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ノアの洪水

かくたです。

いよいよ2004年最後の週5プロジェクトです。みなさま、よいお年を!

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69-2(314) ノアの洪水
Noah's Flood
ウィリアム・ライアン、ピットマン、ウォルター 集英社、2003

旧約聖書に書かれた大洪水は本当にあったのか。メソポタミアから黒海近辺まで、広
く語られている大洪水の物語り。あるいは天地創造の始まり。何らかの事実が、物語
りの根拠となっているとしたら、それはどのような事実だったのか。その探究の物語
りであるこの本は、19世紀のイラク遺跡探検の旅で見つかった楔形文字の粘土板から
始まる。
著者であるライアンが、駆け出しの研究者として参加した1961年の黒海とマルマラ海
を結ぶボスポラス海峡の音響調査による探査は物語りの第二部だ。1970年には地中海
の海底堆積層の掘削調査。そして1993年の黒海での海底ソナー、海底堆積層の掘削調
査を中核に、チェコスロバキアでの地層からの発見、年代同定法の進化の物語りがか
らめられ、洪水の輪郭が明らかにされていく。紀元前5600年に、黒海に海水がなだれ
込んだ変化を、すでに定住し、農耕・牧畜していた人々が記憶したのではないかとい
う。
そして第三部はその人たちは誰だったか、ということについての、今度は考古学、遺
伝子人類学、文化人類学、口承伝統研究などの研究結果との照合である。

物理的には、氷河期と暖期はくりかえしているのだが、氷河期の訪れは段階をおって
ゆっくりと進行し、暖期の変化は早い。氷河期に北極を中心に氷河がはり出し、アル
プス造山帯近辺のくぼみも砂漠化し、あるいは海から断絶された湖になった。暖期の
訪れとともに再び海とつながるようになるが、そのときにジブラルタルやボスポラス
などの狭い峡谷から押し寄せ続ける海の水が、洪水として記憶されているのではない
か、ということらしい。海底堆積層調査については川上さんの『縞々学』にも紹介さ
れていたが、この本の監修も実は川上さんである。
おもしろいと思ったのは、堆積層をボーリングして、地層ごとに含まれる生物、鉱物、
化石などの含有物と層の重なり具合などから、何かを読み取ることをプロファイラ-
と表現していることだ。膨大な物証から、その時の環境のそして生物の、そして人類
の動きを活写していこうとする試みはプロファイリングに通じるものがある。

と、そのような地球科学だけなのかと思って読んだのに、人間遺伝学などに加え、口
承伝統からも洪水の物語りに迫っているところがこの本のおもしろいところだろう。
縞々学的に言えば、時間スケールの違う手法がうまく橋渡しされているということか。

254
文字にされたことのなか死んだ言語はその末裔との比較と、音韻学的変化を司る
法則に従った過去への遡行によってしか再構成することはできない。
...音は意味よりも数世紀以上安定している
275
一つの神話がくり返される朗唱を無傷で生き延びるためには、その神話は強力な物語
を必要とする。

1940年生まれの著者のさらなる神話の背景のプロファイリングに期待したい。
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角田 尚子
(特活)ERIC国際理解教育センター
eric1@try-net.or.jp
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by eric-blog | 2004-12-31 14:48 | ■週5プロジェクト04 | Comments(0)

縞々学-リズムから地球史に迫る

かくたです。
お休み、と言っていましたが、おもしろい本だったので、番外的に紹介します。

ついでに「週5プロジェクト」のパフォーマンスについても、ふりかえりを行いまし
た。2004年12月末で28週、146册、3月末までに目標とした40週160册というには、週
数はぎりぎり、冊数は軽々ですね。欲張って200册に目標を修正したりして。スゴ。

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69-1(313) 縞々学-リズムから地球史に迫る
川上紳一、東京大学出版会、1995

