カテゴリ:□週5プロジェクト17( 144 )

知らなかった、ぼくらの戦争 

知らなかった、ぼくらの戦争 

アーサー・ビナード、小学館、2017

2889冊目


「本日ただ今を持って、俺の友人だ。」


2015年度に文化放送の番組「アーサー・ビナード『さがしています』」で紹介された人々のなかで、2016年に亡くなった人のいかに多いことか。


その中の一人、飯田進さんは、アーサーが訪ねてきたことに「もう言い残すことはない」と先ほどの言葉を発する。


人を殺した。それはお国のためだと信じていた。しかし、その人は無実だったと後で知る。あやまちを認めることは生易しいことではない。


国を愛する気持ちと、その国があやっていたという後悔の気持ちと、その「狭間」で心が騒ぐ。そのことをアーサーが他のどの日本人よりもわかってくれたという喜びが、ある。


そして、アーサーは、日本に来て、日本の「戦後」が一つだけで、毎年数を重ねていくものだということに驚いたという。


彼の故郷、米国では戦後は複数あるからだ。少なくとも1945年以降に200回。


では、日本は平和なのか?


後書きに彼はエドナ・セントビンセント・ミレーの言葉を引いてこういう。「平和とは、どこかで進行している戦争を知らずにいられる、つかの間の優雅な無知だ。」と。254


日本の平和は、つかの間どころか、70年以上という長さの無知なのだ。


インタビューされた人の中には、埼玉県東松山に住むアーサーのお連れ合いのお母様も含まれている。


本当に、身近なところにいる人々に、しっかりと戦争のことを聞くことなど、あまりにもなさすぎるのだなあと、感じさせられた。


「物語」の本質に迫ることがうまい著者の、聞き取りは見事である。



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by eric-blog | 2017-09-25 12:17 | □週5プロジェクト17 | Comments(0)

反資本主義の亡霊

反資本主義の亡霊

原田泰、日本経済新聞社、2015

2888冊目



『奇妙な経済学を語る経済学者』でも巷に流布する物言いを批判している。そのアンチはアクティビティにぴったりだ。

http://ericweblog.exblog.jp/851100/


『ベーシック・インカム』という本も出している。990万人ほどの人々に対してBIを提供する方が、福祉官僚ばかりが肥え太る複雑な制度設計よりもはるかにましだと指摘する。


また、『震災復興欺瞞の構図』では、無駄遣いや不経済を批判している。時間がかかりすぎる高台移転は時間利益を逸していると。


この本は、あたかも資本主義が悪いかのような言説に対する批判の書。資本主義で世界は豊かになったのだと。したがって、経済成長は必要。


高橋是清は、世界を見渡しても逸材で、彼のおかげで日本は世界恐慌からいち早く抜け出しており、恐慌のせいで戦争を始めたというのはうそ。


日清日露までは軍人の地位は高かった。戦争で活躍した軍人で中将以上になったものは、華族に叙せられ、いまの価値に換算すれば、億単位の報奨金を得られていた。


しかし、戦争で儲けるよりも兵器を売ってもうける方が経済優位な時代になって、軍人の地位が下がった。


軍部は、勝手に満州に進出、さらには長城をも超えて戦線を拡大してしまった。石原莞爾が日本政府から関東軍に政府の違和感、反対を伝えに行ったが、その前に石原自身が満州でやったことを揶揄され、鼻先であしらわれてしまう。


「あなたは戦争で儲けたのに、なぜ人が同じことをやろうとすると止めるのか」と。


不経済であっても、戦線拡大は止められない。いつかうまい汁を吸えるかもしれないという思惑が、幹部には働くからだ。


東條英機はアヘン貿易で巨万の富を築き、甘粕正彦も同様。


民主主義の国同士は争わないとカントは言い、文明格差のある国に対する戦争は儲かる。


いま、先進国は地上部隊さえ出さずに一方的な戦争を仕掛けている。


日本は、インフレ政策をとらないと、高齢化、生産性の低下という二つの原因のために停滞していくことになる。


アベノミクスは雇用を拡大し、経済を立て直した。金融緩和策はうまく行っている。


『女工哀史』でも『あゝ、野麦峠』にしても、農業よりは工業の方が労働が楽であり、現金収入だって得られたのだ。


相対的に見たら、今の時代は豊かだ。


豊かさの配分は可能である。


痛快な読み物であり、これまで原田さんが書いてきたことのまとめにもなっているのではないか。



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by eric-blog | 2017-09-24 11:14 | □週5プロジェクト17 | Comments(0)

