56-2(232) 戦争案内
映画制作現場 アジアからの報告 高岩 仁、映像文化協会、2000 ガンジーの目指した文明がアヒンサー「非暴力・不殺生」の実現であったように、そして、そのことにアジアは仏教など、長く思索を積み重ねてきたがゆえに、そこに生まれたインドの文明をガンジーは高く評価していた。 この本も、「他国の人々も含め、誰をも犠牲にしない、真に平和で豊かな社会の建設を目指して、まずは学習から始めていただくよう」にという願いから書かれている。 日本で非暴力によって平和を建設しようと戦い続けた人として阿波根昌鴻さん(2002年3月21日101才で死亡)が紹介されている。「わしらの平和運動は沖縄から基地をなくしても終わらない。平和憲法を世界に広め、地球上から武器も戦争もなくしてしまう。そして資源や富をすべての人々で平等に分け合い、それぞれの能力に応じて働き、必要なものを必要なだけ、感謝の気持ちで受け取れるような社会」ーになるまで、私たちの平和運動は続けるのです。」 その阿波根さんは、高岩監督の「教えられなかった戦争・沖縄編」の中心的人物です。 マレー半島、フィリビンと続いた三作目。高岩さんたちは、「非暴力な社会」が成立しないのは、資本主義だからだと言う思いを、取材を通して強くします。 阿波根さんも63才で中央労働大学院に学び、そして高岩さんも同年で労働大学で社会科学を学んだ。 その結果、いかに資本主義が「物を人に造らせて金儲けをして経済発展する」ことが、戦争を引き起こしてきたかを知るのです。ガンジーが機械文明が不殺生の文明を曇らせることを理解したように。わたしたちは「人々が拷問されるのは所有関係を維持するためだということだ。(そのことを言わずに)拷問に反対するのは、拷問をしないでもこの所有権が維持できると信じているからだ。」ブレヒト『真実を書く際の5つの困難』より そして、このラインが、わたしたちが次回「平和教育」を考える時のラインともなるだろう。どちらの側にたつ平和教育も、平和教育ではあるのだが。 この本は、明治から太平洋戦争まで、いかにその中で資本家達が力を獲得したかをまず描きだしている。フィリピンの歴史学者レナト・コンスタンティーノは「日本人は、自国の歴史を正しく理解していなのではないか。歴史書では日本の行ったアジアに対する侵略戦争を軍人や政治家が張本人として描かれています。しかし、彼等は金であやつられた人形にしかすぎません。莫大な利益をあげてきたのは、財閥・資本家たちですよ」 そのことを大学生時代に三井物産の満州における企業活動の分析からあきらかにした人にもインタビューしている。 そして天皇がその時世界一の大資本家であり地主であったことを。 そのような資本の力が太平洋戦争における侵略の背景にあったこと。そして、現在はODAがさまざまな経済侵略の背景にあることへと、検証は進む。 そして、最後は、高岩さんたちの取材とその映画の紹介の難しさという日本の外務省の問題、そして、マスコミの問題という壁についての報告で締めくくられている。 「実はこのアジア太平洋戦争に関連して作品を作るときに、戦争は悲惨が残虐なことが起こるということだけに止めておくと、その作品は文部省の推薦や特選がとれて、、学校や図書館でおおいに買ってもらえて、制作費がずくに回収できるし、金儲けができます。しかし、戦争を誰が必要として何のために起こすのか。戦争の起こる根本原因を追及したり、戦争を必要とする社会構造を追及して、現在同じ構造によって第二の侵略が進行してるなどを作品で追及したら、これは絶対に文科省は受け付けなくなってしまって、作品を作っても制作費が回収できない仕組になっています。,,,なかなかこの壁を乗り越えることができなくて、世の中で起こる悲惨なこと、困ったことの、根本原因を追求できないで終わっています。」78 ------------- ガンジーは、「イギリスに同意しているのはインドだ」だからインドが変わらなければ、と言った。わたしたちも、「資本家に同意しているのはわたしたちだ」だからわたしたちが変わらなければならない。と言わなければ、何も始まらないと思う。高岩さんの映画群は、はたして、そのようなわたしたちの姿を写し出したものなのだろうか。 それとも、わたしたちは無力なものとして描かれているのだろうか。
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| 2004-09-21 13:24
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