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塩壺の匙

194-3(935)塩壺の匙
車谷長吉、新潮社、1992 (それぞれの初出は1972年頃からのもの)

"手"を巡る四百字で、もっとも目立った筆跡の一つが車谷さんのものだった。相田みつをさんの書のような書体での原稿に驚愕した。

読み始めたら、止まらない。私小説であり、フィクションめいていて、実話なのだが、小説である以上、脚色はある。そこが「読ませる」のだろうが、はらはらと、主人公の行く先、人生が気に係り、その心の揺れに引き込まれ、読んでしまった。

若い頃、私小説、なかんずく、日本の小説すべてが嫌いだった。読めなかった。影響を受けそうで、自分の中に呼び覚まされるかもしれないものが嫌いで、自分は違うという意識を保つために、遠ざかった。

単なる「異質なもの」に対する興味になってしまったのか。共感はしても影響はされなくなった心根のゆえなのか。読めるようになったのか、それとも車谷さんだけか。

著者の書く主人公は、戦後没落した地主の家に育ち、親たちの鬱屈がその人生にも大きな影を落とした少年である。少年は、10歳をすぎ、親や義理の親、親戚たちの期待や圧力、地域の人々の目にさらされて、「狂気」の咆哮をあげるようになる。著者に自分を見つめる目が生まれたのは、その忘我の時を体験したがゆえなのではないかと思うのだが。狂気は、村で始めて大学に進学し、東京へと、村落-地方都市共同体の関係から解き放たれたとき、外に向かって表現される必然はなくなり、内側に向かう。

ある日、青年は東京での勤めをやめ、故郷に戻る。自分の中のたまっていく狂気が熟するのを待ちながら。

狂気とは、不条理の膿のようなものなのだな。

小説のあとがきとはめずらしいものだが、中短編のコンピレーションなのだからか、あとがきがある。「書くことが私にはただ一つの救いであった」「凡そ生前の遺稿として書いた」「書くことはまた一つの狂気である」

書くことによって、新しい知己を得、自分らしい人生をまっとうしつつ、車谷さんは、私小説をさげすむ人々に対し「ざまァ見やがれ」と、この二十数年、思ってきたのだそうだ。

とまれ、私小説を読めるようになった自分は、つまらない。
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by eric-blog | 2007-08-31 10:42 | ■週5プロジェクト07 | Comments(0)

朝から豪華

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今夏最後の研修四連チャンも今日が最後。宿泊場所の朝ご飯が豪華!(^o^)/
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by eric-blog | 2007-08-30 08:11 | □研修プログラム | Comments(0)

熊本城野外映画祭

出口のない海

第二次世界大戦中、日本帝国海軍が作り出した「人間魚雷回天」。そこに乗り込む青年の物語だ。

市川海老蔵がいい。

「並木さんは、なぜ回天に乗るのですか」と問われて、
「回天のような戦い方を、日本がやったということを伝え続けるために、僕は死ぬのさ」
と、応える。

人にも、社会にも、狂気の時はあり、それは人間をゆさぶる。それを思うとき、心を揺さぶり続ける。
太平洋戦争は、日本という社会にとって、尽くせぬ表現の元に、これからもなり続けるのだなと、この映画を見て感じた。すでに、戦争の体験の伝承ではなく、忠臣蔵のような、時代劇のような存在になりつつあるのだなと、空襲に備えてのガラス窓に貼られた紙切などのセットを見て、感じた。

熊本城築城400年記念イベントで、竹之丸公園で無料で開催されているシネマウィークの一日だったのだが、なんと日替わり。

初日には「武士の一分」など、なかなかのラインアップ。

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by eric-blog | 2007-08-28 19:12 | □研修プログラム | Comments(0)

"手"をめぐる四百字 文字は人なり、手は人生なり

194-2(934)"手"をめぐる四百字 文字は人なり、手は人生なり
季刊「銀花」編集部編、文化出版局、2007

表題を見て、まったくわからず。手にとって見たら、あああ、そうか。4百字というのは原稿用紙一枚の文字量であったことに、改めて気づく。

コクヨのおなじみから、特注のもの、出版社から提供されるもの、用紙もまちまちまなのに、規格としての四百字。

いま、日経プラスで、日常の規格や数字のなぜを連載していて、なぜビールの王冠のぎざぎざは17なの、なんてものも扱っているが、そこで取り上げて欲しい規格のひとつだな。
自筆原稿。手にまつわるテーマ。

その縛りだけで季刊誌の連載コーナー。その中から五十人が選ばれている。有名人だから、わたしが知っている名前も多いが、まったく不得手なジャンルの人もいる。

「五十万個のとってつけ」多々納弘光さんのは意外な内容だった。陶工としてコーヒーカップのとってつけを人のものも含めて、50万個はしてきただろうという話。「ふっと、この指が、この手が工夫し、考えてくれているように思う」という結び。

