コレアン・ドライバーはパリで眠らない

コレアン・ドライバーはパリで眠らない

洪 世和、みすず書房、1997

3092冊目


今日、映画を観た。『タクシー運転手』。1980年の光州事件の取材に来た外国人ジャーナリストをソウルから戒厳令が引かれた中を連れて行き、連れ帰った実話。2003年、そのジャーナリストは韓国で賞をもらうために来訪。その時の運転手を探したいと。そして2015年の実録インタビューでも、会いたいと。


韓国の「あの頃」がグイグイと描かれる。軍隊、私服の軍隊が情け容赦なくリンチする、殺す。付け回す。


この本の著者は、1979年の弾圧事件のあおりで、海外滞在を余儀なくされ、パリでタクシー運転手を始めたことはすでに次作『セーヌは左右を分かち、漢江は南北を隔てる』でもすでに紹介した。

https://ericweblog.exblog.jp/238454367/


最初は「賃貸ドライバー」としてタクシーを週借りして、収入を上げていく。月曜日からの一週間、生活のためにギリギリ週7日働き続ける。


いまのセクハラ問題に通じるエピソードが紹介されている。韓国も日本と文化風土が似ているのかもしれない。韓国からのお客様を赤線地帯に連れて行った時に、道にたむろしている女性のお尻を触ったり、キスしようとしたり。女性はそれを許容するはずもなく、連れていってパリの事情もよくわかっている著者は平謝りに謝って、機嫌を取るしかない。著者は、そこでフランスの「職業に貴賎はない」ことの証として、このエピソードを紹介している。「娼婦だから失礼なことをしても許されるだろう」なんてことは通用しないのだ。


そう言うことだよね。ハラスメントなんて、人を馬鹿にしているのだ。福田事務次官のセクハラ暴露のその後の下村元文科大臣、麻生財務大臣、自民党議員らのとんでも発言も、どこまで人を馬鹿にしているのかということだ。


そのことがわからないのが、「力の側」の鈍感さだ。


パリでタクシー運転手をしていて、「嫌な気分」にさせられることが少ないのも、「人として」扱われる、コミュニケーションがそんな風である、と言うことなのだろう。初めてのお客が、「メルシー」と言う言葉とチップ込みの料金を払ってくれた時、うるっときた。絶対忘れない。そして、自分自身もいい対応をしようと三つの心がけを決める。


いい対応は、いい対応によって育てられたのだ。


人権もそうなのだろう。劣化させるのか、それともより良いものに。



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# by eric-blog | 2018-04-25 20:20 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)

シニア左翼とは何か 反安保法制・反原発運動で出現

シニア左翼とは何か 反安保法制・反原発運動で出現

小林哲夫、朝日新書、2016

3091冊目


わろた。タイトルに脱帽。


著者は1960年生まれ。彼が観察している「シニア」とは80代あたりか。

水上勉さんの『桜守』を読んだのだが、そこに「大正生まれは、生真面目に生きて、損しているよなあ」と明治生まれが言う場面がある。大きくなった時には戦争で、国家のためとどんどん徴兵されて、初年兵の最前線を担わされて。わたしの父親は、それでも大正14年生まれだから、ギリギリ志願兵で戦争に行った口だが。


左翼かどうかは別にしても「シニアアクティビズム」というのは存在するように思う。新聞の投稿欄だって、シニアオンパレードだし。東京新聞なんて、わざわざ木曜日に「若者の声」を設けているが、見開きの紙面に投稿欄が拡大しているだけだ。


石井部隊の実名を公表するというような動きをしている西山勝夫さんも、シニアだ。

https://mainichi.jp/articles/20180416/ddm/041/040/109000c

3章は、そのようなシニアの学者たちの動きに焦点を当てている。この人たちは70-80代。名誉教授。

憲法学者たちがこぞって自民党改憲を批判する論陣を国会で張った。

「安全保障関連法案に反対する学者の会」は全国展開。14000人が名を連ねているという。

法律学者

政治学者

歴史学者

社会学者

文学

経済学

理学・工学

無関係な分野などないほどだね。

これまでやってきたことはなんだったのだという思い。

若手が呼びかけ人にならないのは、上の世代に対する「遠慮」とまだ業績もあげていないのに、寄り道するなという叱責があるのではという慮り。

これに対して、50代半ば以上の学者に怖いものはないc!!!