西武文理大学の名誉教授であり、わたしが採用された時の学部長である増川さんが書
かれた書評で紹介されていた本の内の一冊。もう一冊は『ノアの洪水』こちらはまだ
購入していないのですが、やっぱり読みたいと思います。

1980年代に地球科学が学際的な自然科学として発展したその経緯に触れながら、若い
世代がどんどん新たな学問を推進していった様子が現れている本です。複雑系などの
入門書などよりはるかにおもしろい。地球のアラユルリズム計画とか横縞ゼミとか、
ユーモアたっぷりに楽しみながら学問する姿勢がいいんだな。著者が同世代であるだ
けに、未来型に希望を持ちますね。

地球システムが持つ大きな特徴=非線形性。14
原因と結果に比例関係が成立している系は、線形システム。...全体の変動は個々の
足し算で決まる。しかし、自然界にある複雑な系では、比例関係が成立していないこ
との方が多く、線形でない。...周期的な変化、カオスと呼ばれる複雑な変化、など
まだまだ未知。
大気、海洋、固体地球の運動に、非線形のフィードバック機構を備えた相互作用が存
在するとすれば、一見独立に見えるリズミカルな変動間にも、なんらかの関連性が存
在することが予想される。14-15
非線形のやっかいな問題にバタフライ効果と呼ばれているものがある。初期値のほん
のわずかな違いが時間とともにだんだんと増幅され、しばらくするとまったく似ても
似つかない状態を生じさせる。70
気候変動に係わるサブシステムの変動の時間スケールが違っていることが、原因解明
を難しくしている。71

ポイントは、地球というシステムを構成するサブシステムそれぞれの変動における時
間スケールと空間スケールのずれと重なりにあるようです。そういう意味でとてもわ
かりやすいのが60ページの図11「地球上で発生するさまざまな現象の時間スケールと
空間スケールの関係」です。

木や珪化木の年輪と気候変動
湖底堆積物、海底堆積層
エルニーニョと南方振動
氷河
鉄鉱床の縞
サンゴ

もちろん、わたしたち人間の骨などにも成長の跡が刻まれていたりと、縞はリズムの
変動によって生じるものであるので、そのリズムの変動を読み解くことで、変動の存
在がわかり、変動の周期性や相互関連性からメカニズムが解明されるというわけだ。
あなたも、身近な縞縞学、してみませんか。

全地球史解読計画によって、地球の進化と生物圏の進化が相互に密接に関わってきた
ことがわかってきた。211-212

地球史七大イベント
1. 46億年前、地球が形成された
2. 40億年前、最古の岩石が保存されるようになる
3. 27億年前、火成活動が活発化し、大きな大陸ができる
4. 19億年前、著しい火成活動があり、巨大な大陸がはじめて形成された
5. 6億年前、超大陸が分裂して新しい海洋が形成され、多細胞生物が出現した
6. 2.5億年前、超大陸が形成され、超酸素欠乏イベントによって生物界で大絶滅が
あった
7. 現在、人類が科学を始め、地球・宇宙の歴史とその摂理を探り始めた

特に3から7が生物進化の大イベントと時期が一致している。
中村運『生物進化7つのなぞ』によると
1.生命の誕生
2.代謝の始まり
3.光合成と化学合成の始まり
4.原核生物が真核化した
5.多細胞生物の出現
6.陸上への進出
7.人類の誕生

「地球と生命の共進化」というのがすばらしいですね
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by eric-blog | 2004-12-31 09:53 | ■週5プロジェクト04 | Comments(0)

養護学校での人権教育

2004年12月21日 記録

わたしも不勉強でしたが、聖坂養護学校は昭和17年に伊藤つたえさんというキリス
ト者の方が水上生活者の子どもたちの教育保障のために建設された学校で、昭和40年
にその要がなくなると同時に養護学校として再出発をした学校だそうです。他の学校
との併設なのかと法人名を見て考えていたのですが、養護学校単体で、それはさぞか
し珍しいものだろうと思ってお尋ねしたら、全国で14校しかないのだそうです。全校
生96名、小学部、中学部、高学部、専攻科(高校終了後20才まで)の3学部4科で構成
されているそうです。
事務、営繕、運転手の方々も含めて52名の全職員が参加されました。
ただ、すべての方が教員ではないということで、研修内容が「人権教育指導のあり方」
に片寄りすぎないように、より一般的な課題として共有できるように配慮しました。
少し詰め込み過ぎた感はありましたが、今後、さらに養護学校教職員に対する研修プ
ログラムは検討を進めたいと思っています。