すごいことである。

文字としてどうしても目が離せなかったのが車谷長吉さん。久々に、私小説なるものを読みました。手の感触にひかれて。

そのハナシはまたこんど。
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by eric-blog | 2007-08-28 06:33 | ■週5プロジェクト07 | Comments(0)

訪問者が6万人を超えました。

かくたです。

昨日、訪問者が6万人を越えました。ジーーーン、感動。夏休みをいただいていたので、ずいぶん一日の訪問が50人程度と減っていたようだったのですが。いつの間にやら。です。

時々のレコードキーピングはしておいた方がふりかえりのためにいいので、みなさまとも共有です。
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by eric-blog | 2007-08-28 06:19 | ◇ブログ&プロフィール | Comments(0)

光とともに・・・  自閉症児を抱えて

194-1(933)光とともに・・・  自閉症児を抱えて
戸部けいこ、秋田書店、2002

よくある実録ものではなく、著者による取材によって再構成されたフィクション。その分物語として読みやすく、わかりやすくなっている。自閉症という治ることのない障害をもった子ども、家族、地域に住む人とどのようにつきあっていくかは、どれだけ「こちら」が自閉症という障害を理解できるかにかかっているのだなということがよくわかる。光のお母さんが何度もつぶやくことば。「光がどんな世界に住んでいるのか、お母さん知りたいよ。」

脳の障害なのか、わたしたちの見ている世界とはまったく違う世界を体感している彼らは、耳からのことばよりは目からの情報、変化よりは規則性にひかれる傾向があり、人間関係が苦手。と、光のことをどんどん「発見」していく周囲の人々は、とても前向き。

このコミックのよいところは、本ではなかなかわからない写真を使うスケジュールや人の確認など、周りの人々のともに生きるための工夫がふんだんに漫画の中に出てくること。わかりやすい。そして、「自閉症の子どもにとって安全なこと、わかりやすいことは、他の子どもにとっても安全でわかりやすい工夫につながる」という保育園や小学校の先生方の姿勢がとても引かれる。

光のために生活を円滑に進めるためのさまざまな工夫をする光パパのモデルとなっている人のホームページはお勧め。公務員として働いている明石さんのお話もグッド。

しかし、インターネットを検索すると、やはり家族や地域を離れ、療養院生活をしている人がいるのも現実。それぞれなのだと思いながらも、自閉症の人たちの間にもさまざまな境遇の違いがある。それをもまた、比べてしまって自分を責める家族もあるのだろうなと思うと、どこまでも哀しい。

とはいえ、この漫画、明るく、元気に、「あ、こんな人もいるんだ」と、人間の存在がいとおしくなる本です。お勧め!
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by eric-blog | 2007-08-27 09:28 | ■週5プロジェクト07 | Comments(0)

板橋のジーンバンク

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学校サポートプロジェクトで取り組んでいる板橋の小学校の地域インタビューに出かけました。
常楽院というお寺で、蓮、葡萄、などなどの多様性に触れました。写真はむくろじゅ 羽子板の羽根の材料であり、洗剤にも使われるそうです。
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by eric-blog | 2007-08-24 17:36 | □研修プログラム | Comments(0)

眠れぬ夜の・・・

真夏の夜に

くもの巣の小道 パルチザンあるいは落伍者をめぐる寓話
イタロ・カルヴィーノ、福武文庫、1994 原著1947

麻薬帝国 コロンビアの虐殺 女マフィアが語る「麻薬戦争」戦慄の内幕
ケイ・ウルフ、シビル・テイラー、徳間書店、1991
The Last Run, 1991

雨柳堂夢咄 1-10
波津彬子、朝日ソノラマ、1995-2002

秋霖の忌、鏡花夢幻

ケイ・ウルフの実話は、それこそ徹夜で読んでしまいました。南米とアメリカは、それでも地続きなのですねぇ。
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by eric-blog | 2007-08-07 09:56 | Comments(0)

マリア・カラスあれこれ

マリア・カラスあれこれ

・ドニゼッティ歌劇「ランメルムーアのルチア」
 セラフィン指揮、フィルハーモニー管弦楽団および合唱団
[あらすじ]
ランメルムーア城の当主エンリーコは、旧城主エドガルドをおそれ、自分の足場固めのために妹ルチアを政略結婚させようとしている。しかし、ルチアはその当のエドガルドと恋仲。二人で逃げ出そうと約束をしている。
エンリーコは、エドガルドが死んだとウソを巡らして、ルチアに結婚承諾書に署名させる。そこに戻ってきたエドガルド。ルチアの裏切りを知り、ののしり、去る。
狂乱したルチアは、結婚式の当日、新郎を刺し殺し、自らも狂死。
城から立ち去りがたくうろついていたエドガルドの前を、城からの葬列が過ぎる。その新郎の亡骸に続いて、城からの訃報が聞こえる。自害するエドガルド。