あの三田誠広さんも文学者として反対声明を出しているのか。


海外受けを狙っているのか、村上春樹さんも政治的な発言をよくするし。



先頭を切った益川敏英さんの座右の銘は師匠である坂田昌一さんの「科学者は科学者として学問を愛するより以前に、まず人間として人類を愛さなければならない。」100



もう一つのシニア層が「全共闘世代」団塊の世代だ。


4章は、学生運動ののち、これまでも「左翼」として戦ってきた人々がいま、何をしているか、である。その人たちのノウハウが、シニアの運動に生きているよね。



中年女性の生きがいとして「社会化」「純化」「精神化」という特徴があると指摘した人がいるが、中高年男性も同様なのではないか。左翼化というよりは、社会運動化であり、そして、自らの専門分野を突き進めているという点では、職業人として活躍していた時には十分社会問題化できなかったことに対する補償作用、償いでもあるのではないだろうか。


いずれにせよ、彼らを奮起させたのはSEALDsだ。若者の動きに触発されて、エールを送る。何よりも、昔は「悲壮感」今は「楽しい」のだ。


さて、これから後20年は元気そうなこのシニア世代が切り開く未来はどんなんなんだろう?


「セクハラ」とは無縁な態度姿勢行動を身につけて活動してくれると嬉しいのだけれど。彼らの「学び直し」はあり得るのか?そして、それは中高年女性の課題でもある。


シニアにとって「共産主義」は「実力主義」や「実績主義」に翻弄されがちないまの金融資本主義にひっぺがされるよりは、良いのは事実だろうなあ。

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# by eric-blog | 2018-04-25 10:37 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)

学校でしなやかに生きるということ

学校でしなやかに生きるということ

石川晋、フェミックス、2016

3090冊目


Weに連載していたものをまとめて、加筆したもの。


だんだんと息苦しくなっていく学校。そこで小さくても声を上げ続けることで人間同士が繋がることができるのではないか。


教員同士が学び合える環境も、せばまっているのかもしれない。「正解」を目指す中で。


学びの場というのは、人として成長する場だと、石川さんはいう。「学びは長い時間の中で行われていくものだ」。完成されて仕事に就く人などいない。89


語り続けること

省察すること

歴史にまなぶこと


この三つの力が若手には必要だという。


石川さんの一番最初の担任した中学生。GW明けに学級崩壊。そのころの記憶に色はついていないという。


21のエピソードのキーワードだけ、列挙しておく。石川さんの視点が仄見える。

ちなみに石川さんの担当教科は国語だ。

  • 学校に溢れる善意
  • トラブルは自分たちで解決する
  • 横並び文化
  • さよなら選択教科
  • 育児休暇で考えたこと
  • 職場復帰を前に、懲罰主義、原則よりも当事者の納得を
  • 保育所と
  • 雑談って素敵
  • 教科室がほしい
  • 教師教育問題
  • 成績開示
  • 学びかたを学び合う
  • 自己検閲
  • 教室担任の幸せと不幸せ
  • 宿泊学習
  • 不織布的教室づくり
  • 1年間に3回だけの個人面談
  • 修学旅行
  • 夏やみす
  • いじめアンケート


石川さんは、保育所と中学校の間を行き来する間に、一人一人の生徒が引き受けている生の蓄積を見るのだ。


一人の生徒のために誕生日に学級通信を、一つの詩と一つのエッセイで構成する。

学級にパーティションを持ち込む。board gameやトランプを持ち込む。


宿泊学習で学校外の人の力を借りる。

修学旅行で被災地を訪ねる。


しなやかに、したたかに。


国語が、一人一人の力になっていく言葉につながるといいね。



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# by eric-blog | 2018-04-24 11:59 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)

龍の耳を君に

龍の耳を君に

丸山正樹、東京創元社、2018

3089冊目



デフ・ヴォイスの続編。

https://ericweblog.exblog.jp/237837126/


流石に今回は、当事者からの取材やエピソードなども題材にしたという。しかし、すごい。


三つの事件の短編で構成されることで、ろう者の抱える問題の重層性が垣間見えるのは、瓢箪から駒だよね。これ、いい。


手話通訳者の範囲を超えて、語りかけてしまったことを反省して、しばらくは法廷通訳を断るという判断。


そして、同居人が警察官。子どもはどうなる?