セッション1 気づきのアクティビティによる共通基盤づくり
1. 教室の中の世界探検-つながりと責任・貢献
2. 傾聴
3. 話し合いの心がけ
4. ペアを変える
5. 宇宙人に人間を説明する

セッション2 「参加の文化」に向けた自分磨き
1. しがまっこ溶けた-天の職-終わりの日の喜び-交流の心がけ
2. 共感的傾聴
3. バンクス「多文化教育」-肯定的な交流、歴史的な背景の多文化的理解、学力保

4. 後だし負けじゃんけんでペア変え
5. 「参加の文化」のために頭で分かって、からだで習熟すればいいこと
・肯定的風土
・対立の扱い方-阻むものとしての日本社会の○△□
・社会的提言-アドボカシー・ビンゴ

今回は3時間でしたが、2-3時間であれば、二人一組が安心して深く話し合えるのだな
と思いました。

養護学校における教職員のための現職教育としては以下のポイントが含まれなければ
ならないと思っています。
4つのポイント
・障害のある子供のための「人権としての教育」についての共通理解
・社会的、物理的にチャレンジのある人々に教育的立場で接する人の接し方について
・子どもたちを囲む社会の差別をなくし人権尊重社会の実現のために
・労働者としての教員の人権について
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by eric-blog | 2004-12-22 13:55 | □研修プログラム | Comments(0)

徳島はノリノリだ

かくたです。

わたしの両親の出身が徳島のせいか、徳島に行くたびに、周囲の人々の会話などが
「ずかずか」来る感じがするのですが、徳島の人も、徳島は変わってる、ワークショッ
プがいらないんじゃないかと思っていることが判明しました。人間科学部の卒業生で、
ワークショップ的な手法の自然教育などにも経験がある三好さんという方と、一日目
終了後にお茶しながら話したことなんですけどね。あまり、根拠がないか。

いずれにせよ、嵐のような2日間でした。どのアクティビティも延びる延びる。分析
の構造を示したら、後はそれぞれグループで好きにしてくれ、状態でした。
協働ネットワークNIMSというNPOの立ち上げ総会も行われるなど、記念すべき日に居
合わせたようでもありました。今年のエキスパート養成講座からはどのようなアイデ
アが実現していくのでしょうか。

2004年12月18日19日 記録

セッション1 共通基盤つくり
10.00-12.00
1. 「エキスパート」についての連想図
2. 参加者アンケート
・エキスパートに求められる資質
・あなたがつけたい力
・男女共同参画の課題
・これまで学んだことでいちばん良かったこと
3. 分析と所見
4. 傾聴
5. 話し合いのルールづくり
6. 教室の中の世界と配分の正義[ミニレクチャー]

セッション2 気づきのアクティビティ
13.00-14.50
1. 自分を見つめる4つの窓[サークルで]
2. 傾聴-正確に聞く傾聴
3. 「男のくせに、女のくせに」三段論法
4. 「遅れて来た定着民」

セッション3 ふりかえり
15.00-16.00
1. 「遅れて来た定着民」についての「事実、感情、価値観」のふりかえり
*300年後をやらなかった
*ふりかえりに時間がすごーーーくかかった
*わたしが終了時間を17.00だと思っていた!!!