人間脳を育てる 動きの発達&原始反射の成長

人間脳を育てる 動きの発達&原始反射の成長

灰谷孝、花風社、2016

2887冊目


同じく花風社の出版物。

http://ericweblog.exblog.jp/237119830/


人間の脳の構造が、脊髄、小脳、大脳という順番で生物的進化し、従って、人間の発達段階においても、その順番で発達が満たされなければならないという議論。そのためにはどうすればいいかを、段階を追って解説したもの。

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人間が生きるってすごいなあ。


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by eric-blog | 2017-09-22 13:47 | □週5プロジェクト17 | Comments(0)

なくそう! 職場のレイシャルハラスメント

なくそう! 職場のレイシャルハラスメント

特定非営利活動法人 多民族共生センター、20161000

2886冊目


ネットからは注文しにくかったので、直接メールで依頼するのが良いと思います。送料360円。後払いでおくってくれます。


info(a)taminzoku.com


職場とされていますが、定義によるとその概念は幅広いものです。取引先、移動中、業務の延長上にある顧客の自宅や飲食の場など、仕事に関係するあらゆる場所とされています。


直接の言動だけでなく、ネットの書き込み、掲示物や配布物などの印刷物、就業規則や内規などにもRHは当てはまります。


特徴的なタイプが8つに分類されており、それぞれの具体例が第二章で紹介されています。

  1. 1.組織内、顧客には日本国籍を持つ日本人しかいないことを前提とした会話、事業、組織運営。
  2. 2.身体的、文化的特徴を揶揄、侮辱の対象とする。
  3. 3.ルーツのある特定の人種、民族、国に係る事柄について、あたかもその集団の専門家、代表者、責任者であるかのように扱う。
  4. 4.本人の意思に反して特定の人種、民族、国籍に係る属性を公表したり問いただしたりする。
  5. 5.仕事上の成功やミス、考え方の違いを特定の人種、民族、国籍に結びつけて評価する。
  6. 6.特定の人種、民族、国籍に係る属性に対する侮辱的、否定的、排除的、攻撃的言動、直接的暴力。
  7. 7.特定の人種、民族、国籍に係る属性を理由に人事、給与面において不利益な扱いを行う。
  8. 8.不適切対応による二次被害。


誰対誰? もスタッフ相互、上下、顧客から従業員、従業員から顧客、マイノリティ間などを含みます。


判断基準は、言われた側、された側の主観的な感情を重視する。

行った側の意図は判断基準にはならない。  5


2016年のアンケートは、2015年に行われたアンケートの結果に基づき分類した8項目について、聞く形になっています。112名対象。


  1. 1.組織内、顧客には日本国籍を持つ日本人しかいないことを前提とした会話、事業、組織運営。  ある84.3%
  2. 2.身体的、文化的特徴を揶揄、侮辱の対象とする。 ある86.3%
  3. 3.ルーツのある特定の人種、民族、国に係る事柄について、あたかもその集団の専門家、代表者、責任者であるかのように扱う。 ある79.4%
  4. 4.本人の意思に反して特定の人種、民族、国籍に係る属性を公表したり問いただしたりする。 ある50%
  5. 5.仕事上の成功やミス、考え方の違いを特定の人種、民族、国籍に結びつけて評価する。  ある41.2%
  6. 6.特定の人種、民族、国籍に係る属性に対する侮辱的、否定的、排除的、攻撃的言動、直接的暴力。  ある69.6%
  7. 7.特定の人種、民族、国籍に係る属性を理由に人事、給与面において不利益な扱いを行う。 ある 27.5%
  8. 8.不適切対応による二次被害。  ある28.4%