そして、ろう者を支援する「海馬の家」は?


これは続編があるね。


そして、「龍の耳」伝説は、固定されていくに違いない。聾の漢字と龍は全く無関係というのが、漢字の成り立ちの側からの説明のようだが、こちらの物語の方がパワフルだ。そして、中国へと逆輸入されていくに違いない。伝説の始まりだ。


ネットで検索した龍の画像。どうみても、耳はあるのだが。



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# by eric-blog | 2018-04-24 11:00 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)

地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか 太陽活動から読み解く地球の過去・現在・未来

地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか 太陽活動から読み解く地球の過去・現在・未来

宮原ひろ子、化学同人、2014

3088冊目


宇宙気候学。というか、太陽の活動が地球の気候にどのような影響を与えているかについての研究が進んで来ていて、この本はその入門書のようなもの。

どうも、タイトルがわかりにくい。「宇宙で」というのは手段と同時に、場所を表すからね。化学同人という会社が、専門家向けの本を出すことが多いせいなのかと勘ぐってみる。「家庭エネルギー読本」も、素人向けかなあ、なんて思う人なので。わたし。


始まりは1997年。あれ? 遺伝子と似ているなあ。

それまで支配的だった「閉鎖系」としての地球という見方が変わったのは、地球に降り注ぐ放射線の量が地球の天気を支配しているという論文が出されてから。2

すでに1960年代にはその可能性が指摘されていたけれどね。


アポロ計画のすべての資料はこちらから。

http://www.hq.nasa.gov/alsj/


太陽の変動は千年単位であったりするので、過去の気候との関係を知るために年輪が使われる。


1964年に特徴的な炭素14の濃度から年輪の年代を特定する。大気中で行われた核実験によって中性子が大量に放出され大量の炭素14が作られた年。106


サンゴの年輪

湖の底にたい積している地層

日記などの史料

南極の氷


太陽活動の1000年周期が「小氷期」を引き起こした。氷河が前進。124

作物の収穫量が影響されるなど。


地球を知るには、太陽から。太陽を知るには宇宙から。


地球の気候は宇宙的な出来事なんだなあ。


CRISPRよりは実用性がまだまだな感じの、現在解明中の案件でした。


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# by eric-blog | 2018-04-23 13:38 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)

クリスパー 究極の遺伝シーン集技術の発見

クリスパー 究極の遺伝シーン集技術の発見

ジェニファー・ダウドナ、文藝春秋、2017、原著2017

A Crack in Creation

3087冊目


TEDプレゼンテーション

https://www.ted.com/talks/jennifer_doudna_we_can_now_edit_our_dna_but_let_s_do_it_wisely?language=ja


カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』が、現実化している。臓器提供をするのは人間ではなく、ブタかもしれないが、彼らには人間の臓器が埋め込まれている。


CRISPER-Cas9


2012年に発表された遺伝子編集ツール。9


そして、その技術によってすでに、筋肉むきむきのビーグル犬、ネコほどの大きさのペット用ブタ、毛の長いカシミヤヤギなどが開発されている。9


もちろん、人間の遺伝子も自在に編集できるという。


エイズの治療、おおくの疾患の原因となる遺伝子変異の修復など。全ての遺伝子変異が特定できている疾患が治療可能な対象になる。11


元々は細菌がウイルス感染と戦う仕組み。最近の免疫機構の仕組みの中に、ウイルスDNAを切断できる分子機構を発見。13


その影響の広がりを知った彼女、彼らは、2015年には世界中を飛び回って活発な議論に参加するようになった。


「私たちが新しく得たこの力はどのように行使されるべきか」


波は来ている。すでに。


1960年代から始まった遺伝子操作による治療法の開発熱。37

感染症を引き起こすウィルスの動きに焦点を当てたのだ。

その後の30年間、次々と新たしい技術が開発された。そして、クリスパー。究極の技術と言われるものに行き当たった。第1章「クリスパー前史」


Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats


タンパク質Cas9がウイルスDNAを切断するメカニズムの発見。


遺伝子操作されたGMOも、その境界線がこの技術によって曖昧になるだろうと、著者はいう。167


高校生ですら、遺伝子を改変することができる。


著者はこの技術の広範な影響を前に、技術の応用の倫理について考えるための会議を開催するに至った。核兵器の過ちを繰り返さないために。


訳者のあとがきに、「CRISPR配列を初めて見つけた」のは、1987年、日本の石野良純さんであることが付記されている。




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# by eric-blog | 2018-04-23 12:38 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)