セッション4 課題の共有
10.00-12.00
1. 昨日のふりかえり[ミニレクチャー]
2. ふりかえりのeQi
*特にアイデアのところでわたしの方から「半構造化」という概念の紹介
*参加者を信頼する、参加の余地、参加者とともに解決する
3. QOLからBQOLへ[ミニレクチャー]
4. 5つの課題の「半構造的提示」
・日本社会の重層性
・世代ごとの育ち方の特徴・課題・手立て
・公式的・非公式的な学習/公衆空間・社会空間・個人空間・密接空間
・ジェンダー意識の形成のレーダーチャート
・子どもが触れる価値観の多様性
5. サークル・タイムで追加的に共有-一人に2色3枚ずつのポストイットで

セッション5 共有による課題と手立ての確認
13.00-14.40
1. サークル・タイムで蓄積的追加的に共有-一人に2色3枚ずつのポストイットで

セッション6 行動計画
14.50-16.00
1. 行動計画「一人でできること・仲間とできること・社会で取り組むべきこと」
2. 二人一組で「鍵となる質問」によって傾聴
3. 「実現したいこと」でオープンマーケット方式
4. 「ビジョンのためのホップ・ステップ・ジャンプ行動計画」に向けてネクスト・
ステップを決める
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by eric-blog | 2004-12-22 13:54 | □研修プログラム | Comments(1)

Merry Christmas

かくたです。

去年は学生の名前をクリスマス・ツリー風に打ち込んだカードを配りました。
今年は、ポジティブな表現を使ってカードを創りました。

12月25日にはぜひ王さんの琵琶を楽しむオープンハウスにおこしください。
参加できない方には、このメールで失礼します。「よいお年をお迎えください。」

1月10日まで、週5プロジェクトはお休みいたします。

Merry Christmas and a Happy New Year!!

May Good Communication With Heartful Messages
Helps You to Open up a Good New Year!

Great!
Brilliant!
Excellent!
Marvelous!
Remarkable!
Unbelievable!
Fascinating!
Fantastic!
Incredible!
It's cool!
Wonderful!
Well done!
Splendid!
It's superb!
Isn't that something!
I am so impressed!
You are impressive!
This is totally incredible!
How did you do that?
You should be proud of yourself!
Thank you. → You are welcome. It's my pleasure. Don't mention it!
I am sorry. → Not at all. Never mind. It's nothing.
I feel awkward. → You can do it! Just do your best.
I am nervous. → Take it easy. You can do it!
I made a mistake. → It is not your fault. It's one of those days. Don't
mind.
Something went wrong. → Don't be so serious. Things happen.
I am proud of you.
Are you OK?
You look worried.
Can I help you?
Is there anything I can do to help you?
If there is anything I can do for you,
don't hesitate to ask.
You are doing fine.
I missed you.
You look exhausted.
Let me treat you with a nice cup of tea.
Let me invite you to our Christmas.
Please join us for the celebration.
Let's share the joy of Christmas.


These are the words which encouraged, relieved and refreshed me along the
course of my life. I thank all those encounters which enriches my life,
with such a warmness, even if I am not a Christian.
Merry Christmas and a Happy New Year
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角田 尚子
(特活)ERIC国際理解教育センター
eric1@try-net.or.jp
http://ericweblog.exblog.jp/
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by eric-blog | 2004-12-22 13:51 | Comments(0)

言葉遊び

68-4(312) 言葉遊び
ピエール・ギロー、白水社、1979

図書館は便利ですよね。誤訳天国で紹介された言葉遊びの本はなかったですが、かわりにこれはフランス語の言葉遊びの本。フランスでは冗談が受けなかったという川田さんはこの本をどう読むのだろうかと思うようなもの。

著者は言葉遊びを分類すると100種類以上のものが上げられるとしながらも、主要なものについての整理を試みる。8-9
音声的な言葉遊びとしては
・語呂合わせ
・掛け言葉
・地口
・音韻
・アナグラム
・換字地口
・字なぞ
・回文
語彙的な言葉遊びとしては
・言い換え
・地口
・なぞなぞ
絵文字遊びとして
・判じ絵
・カリグラム
などなどあたりが素人さんの言葉でも紹介できる限界かなと。それを説明する「連鎖」「代入」「挿入」という概念はもうお手上げ。

