どのようなものでしょうか。

例えば、NAAEE北米環境教育連盟が設定たGuidelines for Preparation and
Professional Development of Environmental Educators
環境教育指導者に求められる能力─6つのテーマ
というガイドラインがあります。
http://www.naaee.org/programs-and-initiatives/guidelines-for-excellence

6つのテーマとは、以下の大項目です。

1. 環境リテラシー
2. 環境教育の基礎
3.環境教育指導者の専門家としての責任
4.環境教育の計画と実施
5学びを促進させる
6.アセスメントと評価

1は、教える内容についての知識と教え方
2は環境教育の目標、理論、実践、歴史の基礎的な事柄についての理解
と説明されています。
加えて、責任、計画立案、実施、評価というような「Reflective Practitioner=
省察的実践家」としての資質とスキルが求められています。教育者としてのリテ
ラシーとコンピタンシー。

実施において「学びをファシリテートする」ことが特に言及されているのは、環
境教育において
「指導者は、とりわけ争点があり、学習者が自分自身の見方と他者の見方につい
て真剣にふりかえる
必要のある環境問題について考えるときには、学習者が開かれた問いや調査に従
事できるようにする。」が大切だからです。

しかし、現実には、環境教育は、現在の大学教職課程においては、教科としても
教授法としても確立していないのです。
まずは、環境教育の指導者育成に合意し、ガイドラインを定め、ガイドラインに
従って、
それぞれの大学が教師教育学カリキュラムを創造する必要があるでしょう。

ガイドラインや原則の存在は、「内発的動機付け」につながるものであり、外部
や上からのものではないことが重要です。
しかし、同時に、わたしたちは優れた実践や先進事例から学びあいながら、歴史
を作ってきていることもまた事実なのです。

学びて思わざれば、危うく
思いて学ばざれば、暗い


そのバランスをどのように取るかにかかっています。

どうすれば、素早く学びつつ、深く考えることができるのか。

熟議のように、「みんなの頭で考える」時間を共に持つことが、いま求められて
いることなのでしょう。

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◆ ファシリテーター100の概念は教師教育のカリキュラムである ◆  
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概念をカリキュラムの基礎にすえることで、原則やガイドラインにそって、自ら
点検し、成長することができる人材育成につながるでしょう。

アクティビティ・参加型学習を基礎においた価値観の教育は、次のようなエンパ
ワメントのメリットが得られます。

◯Power Within につながる=内発的な規範として、価値観を吟味することができ

◯Power With 人との力につながる = 価値観を共有できる。
◯Power To Do 行動力につながる = 価値観に基づく行動力を育成することがで
きる

一人ひとりが考え、コミュニケーションし、未合意の部分も含めて合意形成をし
ていく。そのような参加型学習の方法論が、内発的な価値観と価値観に基づいた
行動につながるのです。

教育熟議など、教育改革が求められる今日、教師教育のカリキュラムを
概念によって考えてみたいと思います。

「ファシリテーター100の概念」というのは、ERICが2005年頃から提唱し、まとめ
ようとしてきた「指導者育成」カリキュラムで共有したいものです。

今年度は「ファシリテーター育成」のカリキュラム像を、100の概念を検討するこ
とで、明確にしていきたいと思います。

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◆ ファシリテーター100の概念を三題噺で展開する ◆  
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とはいえ、「100の概念」はまだ仮説の段階でもあり、また、生成概念としても、
生きているものであってほしいものなのです。
一方で、100を一つずつ解説していては、プロジェクトは3年がかりになってしま
いそうです。
ということで、とりあえず、3つずつほどをかたまりで検討しつつ、来年度中には
終わらせたいと考えているのです。

気持ちとしては、100よりはずいぶん少なくなってほしいのです。
PLTの5つの概念や、NAAEEの6つのテーマまでは絞り込めないまでも、かなり簡素
になれば、かっこいいですよね。共有もしやすいものになると思います。

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     ◆ 「3」についての三題噺 ◆  
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「3」というのは、点検の視点として覚えやすく、生成概念として発展の余地もあ
るせいか、たくさんあるのです。

◯3つのエコロジー
◯わたし、あなた、みんなのスキル
◯エンパワメント 3つのパワー Power Within, Power With, Power To
◯参加型手法3つの類型
◯参加の文化の3つの側面
◯生き残りの戦略、解放の戦略、自己実現の道
◯3つの省察

どの三題噺にしたものか、選ぶのに迷います。

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◆ 3つのエコロジー 3つのいのちのプロトタイプ◆  
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エコロジー、生態系、「家」という意味を語源とする。
3つのエコロジーというのは、わたしたちが生きている上で大切な3つの家のこと

わたしという存在の入れ物。
社会という入れ物。
自然という入れ物。

それぞれのエコロジーにはシステムや独自のロジックがあるよ、ということ。

わたしという存在の入れ物は、遺伝子を継承している一つの表現型。遺伝子に決
定されつつ、継承しつつ、個的な現れをとっている。GenotypeとHeritypeとPhenotype


他の生き物の表現型は、環境との相互作用で決定されていく。しかし、人間には
、ひとつの表現型を獲得するのに、社会という環境も必要だ。
「表現型  phenotype
個体発生のあいだに遺伝子と環境の共同の産物として、生物体の表にあらわれる
属性。」


社会というエコロジーは、自然環境というエコロジーを作り替えてもいる。
人間の社会環境は、個体の遺伝子と同様に、継承型である。それを「風土」と和
辻哲郎は言った。

継承型と表現型という考え方は、社会環境についてもあてはまる。

わたしたちは遺伝子のように、社会のデザインを継承するが、それをどのように
「わたし」が現れとして生きるかは、一つひとつの表現型として個別である。

自然という入れ物に、「もしも人間がいなければ」という仮説はなりたたない。
人間の発生とその他の生き物の発生は一体であったからだ。

自分の中の継承型を認めつつ、より選択肢の広い表現型として存在している人間
という生き物であることを自覚する。

生き物はすべて遺伝子を継承しつつ、環境との相互作用で表現型として、「いの
ち」を生きる。

人間が違うべきなのは、選択するということ、その選択の影響を知るということ


「ゲーテは「われは驚くために存在する」と語っている。,,,たしかなのはただ、
この先も変化は続くということのみである。変化の原因として人間が関与するこ
とはまちがいない。,,,人間には、影響を予測することができるということだ。」

と、こう考えてくると、わたしたちの存在の基盤である3つの家と3つのいのちの
プロトタイプを自覚するためのアクティビティないしプログラムは、必要だね。

*****参考文献

150-5(722) 延長された表現型
リチャード・ドーキンス、紀伊国屋、1987
The Extended Phenotype, 1982

9-1(34) 生命40億年全史
フォーティ, リチャード
草思社、2003

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◆ 2011年のご案内 ◆  
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◆主催研修

◇2011年1月29-30日 わたし・あなた・みんなのスキル・トレーニング
◇ESD 推進の実践力は、課題の共有と分析から 〜 Teachers and Trainers
Effective Skills Training
〜 TEST 教育力向上     2011 年3 月26-27-28日
           

◆World Game Cafe
World Caf?が流行っていますが、ゲームを通して世界を知ろう! そんな場を提
供してみようと思います。

◯クロマグロの悲劇
◯ワールド・カード
などなど、楽しくてやがて深きゲームかな。
◎ERIC国際理解教育センター:持続可能な未来をめざして!
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by eric-blog | 2011-01-17 15:38 | ▲ファシリテーターの課題
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