モラル・ハラスメント 職場におけるみえない暴力

モラル・ハラスメント 職場におけるみえない暴力

マリー=フランス・イルゴイエンヌ、白水社、2017、原著2014

3086冊目


#Me Too 運動に加えて、男性が男性に指摘する#You Tooも大切だという動きも始まった。

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6279807


「男根社会」を終わらせよう!

https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20180420-00084235/


宇野ゆうか (@YuhkaUno)

2018/04/20 21:33

私、LGBTの人とか、在日コリアンの人とかが、差別に対して怒ってても、「そりゃ怒るよなぁー今まで怒るだけのことをされてきたんだろうから」と思うことが大半で、「私も一括りにされて攻撃されてる!」とか思ったことなかったから、なんでそんな受け止め方になるんだろうと思って。

-

会ったことも話したこともない人なんだから、私に対して怒ってるんじゃないことは明白だよね。別に私の発言引用されて批判されてるわけじゃないし。その人は、今まで自分を差別してきた個人や、自分を差別する社会に怒ってるんでしょ。だから「私が攻撃されてる!」とか思う必要ないわけで。

-

私個人がする加害は、私個人がする加害として考えて、私が属している社会がしている加害は、私はその社会を構成している一員として考える、そういうことなんじゃないかなって。だから、自分がした加害だったら、謝らないといけないけど、逆に言えば、自分がしてない加害で、いちいち謝る必要はない。

-

たまに、女性差別の問題について「同じ男として申し訳なく思います」って言う男性いるんだけど、「いや、あなたが謝る必要ないでしょ。あなたは私に対して、何も悪いことしてないんだから」って思う。あなたは今、社長とか首長とか、そういう、集団を代表して謝る立場じゃないでしょって。

-

ただ、差別のある社会で育った以上、偏見や差別意識は自分の潜在意識の中に植え付けられるから、マジョリティは、そのまま育つと、ごく自然に差別する人間になる。マジョリティの場合、デフォルトが差別者で、差別について学ぶことで、やっと加害しない人になっていく。

-

「男を一括りにするな」「そんな攻撃的な言い方じゃ理解されないよ」とか言う人は、ここで思い違いをしている。まっさらな子供でない限り、偏見は植え付けらてるから、一次加害はしなくても二次加害はしてしまう。無知や偏見から、無自覚に失礼なことを言ってしまう。それが「ふつうのマジョリティ」。

-

「パンを!パンを!」と声を挙げる民衆に対して、「攻撃的ね。冷静じゃないわ」「そんな言い方じゃ理解してもらえないわよ」と言い、「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」と、無知から的外れなアドバイス。まだ差別について学んでいない「ふつうのマジョリティ」は、こんな感じ。

-

マイノリティに対して「僕は味方だよ!」と言ってくるマジョリティの人は、いくつか勘違いをしている。ひとつは、そもそも、味方かどうかを判断するのは自分ではないということ。「いい人」と「自分をいい人だと思ってるだけの人」が違うように、「味方」と「自分を味方だと思ってるだけの人」は違う。

-

ふたつめ。差別に気づく前の自分は「無害な人」で、差別に気づいた時点で「有益な人」になり、差別を学ぶことで「もっと有益な人」になるというイメージを持っている。実際には、気づく前は「有害な人」で、気づいた時点では「ペーペーの新人」、学ぶことで、やっと「無害な人」になれる。

-

本当にマイノリティから「味方だ」と思われている人は、自分からは「味方だ」と言わないものだと思う。味方かどうかを決めるのは自分じゃなくて相手だと思ってるから。自分のことを「有益な人」だとも思ってないと思う。本来ならやって当たり前だし、有益かどうかを決めるのも相手だから。