【具体例】

  1. 1.組織内、顧客には日本国籍を持つ日本人しかいないことを前提とした会話、事業、組織運営。
    1. 「みんな同じ日本人なんだから~」などと発言する
    2. 「いつ日本に来たの?」などと発言する
    3. 名前の記入欄を「氏名」と表記する
    4. 2.身体的、文化的特徴を揶揄、侮辱の対象とする。
    5. 「日本語話せるの?」「日本語上手ですね」などと発言する
    6. 「ニンニクくさい」「そんなの食べるの?」などと発言する
    7. ジロジロ見る。肌や毛髪に触れる。隣に座ろうとすると席を離れるなど。
    8. 3.ルーツのある特定の人種、民族、国に係る事柄について、あたかもその集団の専門家、代表者、責任者であるかのように扱う。
    9. 「ハーフだから」という理由で、専門でもないルーツのある国の言語の添削を依頼される。逆に「〇〇語、話せないの?」などと言われる
    10. あなたの国はどうして~なの?」「あなたの国の〇〇について、君はどう思うの?」などと言う。
    11. 「あなたは〇〇人らしくない」などと言う。
    12. 4.本人の意思に反して特定の人種、民族、国籍に係る属性を公表したり問いただしたりする。
    13. ルーツのある特定の人種、民族、国籍に関する情報を本人の意思に反して流布する
    14. 「早く日本国籍をとった方がいいんじゃない?」などと言う
    15. 在日韓国人であることを意思に反して公表する。民族名/本名の使用を強要する
    16. 5.仕事上の成功やミス、考え方の違いを特定の人種、民族、国籍に結びつけて評価する。
    17. 「外国人だから考え方が違う」「外国人だから仕方ない」などと言う
    18. RMに対して、その属性に係る誹謗中傷を流布することで、地位や評価を貶めようとする
    19. 6.特定の人種、民族、国籍に係る属性に対する侮辱的、否定的、排除的、攻撃的言動、直接的暴力。
    20. 領土問題、外交問題、安全保障問題、歴史問題などに関連して、特定の人種、民族、国籍に係る属性を有する集団をひとくくりにして否定的に評価する
    21. 7.特定の人種、民族、国籍に係る属性を理由に人事、給与面において不利益な扱いを行う。
    22. 8.不適切対応による二次被害。
    23. 「考えすぎじゃないの?」「あなたにも非がある」などという


差別によって、精神的な被害が生じる。

抗議することでさらに差別被害にあうのではないかと緊張する

それを乗り越えて、抗議をしている。


そのことへの理解と対応が求められると言うこと。24


これらの発言を見てみると、「マイクロアグレッション」として紹介されている事例と重なることがわかる。つまり、日常生活の中で「言われて嫌な言葉」は、職場であれば「ハラスメント」になると言うことなのだ。

http://ericweblog.exblog.jp/237659538/


冊子では「レイシャルハラスメント訴訟事例」も紹介されており、決して「そんなつもりはなかった」が通るものではない。現在係争中の「フジ住宅」の件は、まさしく、分類1の「みんな日本人だろう」と言う前提で、しかも分類6の特定の民族を貶める暴力的な文書を車内でおおっぴらに流布するという悪質なもの。

http://www.asiapress.org/apn/author/japan/post_5571/


わたしたちが生きている場所は、多文化共生の場であり、よりよい共生のために努力こそすれ、共生を危うくする行為は、文化と社会の自殺行為なのである。



【こんなアクティビティで、共生のスキルをあげましょう!】
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by eric-blog | 2017-09-22 13:22 | □週5プロジェクト17 | Comments(0)

検証 防空法 空襲下で禁じられた避難

検証 防空法 空襲下で禁じられた避難

水島朝穂・大前治、法律文化社、2014

2885冊目


人心同様、逃避的気運を醸成させるな。138


どこまでも人心を操るのが総力戦。自分たちが狙われているわけでもないのに避難訓練を易々諾々とやってしまう。そんなことで自分自身の身を守ることなどできないことを知るべきだ。


空襲に立ち向かうことで、何を得たのか?


「軍は国家を守るのであって、住民を守らない。」80


19454月、3月の東京大空襲の翌月政府が決定したことは、「・・・以外の者の疎開は当分の間認めざること」。つまり最後まで逃げるな。78


そして、五人組的相互監視体制となっていた自治会組織などが、その意思を末端まで徹底する。


なんだか、放射線被害を低く見せるような言い方だか、こんな風に言っている。

「陸軍中佐難波三十四 (4000発の焼夷弾が投下された場合) 一回で3500人とか1700人に一人が死ぬだけだ。」43


防空法 1937年成立。

国民に防空義務。訓練の強制。


そこから、隣組の組織化。

さらに、町会台帳による配給制との連動。


命を投げ出して国を守ること。1941年「隣組 家庭防空必携」。50


その中でも国は嘘をついている。「焼夷弾は消せる」と。86


専門家は消せないことを知っていた。非科学的。90


宣伝を流し込む。117


この防空法制研究が、大阪空襲訴訟を切り開いた。2008年。


名古屋大空襲訴訟 1976

東京大空襲訴訟 2007

沖縄戦被害国家賠償訴訟 2012


兵士が戦死した場合の補償に対して、民間人は顧みられて来なかったのだが、防空法を読む限り、国民も兵士と同様に国家を守る義務を課されていたのであり、であるならば、兵士との違いはどこにあるのかということが、おかしいということになるよね。