そして例えば「地口」はこのように説明される。「多かれ少なかれ濫用された、音声の類似による両義語」12
「囚人が本をめくっている。看守が尋ねた。「何を探しているのかね」「あるくだりpassageでさ」」などはなるほど、日本語の行(くだり)も道に関係するなと共感する。

結論としては、これらの言葉遊びの名称の語源論的な分析が、その言葉遊びが何を指し示していたかを明らかにするという。そこには両義性、逆転、曲解、おしゃべり、ふざけあい、意味のない言葉、音を楽しむというような人間の行為ないし認識があらわれている。170-174

フランス語を知らないものとしてはちょっと読みにくいものでした。しかし、黒川さんや養老さんなど、最近「日本語を話す脳の優越」を言う人が多かったのが、少し中和される思いがいたしました。ハイ。
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by eric-blog | 2004-12-17 08:41 | ■週5プロジェクト04 | Comments(0)

私のなかのアフリカ

68-3(311) 私のなかのアフリカ
北沢洋子、教養文庫、1988

倒産した社会思想社の文庫で、ジュンク堂の自由価格本コーナーで購入したものの1つ。1960年代から80年代にかけてのアフリカの動きをビビッドに描き出す名著。

アフリカの独立を巡っての鎮魂歌かと思うような暗殺の数々。果たしてレクイエムとはなんのために捧げられ、それによってどのような未来への道筋、願いにつながるものなのだろうか。ひとつの希望の結実として南アフリカの解放が、この本の出版の後あったのだけれど。

うーーーん、簡単には言い切れない感情、言葉が沸き起こる。
Blacknessによる連帯が、鍵。

大学で「しがまっこ」のアクティビティをやった時、桜井さんの詩を聞いた後の感想で「写真を最初に見たときに、この人の送ってきた人生の重さがなぜわからなかったのだろうか。自分は鈍感だなと思う」というのがあった。研修で「遅れてきた定着民」をやったとき、「難民となって流れてきた人の気持ちがなぜわからなかったのだろうか、なぜその立場から考えられなかったろうか」という気づきがあった。

Blackであることによる地球規模での共通体験の重さと連帯・共感。弾圧と搾取と差別の歴史の長さを思うとき、それも当然のことだろう。

だからね、わたしは女性のみかたをするのですよ。抑圧と搾取と差別の歴史の長さが違うからね。

もう、要約できません。読んでください。でも、暗殺リスト、された人した人はしっかりこの本から創っておこうと思います。
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by eric-blog | 2004-12-17 08:12 | ■週5プロジェクト04 | Comments(0)

カレッジ講座「人権」

人権教育研修04

1997年に人権教育の指導者育成を手がけだしてから7年。これまでERICの主催研修は人権教育を担当する人にどのようにアクティビティを指導するか、どのように流れのあるプログラムを構成するか、カリキュラムの柱に求められるものは何かなどを行ってきました。今年感動だったのは、講座に参加した人たちが「人権教育の指導者育成の課題」をひとつの共通課題として認識されていたということ。もちろん、明日から生徒たちに、と思っている人も参加されていましたが、それでもそのような指導ができる自分育てと人材育成の課題を重ね合わせて考えてもらうことができたように思います。

あさってからの研修は徳島で「男女共同参画」のためのリーダー育成。わたしのねがいとしては
・一人ひとりのエンパワーメント
・参加型を活かした出会いの場
・コミュニティのビジョンとインプルーブメント