-

差別を訴えるマイノリティに対して、「そんな攻撃的な言い方じゃ理解されないよ」と言う人や、性犯罪について的外れな防犯アドバイスをする男性って、マンスプレイニングでもあるけど、ダニング・クルーガー効果の「無知な人ほど自信満々」現象でもあると思うんだよな

-

素人が「こうすればいいんじゃない?」って思うことでも、その道の分野の人からすれば「いや、それやっちゃダメなんだよ」っていうのはよくあることで、例えば学問とかでも、新規参入者は、どこかで無根拠な自信の鼻を折られる経験が必要だったりするよね。

-

マジョリティの「新規参入」の難しさというのは、この「自信の鼻を折られる」経験がちゃんとできるかどうか、だと思う。


「ダニエル・クルーガー効果」

https://news.mynavi.jp/article/20150520-kara022/



差別のある社会で、差別を身につけて育っていることを自覚することから始めなければ、何が問題であるのかすら、わからないと思う。


それが、今の麻生財務大臣、福田元事務次官の問題だ。


今回の問題の背景には、セクハラを受けていると訴えているのに、取材を継続させた会社の問題も絡んでくる。テレ朝、最悪。


モラハラの問題は、ERICGAP研究会、そして日本型コンフリクト研究会が明らかにしてきた「個人vs集団的伝統的価値観を体現していると思っている人、人々、組織」との間の対立だ。


「対立」なのだから、喧嘩両成敗、両方の言い分を聞かなければ、というのは差別を助長する。全ての差別は「歴史的」であり、「伝統的」(どのような長さを考えるはそれぞれだとしても)であり、「社会的」なものである。


社会的力の欠如が「マイノリティ」の定義である以上、差別を指摘する、改善を求めることには大変なエネルギーがかかる。パワーは、それを持つ人を増長させ、持たない人を萎縮させる。


この本は、1990年代から問題にされてきた「モラル・ハラスメント」の原因についての研究も紹介している。大きく分ければ、集団的アプローチか個人的アプローチかであるが、「暴力的な行動の背後に、たしかに(政治、経済、文化)制度が存在するが、同時に、この効果的なシステムを可能にしているのは、個別であれ、集団であれ、個人である。」96


要因はもつれあっているが、個々に説明する。97


1. 組織的決定要因

・人を弱い立場にする経営 労働の現場のストレスの増加、量的なだけでなく質的なストレスが、人を弱い立場に置き、モラル・ハラスメントの土壌を用意する。98

  労働者の孤立化、プロジェクトごとの横断的な働き方、企業戦略の意思決定の効率化と集権化、存在意義の喪失感情、労働の細分化、声をあげられない

 労働者相互の競い合い


・企業文化として「上層部がモラル・ハラスメントを推し進めている」暗黙の許容。102


・経営方法による誘発

  ・専制的手法 個人の権限が大きい

  ・放任的手法 組織の秩序が乱れている、職務の定義か不明確、雰囲気が不安定

  ・悪徳的手法 労働者を搾取対象とみなす


・起動装置


2. 現代社会の変動

成果主義

経済的競争と社会的成功

保護制度の崩壊と集団的な制度による規制力の弱体化

目標設定が個人に任されている。

「個人は、ただ一人でその生存の困難に立ち向かうことになるが、最高の価値として賞賛された個人主義は、あらゆる分野で不安定な状態をもたらすことになる」106


3. 個人的要因

・個人が自己愛的になっていく

・標的となる人

・偽りの犠牲者 能力不足、上司に対する仕返しなど。

・ハラスメント実行者 敬意の欠如、無関心が標的となる人にとっては快適になる。

   ハラスメントする理由: ・恐怖   ・弱い立場  ・意思疎通できない  ・自己主張したい    ・妬みや嫉妬  ・指導者に対する受動性

・病的性格: 強迫観念  ・パラノイア  ・退廃的  ・



さて、では、最初に戻って、定義と構成要素。


ILO国際労働機関は1998年にハラスメントを次のように定義した。

「不快な行動を伴いながら、個人や集団に対する恨みのこもった、悪意に満ちたあるいは侮辱的な手段を用いて、谷なの価値を貶めようとする。」17


http://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/---asia/---ro-bangkok/---ilo-tokyo/documents/article/wcms_247004.pdf