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by eric-blog | 2017-09-21 12:33 | □週5プロジェクト17 | Comments(0)

空爆の歴史  終わらない大量虐殺

空爆の歴史  終わらない大量虐殺

荒井信一、岩波新書、2008

2884冊目



これまで日本列島を空爆したのは米軍だけである。

http://ericweblog.exblog.jp/18138547/


「はじめに」で著者自身の少年時代に「ソ連の爆撃機」に備えよという宣伝映画があったという。が、ソ連による空爆はあったのだろうか?


対して、日本が空爆した国は中国である。1937年から45年にかけて12592回。(p.53)

そのことを忘れている感じするのはなぜだろうか?


ダルフールの大虐殺も空爆でもたらされている。


ドイツ軍のイギリス空爆は有名だ。

http://ericweblog.exblog.jp/237529059/


東京大空襲などの被害者による損害賠償の訴訟も行われている。


空爆の背景にあるのは差別的な「帝国意識」であると、著者はあぶり出す。


1919年、イギリス空軍参謀長ヒュー・トレンチャード「植民地の法と秩序は、在来の守備隊よりも機動力の優れた空軍によるほうが安上がりで効果的に維持できる」。3


文明の落差による心理的な効果。空からの統治、懲罰効果。


1903年に開発された飛行機が戦争で使われたのはすでに数年後。

・イタリアトルコ戦争 1911

・バルカン戦争 1912

・青島戦争 1914


その後、1930年代には「選択的空爆」論が浮上。水道、鉄道などのインフラ破壊が住民の士気を挫くものとされた。24


1923年「空戦に関する規則」が住民に対する無差別爆撃を禁止。26


しかし、相手が報復手段を持たない非「文明国」であった場合には、禁止兵器が公然と使われた。27


「ファシズム時代」の空爆

1937年ゲルニカ

1938年重慶


民族の抵抗と空爆

・ベトナム戦争  南ベトナムは歴史上最も激しく空爆された国になった。


そして「対テロ戦争」と空爆の時代に。


しかし、今に至っても、空爆は、相手を挫く決定打ではないのだ。



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by eric-blog | 2017-09-21 11:40 | □週5プロジェクト17 | Comments(0)

悲しみのダルフール 大量虐殺の惨禍を生き延びた女性医師の記録

悲しみのダルフール 大量虐殺の惨禍を生き延びた女性医師の記録

ハリマ・バーシル&ダミアン・ルイス、PHP研究所、2010

2883冊目


ダルフール紛争はスーダンのチャドに近い地域でザガワ族などアフリカ系住民が起こしたアラブ人支配に対抗する紛争。2003年から。

https://blogs.yahoo.co.jp/sisido1124/65943501.html


イギリスの植民地であったスーダンから、イギリスが引き上げる時、アラブ人に政府を任せた。ザガワ族など「アフリカ系」住民は戦って自分たちの土地を守った。しかし、社会的にはアラブ人が支配し、アフリカ系住民を「黒人奴隷」と呼んで虐げて来た。


そんな背景を、「幸運の白いまつげ」を持った少女が、ザガワ族の自主独立を信じ、植民地政策の過去を知る父親に育てられ、学校で一番の成績を収め、医学部に進学し、医者となって活動する。1979年生まれ。


アラブ人の生徒たちをおさえ、上位の成績を収めるも、最終試験では「出席が足りない」と指導教官の偽証で、トップを逃す。そんな差別、マイクロ・アグレッションは初等教育の段階から続いている。


この本がすごいのは、そのような過酷な体験が語られる前に、いかにザガワ族の祖母や母、父らが独立の精神を持って生きているか。そして、彼らの生活がどれほど豊かなものであったかを、子供の頃の物語から描き出している。