そこに向けて、もっともホットなものとして今回の人権講座から応用できることは何か。そんな視点で、講座をふりかえってみましょう。

セッション1
「声」を主題に、自分の名前を音感たっぷりに紹介するアイスブレーキング。「あやしい」と遅刻してきた参加者には言われながらも、参加者全員が「声」がでるようになったなと、わたしは実感。特に、子どもの頃に呼ばれた名前を名札に書いた人がそれを紹介し、そしてわたしたちがその名を呼んだ時の表情の変化、若返りは忘れられない。
参加者アンケートで「アクティビティ」「プログラム」「カリキュラム」「ファシリテーター」などのカタカナ言葉についてのイメージ、理解、実態を共有。用語の統一と参加型の共通基盤の整備を1つのアクティビティで。
次に「人権教育つの側面」についての理解を進めるために巨大チャートの読解と読解したことを全体で共有。ハウとコンテンツの両方が満たされたセッションでした。

セッション2 流れのあるプログラムの体験
木野さんが進行役で、「ジャパニーズ・オンリー」を題材に、新規開発したものを提示。途中の流れを「しがらみの糸」に変えたりということはあったが、みんなで、このプログラムについて検討しつつ、参加型プログラムによって深まる理解とは何かを実感。木野さんのファシリテーターとしてオープンな、すなわち「半構造化」された姿勢がすばらしかった。

セッション3 検討と新たな課題の共有
プログラムを「ねらい」「参加型手法のハウ」「内容」の角度からふりかえり。伝えたいことをどのように内容を整理し、また参加型のハウを工夫したかを知るためにはとてもいい方法だ。
新たな課題を考えるために、この5年間をふりかえって、自分自身にとって「新たな人権課題」だと思ったものを洗い出してもらった。それを「事実」「感情」「価値観」「判断」のORIDで分析。自分の中に何を育てれば、「人権に敏感」な自分をそだてることができるかを検討した。このあたり、「男女共同参画」「ジェンダー意識の形成」ということでは使いたいなー。ただ、どのように一般化して語れるかの問題だね。

セッション4
では、プログラムづくりを行う予定であったが、その前に前日韓国料理やで参加者と夕食していた時に、「社会的有利性の概念がわからない」という会話があったので「教室の中の世界探検」から入ることにした。いずれ人権について考える時には必要な共通基盤であるので。
その上で、アクティビティ開発、プログラムづくり、対象別のグループ分け。

セッション5は発表と課題への肉薄。「教育指導者育成の課題」「3つの教育の比較」「半構造化されたからだ」教育はいかに非公式的、公式的、技術的に伝えられるかの分析は弱かった。これもジェンダー意識の形成については大事な視点であるはずだ。

セッション6はふりかえりと共有でした。「わたしがいちばん○○だったことは...」をサークルタイムで輪唱のように共有したいと思いつつ、ちょっと中途半端。でも「お勧めの本」を共有できたのは収穫でした。
なるほどね。ジェンダーは教育と不可分なんだよね。わかりました。徳島が楽しみです。
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by eric-blog | 2004-12-16 18:45 | □研修プログラム | Comments(0)

山梨県国際化対応スキルアップ研修

山梨県041215

めずらしく「国際化対応スキルアップ」などという研修が持ち込まれました。担当の方の直感でERICをたずねたというような経緯でしたが、打ち合わせの時も、また研修後も満足したということでした。

国際化というのはERICの出発点でもあるものです。国際政治学者で実践家であるチャドウィック・アルジャー氏が、ご自分の地域で国際政治や国際社会がいかにわたしたちの地域や生活に身近なものかを実感してもらおうと取り組んだ「コロンバスin the World, the world inコロンバス」は、そのまま日本国内で吉田新一郎が手がけた「横浜の中の世界、世界の中の横浜」でしたし、氏のThink Globally, Act Locallyは「気づきから行動へ」のあるべき姿でもありました。

最近では国際理解教育や国際化の課題を考えるというような研修がなくなっていたのはなぜなのだろうか、一度しっかり考えてみたいと思います。

研修プログラムは「共通基盤」「気づきから行動へのプログラム」「参加の文化」という3セッションで行いました。
おもしろかったのは「遅れてきた定着民」のふりかえりを「事実・感情・価値観」で行ったことです。さらに、「手立て」を考えるときに「人の心」「コミュニケーション」「コミュニティ」という切り口で考えてもらったのも良かったです。蓄積的に、そして半構造化的に進める枠組みがまた増えました。