不適切な行為が繰り返しあるいは職場ぐるみで行われ、労働者の精神的あるいは肉体的尊厳や健全さを損ない、そのこようを危機に晒したり職場環境を劣化させること。17


構成要素 19

1. 敵対的な行動 妨害、孤立、評判を落とす、信頼を無くさせる。

  ・孤立化とコミュニケーションの拒絶

  ・労働条件の妨害

  ・人格攻撃

  ・脅迫   恐怖を与える

2. 頻度と期間

3. 関係性  当事者間の不平等な力関係によって発生する。25

4. 悪意ある意図の存在  意図しているかいないかではなく、結果で判断。30



「ハラスメントは、強度な社会的ストレスを生み出す暴力である」40


学校、学級におけるいじめのように、ハラスメントの存在は、当事者に対するストレトだけでなく、職場の精神的な環境を悪くすることももっと強調されていいのではないだろうか。



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# by eric-blog | 2018-04-23 12:35 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)

TESTin大阪2018 ご案内

TESTin大阪2018

SDGsという国際的に合意された目標をご存知だろうか? 17の分野において持続可能な開発目標が設定されています。目標4は「質の高い教育をすべての人に、生涯にわたって」提供することを目指したものです。
ESD持続可能な開発のための教育は、目標4に関わるだけでなく、これらの国際的な目標の達成を推進しようとする人材育成に関わる教育です。
今年のTESTはESDファシリテーターとして、特に大学生を対象に
1. 高次の思考スキルとしての「12のものの見方・考え方」によってテーマについて「みんなの頭で考える」ことに習熟する
2. 持続可能な開発という価値観からテーマを設定し、課題解決の行動をとることができる
という二つを目指すためのプログラム、カリキュラム、教材開発を行います。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000270588.pdf

https://ericweblog.exblog.jp/238466395/
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プログラムの流れ

セッション1 共通基盤づくり

  1. 1.話し合いの心がけ 「好かれなくていい」「いい子でなくていい」「子どもらしい子ども」https://ericweblog.exblog.jp/238422900/
  2. 2.「教室の中の世界」 経験学習 ふりかえりと抽象化
  3. 3.「国産はじめて物語」 変化のパターンとキーワード 人は意味を見出す存在 作って壊して、分かって、わからなくなって、
  4. 4.「這い回る経験主義」に終わらせない 分析を「高めるもの」とは?


セッション2 ESDとわたしたち

  1. 1.プログラムのふりかえり 点検の視点「ESDの価値観」「ESDのスキル」
  2. 2.ESDのテーマを洗い出す
  3. 3.プログラム立案 「起承転結のフローチャート」づくり icons
  4. 4.四行文章でプログラム


セッション3 12のものの見方・考え方で「深く」考えるには?

  1. 1.ふりかえり
  2. 2.自分自身を伸ばすための行動計画


■準備物

  • 「すべての当たり前に背いて」 https://ericweblog.exblog.jp/238422900/
  • ESD目標によるプログラムの点検表
  • はじめて物語 https://ericweblog.exblog.jp/238456762/
  • 12のものの見方・考え方ジャーナル 
    • ¬https://ericweblog.exblog.jp/238466395/


おまけの「ヒュッゲ」

接続詞で論理トレーニング


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★参考
3月にERIC国際理解教育センターで開催されたTESTの記録です。
https://ericweblog.exblog.jp/238422336/

日 時 5月3日(水・祝)10:00~17:00
場 所 大阪市西淀川区千舟1-1-1
    「あおぞらビル3階 グリーンルーム」
    http://aozora.or.jp/accesscontact
    JR東西線「御幣島」駅よりすぐ。
講 師 角田尚子さん(ERIC国際理解教育センター)
参加費 10000円
申し込み お名前と連絡先を下記のメールアドレスへお願いします。
      test.in.osaka@gmail.com

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# by eric-blog | 2018-04-20 16:58 | △研修その他案内 | Comments(0)

GPWU180419 第一回記録

GPWU180419

第一回記録

1. 共通基盤づくり ミニレクチャーと傾聴

1-1. この授業のすすめ方 「Active Learning

 出席している学生は17名。アクティブ・ラーニングという言葉は聞いたことがあるけれど、実際には体験したことが、小中高を通じてないという。

・対話的で

・深い

・問題解決的な 学びである。

1-2. なぜ、今のアクティブ・ラーニングが求められるのか?

