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おいしいコーヒーの経済論 「キリマンジャロ」の苦い現実

349-1(1514)おいしいコーヒーの経済論 「キリマンジャロ」の苦い現実
辻村英之、太田出版、2009

『原木のある森』も、コーヒーについてのよい本です。絵本なので授業などにも使いやすいと思います。

この本も、すごい本です。ルカニ村へフィールド調査に入ったそのルポと調査者として受け入れてもらえたことに対する責任、コーヒーの価格決定メカニズム、1990年代のコーヒー危機が村に与えた影響、日本のコーヒー産業、フェアトレードがもたらす生産現場への影響など、コーヒーの生産現場とわたしたちをつないでくれる包括的な本だと言える。

そして、副題に言うように、現実は苦い。なぜか。

コーヒー価格決定メカニズムの三つの格差だという。

一つは、コーヒー価格がニューヨーク先物取り引きによって、主にブラジルを中心とした生産者と国際市場の関係で、基調が決まってしまう。
二つには、国際市場を牛耳る多国籍企業による買いたたきや価格操作に、タンザニアのコーヒー農民はほとんど、なんの決定力も対抗手段ももっていない。
さらに、買いたたきなどによるコーヒー豆の消費国における低価格は、消費国においては「可処分所得」のより有効な活用というQOLの向上につながり、そして、生産国においては農民の困窮、コーヒー生産への労働力投入の減少など、労働意欲の低下と生活の質の低下につながり、より格差を広げるということ。

この三つの格差が、キリマンジャロの味を悪くしているという。

『マナミヤ』という混作農家と商品作物としての米作農家の葛藤を描いたアクティビティがある。アフリカの事例から作られたものだ。まさしく、そこに描かれた現実が、コーヒーにおいても展開している。

フェアトレードも、認証制度だけのものはだめだと著者は指摘する。それはあくまでも企業の論理でしか維持されていない制度だからだ。本当にも求められるフェアトレードとは「生産者たちの不利な状況」を改善するという価値を消費者に認めさせていく、そんなものでなければならないと。

ルカニ村に深くかかわる著者は、民衆交流によって生産者の姿をより深く知ることが、高付加価値への納得にもつながと主張する。

1997年に設立されてルカニ開発協会LUDEAは、消費国との交流推進だけでなく、タンザニア国内においても生じ始めている格差を、都市での収入を得た人びとがどのように村を支援するかについても相互浮上システムを包含した取り組みだ。

http://homepage2.nifty.com/tsunji/shop.html

最近のキリマンジャロがおいしくなくなったと感じていたあなたへ、おいしさを取り戻す行動につながる情報が、ここにあります。

ただ、あなたのコーヒーがおいしくなるだけでいいのか、という疑問は残りつつ。どこかから始めよう。

『原木のある森 コーヒーの始まりの物語』アフリカ理解プロジェクト
エチオピアの伝統的な茶菓子 ダボコロ
小麦粉 225g、砂糖 大さじ1、塩 小さじ1/4、水 100ml, サラダ油 大さじ1.5
よくこねて、のばし、細長く切り、揚げるかから煎りする。

これは、おいしそう!
by eric-blog | 2010-05-24 09:07 | ■週5 プロジェクト10
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