・プッチーニ歌劇「トスカ」
 プレートル指揮、パリ音楽院管弦楽団、パリ国立歌劇場合唱団
[あらすじ]
黒い髪黒い眼の美女トスカは、画家カヴァラドッシと恋仲。カヴァラドッシが壁画作業をしている教会に、国事犯が逃げ込んでくる。それは旧知のアンジェロッティ。妹のアッタヴァンティの手引きで、礼拝堂にひそみ、女物に身をつつみ、夜陰に乗じで逃げようとしている。前日に礼拝堂の鍵と女物を隠しに来たアンジェロッティを見かけたカヴァラドッシは、それとは知らず彼女の美しさに惹かれ、いましもかき上げつつある美女は金髪碧眼の彼女の美しさそのもの。
カヴァラドッシがアンジェロッティを匿おうとしているところへトスカが来る。作業場の扉ごしに彼女が待つ。なぜすぐに扉を開けないのかと、なじるところへ、壁画の美女がトスカの目に映る。そこへ国事犯を追ってきた隊長が、トスカの嫉妬心を煽る。
トスカは、画家の家へと、急ぐ。追っ手を導いているとも知らず。
国事犯は自殺し、カヴァラドッシも捉えられ、銃殺刑に。隊長に命乞いをするトスカ。からだを求められ、カヴァラドッシの助命と二人のための通行証をもらえるならと、同意する。通行証を書き上げた隊長を殺すトスカ。偽の刑執行が行われると信じ、待つが、カヴァラドッシを撃ったのは実弾。悲嘆にくれ、城壁から身を躍らせる。

・ジョルダーノ歌劇「アンドレア・シェニエ」
 ヴォットー指揮、ミラノ・スカラ座管弦楽団および合唱団
[あらすじ]
伯爵の娘マッダレーナは、革命の最中、身を脅かされている。詩人のシェニエを頼ってくる。自らも友人の協力でパリを離れようとしていたシェニエだが、そのことによって時期を逸する。
裏切り者として告発されるシェニエ。マッダレーナは、命乞いがかなわぬならばと、女死刑囚と入れ替わり、二人そろって死刑台へと向かう。
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by eric-blog | 2007-08-06 16:41 | ■週5プロジェクト07 | Comments(0)

夏 休み 2007

夏 休み 2007

ヤマーダ電気の池袋店オープンの日に、チラシに赤丸印をつけて長蛇の列の最後尾に並んだ。三ブロックは優に並んでいたのだ。本当に。10時10分のことだ。

お目当てはソニーの「ネットワークウォークマン」3980円。4GBならば、USBメモリーとしてもありえんだろうが、なんていうのが激安だという判断の根拠。

そこに、すでに「売り切れ」のご案内板が・・・・・

意地でも並んでやるう。キリコさんのように、「ネタづくり」のため?

1036入店。

地下のオーディオ売り場に。いま売れ筋の1万円以上へと導こうとする店員を尻目に、もうすでにどこにも売っていないだろうと思われる、防滴スポーツタイプのものを5980円でゲット。1GB, 240曲。充分だ!

で、はまりました。まずは、小川町の我が家においてあるCDからお気に入りをチョイス。入れてみた。なんて簡単、なんて便利。でも気づいたことは、それらのお気に入りの歌は、つねにわたしの中にあったということでした。思い出しさえすれば。思い出したときに、思い出すべきときに。

新井英一の「清河への道」なんてのも入れて、ポール・ウィンターのEarthbeatsも入れて。アルハンブラ宮殿も入れて。

聞きまくってみて、わかったことは、楽器以外は女性の声が心地よい、ということでした。永遠のカラスなんて特にいい。映画も良かったけれど、女優さんも美しかったけれど、実際のカラスの表情やあの口元、発声の方法などを思い浮かべながら聞いていると、背筋が伸びる。頭が突き抜ける。

さらに考えてみると、「千の風に乗って」といろいろな人がカバーしているもので流行っているのがなぜ男性歌手なのかな、わたしは、ちっとも持ち運んでまで聞きたくないが。あ、そうか、あれが武装解除を呼びかける歌だからだ。男制の歌なんだよね。訳者の新井満さんなんて、般若心経だもんね。オスの武装解除が、人間を社会的な生き物にすることに貢献した、と書いたのはなだいなださんだったか。そろそろ経済戦争からも降りないと、大変なことになっちゃうよ。経済の残酷さに気づこうよ。

ということで、しばらくは女性歌手とオペラにはまってみようかと思います。

あっという間に一学期というか、前期が終わりました。

ERICの夏休みは13-16日だそうです。

ここんとこ、しばらく、ヘビーな図書ばかり紹介していて、実は消化不良気味。次は何を紹介しようか、考えつつ、しばらくはPLTの翻訳に集中しようと思います。

みなさまも、よい夏休みをお過ごしくださいね。
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by eric-blog | 2007-08-02 10:51 | ■週5プロジェクト07 | Comments(0)