一つには、OECDという経済団体が行なっているPISA調査というのがある。OECDは「これからの教育はエリートのためでも、専門家の育成でもなく、わたしたちの社会の生き残りのためである」と、持続可能な開発(Sustainable Development)のための教育が重要な鍵を握っていると考えている。PISAOECDの一部門で教育研究をしている。最近では成人の読解能力調査も行うなど、あるべき人材育成を求めて調査を行なっている。

PISAの調査が求めているのは「生きて働く知識」であり、「知識を活かすことができる力」である。

1-3. 専門家育成のための「教科中心カリキュラム」

 いまの学校教育課程は「教科中心カリキュラム」によって構成されており、それは、小学校から高校にかけて、より細分化され、大学という高等教育段階での「専門家」育成の道へと選抜的な機能を果たしている。

 したがって、小学校段階で3割、中学校段階で7割が「授業がわからない」としても、大学に進学する4割の人々にとって有意味な「系統的な学び」ができれば、それでいいというカリキュラムになっている。100%の生徒が理解しなければならない内容として考えられてはいない。

1-4. ノートテイキングと傾聴

2. 教室の中の世界

2-1. 教室の中で見つけることのできる世界とのつながり[ペア作業]

2-2. つながり=社会的有利性の配分は誰に、どのように?

2-3. あなたの責任と貢献は何?

2-4. 「いまの世界は・・・・」


学生たちから出た言葉をツナけ゜ると、こんなイメージだろうか。

「知らないことが多いけれど、目に見えないつながりが互いに深く影響しあっていて、不平等や不正義もありながら、協働的に助け合いながら、発展を続けている」

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3. 授業のすすめ方

3-1. 学生アクティビティ 12のものの見方・考え方を活用する

3-2. 自学し、課題を提出する

3-3. 参加者アンケートのやり方で「授業への期待」を共有

・いまの世界の現状について、幅広い視野で捉える

・課題は何かを知る

・課題解決のためのスキル


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# by eric-blog | 2018-04-20 16:07 | □研修プログラム | Comments(0)

高齢ドライバー

高齢ドライバー

所正文、ほか、文藝春秋、2018

3085冊目


すでに2007年に本が出ている。

https://ericweblog.exblog.jp/238442689/


日本社会は車歴が短い。そのため、「車優先社会」が定着してしまっている。それは欧州の都市と比較すると見えてくると著者は指摘する。62


運転免許がなければ日常生活にも支障を生じる地域というのも課題だ。


議論を受けて、2017年に道路交通法が改定された。

認知機能検査が義務付けられた。76

2015年度に5万人以上が第一分類(認知症の恐れあり)に分類されたが、その中で、免許停止になったのは565人。わずか1%程度だ。


2018年には75歳以上ドライバーは532万人、2025年には800万人を超える団塊の世代が75歳以上となり、75歳以上人口は2200万人になる。78


高齢者ドライバー激増時代が来る。2025年。


・認知症専門医が不足する。

・講習現場がない。

・記憶検査だけでは引っかからない認知症が約5%あるが、絶対数としては大きい。

などの課題がある。そのために自主返納を促進することが望ましいのだが、運転免許無しで暮らせる地域づくりが自治体の課題となる。


認知症についても、より詳しくなっている。記憶障害以外に

・判断力、見当識、理解力、注意機能、失行、失認、などの障害がある。141


これからも増える高齢者ドライバー。しかも、女性のドライバーも、増えて来る。車優先社会を変えて、Give Wayのまちづくり、物理的に暴走できないようにするバンプの設置、そして自動運転車など、制度的、技術的対応が求められる。


団塊の世代、すごいね。



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# by eric-blog | 2018-04-20 14:12 | □週5プロジェクト2018 | Comments(0)