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「免許更新制」では教師は育たない 教師教育改革への提言

363-3(1564)「免許更新制」では教師は育たない 教師教育改革への提言
喜多明人、三浦孝啓、岩波書店、2010

「教育改革市民フォーラム」は安倍政権時代に、その教育改革に対抗すべく、声をあげようと生まれた研究・提言団体である。

教師教育と、日本では言うが、英米ではITET initial teachers education and training と教育と訓練とはっきりうたわれている。教職という専門性に、訓練、すなわち「からだでできるようになる」ための何かが必要だという認識が、どの議論にも欠けているように思えてならない。教師教育と表現するだけでは、従来型の大学教育に取り込まれていってしまうだけだ。

もう一つ、欠けていると感じるのは「持続可能な開発のための教育」という視点や、「生涯学習社会」における学校教育を担う担い手であるというような「何のための教育改革か」に対する提言の欠如だ。ここにも、いまの教育NPOなどの提言や動きなどが視野に入っていない教育改革議論のせまさを感じた。

とはいえ、「免許更新制」に対する反論は紹介しておこう。
◯終身免許であったものを、途中更新制へと変更することの法規論
◯導入のプロセスの拙速さ
◯30時間程度の講習の内容と質の問題
◯講習費の自己負担、年休、など、結果として負担の不平等

学級定員と教育定数増という民主党の方針には賛成しつつも、教員養成期間を長くするだけでは、効果がないとも言うのです。

教員養成期間の長期化は、教員志望者を減らすことにもなるのではないかと。75

提言は「教員の自主研修、研究権」なのだから、よくわからない。それだけなのであれば「自己責任論」につながらないのだろうか?

紹介されている福井大学教職員大学の実践例は、おもしろい。「子どもたちの学習と成長を支えるファシリテータ、コーディネータとしての実践力」「学習の協働組織とその改革のマネジメント力」「実践の質を普段に高め発展させていく省察力」「公教育としての学校教育を担う教員としての理念と責任」85-86


ここで問題になるのは高等教育無償化あるいは奨学金制度などなのでしょうが、日本育英会もほとんど利貸し業になりつつある現状では、言うも虚しいことだと、思われたのでしょうか。「市場競争原理」「自己責任論」の根源はここにあると思います。


『過去のカリキュラム・未来のカリキュラム 学習の批判理論に向けて』ヤング、東京都立大学、2002
『よい教師をすべての教室へ』ハモンド、新曜社、2009
『教師というアポリア 反省的実践へ』佐藤学、世織書房、1997
by eric-blog | 2010-09-15 08:55 | ■週5 プロジェクト10
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