朝食べるアシーダ。祖母が命じる薪運び。優しく、厳しく育てられていく子供時代。


大学卒業まででもう250ページにもなる。一晩で読み切ってしまった。


医師免許を得てからは、ハシュマの病院で務める。そこにはゲリラ戦で傷ついたアフリカ系スーダン人もやって来た。彼らを治療し、救急救命用品などももたせたりすることが問題にされ、秘密警察に拉致される。「何も言わない」ことを約束させられ、マスカバドに左遷される。


平和なように思えていたマスカバド。突然、女の子たちが学校でジャンジャウィード(アラブ人による襲撃)に襲われ、レイプされる。数十人の子どもたち、教員の手当をしつつ、その襲撃のとき、学校に助けに駆けつけようとした人々を政府軍が排除していたことを知る。襲撃はアラブ人の行動を政府が後押しした結果だったのだ。


のちに、アラブ人たちに武器を供給していたのは、スーダンから石油を輸入していた中国だったと知るのだが。


取材に訪れた国連職員に、匿名を前提に、襲撃のことを伝える。


そして、一週間。彼女は再び秘密警察に拉致され、国連職員に話したことを責められ、レイプされる。レイプを報告するのなら、レイプとはどういうものかを知ってからにせよと。320


「生かすことにした」と拷問の後、路上にほおり出された彼女は、彼女を命の恩人だと思ってくれている知人の手助けで故郷に戻る。その故郷、ダルフールに、大空襲が襲う。


村を守ろうとして残った父親は殺され、弟たちは戦闘に惨禍することを決意、母と妹は難民として逃れていく。


一人、彼女は違法なルートをたぐってイギリスへ。飛行機を乗り継ぎ、ロンドンの空港からタクシーに乗せられ、「アサイラム」の一言によって警察に保護される。それから一年。難民申請を待ち続ける。


個人の物語であるのに、全ての要素が詰まっている。


少数民族による政治支配。支配者であるがゆえに得られる富を、自分たちの民族の優秀さだと思い、被支配者たちを「犬」だ「黒人奴隷」だと下げずむ態度。


公用語はアラブ語で、ザガワ語などの言葉は学校では許されない。ザガワ語を話すと罰せられる。教員たちはアラブ人。アラブ人がザガワ族の子どもをバカにしても罰せられることははない。そのことに異議申し立てをしたザガワ族の子どもは親が呼び出される。


しかし、いくら支配層とはいえ、人為的に導入された人種である、土地に根ざしていないアラブ人は「土地なし住民」として、「プア・アラブ」も生み出す。優秀であるはずの民族であるのに、下げずんでいる民族以下の貧困状態にある彼らの怒り。


秘密警察による拷問。力のある被支配層の決起の力に怯えるプア・アラブを武装させ、彼らによる「ジャンジャウィード」を黙認し、擁護する政府軍。


どこかで聞いたような話。あ、日本だ。これは日本でも起こったことなのだ。同じ精神構造で起こったことだ。同じ社会構造で起こったことだ。


人は弱い。


弱さを自覚して、危うきに近づかない知恵を働かせよう。



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by eric-blog | 2017-09-21 10:41 | □週5プロジェクト17 | Comments(0)

靖国神社が消える日

靖国神社が消える日

宮澤佳廣、小学館、2017

2882冊目


1958年生まれ、國學院大学文学部神道学科、湊川神社、神社本庁、平成18(2006)から靖国神社、平成29(2017)6月末退職。


この長い年月、私とは全くことなる経験、環境、テーマ、行動で行きて来た人が書いている回想録のようなものを読み解くのはとても大変だ。読んでも読んでもわからない。


これまで本を読めていたことが不思議に思えるほど、何を言っているのか、何を言いたいのかがわからない。


靖国神社が、時々の政争の具となって来たことに関して、様々な思惑や動きがあることは当然だろう。そして、何よりも靖国神社も一枚岩ではないことも。政治的になればなるほど、秘密裏にことが運ばれるようにもなっていく。


基本として、著者は「靖国は平和を祈願する神社として設立されたものであり、決して戦争賛美ではない」という。


昭和38年に「靖国神社国家護持要項」によって三原則が日本遺族会との間で合意された。212

・名称の存続

・特性の保持 (由緒、伝統、行事、)

・合祀の決定(合祀の範囲および基準は国が公に之を定め、天皇に上奏の上決定すること)


靖国神社に祀られているのは明治以降に「国家防衛という公務のために死んだ人々」である。2466000余。206


それに対して明治維新の時の賊軍も合祀しようという動きがあった。それは「徳川の逆襲」?