自分たちの中にあるものは、どこかで知らず知らずに学んでしまっているもの。それが何であるか、それをどう変革するむ必要があるのか、なぜ変革しなければならないのかを自分自身のふりかえりから考えることができたとてもいい研修でした。

対象やテーマが変わるのはとてもいいですね。刺激になって。
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by eric-blog | 2004-12-16 18:12 | □研修プログラム | Comments(0)

世界の半分が飢えるのはなぜ?--

68-2(310) 世界の半分が飢えるのはなぜ?--ジグレール教授がわが子に語る飢餓の真実
ジャン・ジグレール、合同出版、2003

原著の出版が1999年であることがわかりやすい体裁(裏表紙)はうれしい。どうやらフランス語の原題は「子どもたちに語る世界における飢餓」らしい。ドイツ語にも訳されているらしい。ヨーロッパではよく読まれていると訳者あとがきにもある。訳者の一人である勝俣さんは、パリ第一大学を卒業した人だし、もう一人のたかおさんはドイツ語訳者となっているから、これら双方の著書にあたり、さらに、統計などの数字については最新のものを補足してくださっているとてもいい本である。
多重的な言語での訳出がいいのでないかと思っているわたしは、()が邪魔くさすぎない程度に、補足がある方が、うれしい。ジグレール教授が分析した過去の時点から現在までの分析は自分自身が積み重ねることもできるからだ。これから、日本の翻訳ものはおもしろい世界になるね。

いい本です。なぜか、中表紙の引用はブレヒトです。日本では直接的に読むことが難しいのにな、と思います。光と影。
わたしたちは飢餓の風景に慣れっこになってしまい、影にあるものへの視力が弱っているのでしょうか。舞台の上の暗がりは、どうすればなくなるのでしょうか。光が明るさを減じなければ暗がりはなくならないのでしょうか。

産業革命、近代科学の発達で、世界は120億人を一日2400から2700カロリーほどの栄養で満たすことができるほどの生産を挙げていると言います。23しかし、アフリカでは飢えが広がっている。なぜ?

経済的飢餓と構造的飢餓
先進国における生産調整と家畜の餌
農産物に対する投機と国家の財政破綻
内戦とクーデター
クーデターの裏で糸をひく旧宗主国やアメリカ、国際企業
環境難民と難民条約の限界
森林破壊や砂漠化
人口の都市化「農村社会の終焉と地球規模の都市化」123
非公式部門の人口増加とスラム
植民地政策の後遺症-輸出用モノカルチャー
ブェルキナファソの奇跡1983-1987年byサンカラとその最期151

これら飢えに結びつくさまざまな事柄を教授は「人を人として扱わなくなった殺人的な社会構造」と呼ぶ。153そして、「人間の顔をなくし、社会倫理を逸脱してしまった市場原理主義経済、暴力的な金融資本、国民から富を巻き上げるだけの国家財政が世界に不公平と苦悩をもたらしている」と。各国が自給自足の経済を自らの力で達成すること。それ以外に道はないという。

この本は、そのなぜに応えているというよりは、もっと多くのなぜを生み出している本だと思います。納得できない思いの方が残るのでしょうね。国連もFAOも国際援助団体も、たいていはよくやっている。それでもね。

娘に語るシリーズでは人種差別などがあったと思うが、そのシリーズとは別です。いちばん暗いかも。著者はスイスに住み、若い頃、キューバ革命にはせ参じたいとゲバラに申し込んだら、スイスの金融問題、自分の足元の問題に取り組むようにと言われた経験の持ち主。その成果は『驚くべきスイス銀行』(竹内書店新社)として出版されているそうです。
もう入手できないのかな。
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by eric-blog | 2004-12-14 14:59 | ■週5プロジェクト04 | Comments(0)