それによって靖国の公共性が失われるのではないかと、著者は危惧する。


その張本人、德川宮司を後押ししているのは亀井静香ら。らしい。


昭和天皇がA級戦犯合祀以来、参拝しないのも、自分の戦争責任を身代わりに引き受けた人が国家のために死んだということは、大きな矛盾を孕むから出し、どのツラ下げて彼らの前に出たらいいか、わからないからなんじゃなかろうか?


色々色々色々、憶測、検証、物言いはあるだろうけれど。


疲れる文章だなあ。こころ穏やかに英霊に感謝を、そして未来に平和を祈る場所になんかであるのだろうか? いままで、一度も足を踏み入れたことのないものとして、何が気になるのか、整理しないといけないなあ。



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2017年9月17日 東京新聞 書評欄より

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by eric-blog | 2017-09-20 11:39 | □週5プロジェクト17 | Comments(0)

全体主義の起源 

全体主義の起源 100de名著

第三回 「全体主義」


人が労働組合だとか、特定のつながりの組織に属することがなくなり、不安感が増すとともに、「世界観」を示してくれる政党になびいていった。それが全体主義。


アーレントの本の話を聞いていると、現代にも通じるものがある。


基本的に「個人の達成主義」が学校教育の目標となり、そのために高学歴社会では、人は孤独になる。個人対個人の競争になるのである。


課題を抱えた人々(社会的弱者)は連帯して様々な社会的配慮を勝ち取ってきた。

・障害者に対する年金(1959)

・同和対策事業特別措置法(1969)

・公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法(1969年→公害健康被害補償法 (公健法)1973)

・養護学校義務化(1979)

・女性差別撤廃条約(1979年→日本は1985年批准)

・フリースクールの認可(2004)

・高校授業料無償化(2010)

・子どもの貧困対策の推進に関する法律(2013)


結果、対策も進んだが、同時に対策の官僚化も進み、特別法人、公益法人の世界は、天下りの温床であり、かつ、助成金を獲得しているものも多い。


当事者運動に支えられて社会的な援護策が講じられてきた結果、『母よ、殺すな』の出版のように、過激な当事者運動は影を潜めていく。学生運動と同期して盛んであった三里塚闘争も『三里塚のイカロス』に描かれるようにレクイエムが流れる状況である。


新たな問題提起があっても、それらの当事者は、これまで以上に細分化され少数になるだろう。それらの問題提起が通るか通らないかは、その時の官僚次第となるのではあるまいか。


一方で、被差別者の連帯は「安易に全ての被差別者の連帯を強調することは、かえって差別を隠蔽してしまうことになる。」というような上野千鶴子さんの指摘もあるが、実際には当事者たちは生きていくのに大変で、連帯などできないのだ。


それはNPOなどにしても同様だ。ほとんどブラック企業すれすれであるのに、連帯して状況を打開する動きにはなりにくい。NPOで働く人々が高学歴者であることも一因かもしれない。彼らは、結局は孤独なミドルクラスなのだ。


一方で、特に社会的弱者の問題をより普遍的な課題として、「全ての人の人権が保障されるような社会制度づくり」へと、普遍的な提案をする動きもある。ベーシックインカムの議論などはそれにあたるのだろうが、運動力は弱い。それは市民社会論やESDのような公益的な教育論議も同様である。当事者運動のような突破力もなければ、そのような問題に対する幅広い支持を集めるだけの民度もない。


一方で、「北朝鮮の脅威」のようなナショナリズムを帯びた主張は、わかりやすく、一定の割合で支持され、そして「否や」は言いにくい状況を簡単に作り出すことができている。


不思議だ。これは、全体主義の復活の兆しなのだろうか?



■孤独な群衆

268-2(1165)孤独なボウリング 米国コミュニティの崩壊と再
ロバート・パットナム、柏書房、2006
Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community, 2000

http://ericweblog.exblog.jp/7459630/

■孤独なミドルクラス

ミドルクラスを問いなおす 格差社会の盲
渋谷望、NHK出版2010

http://ericweblog.exblog.jp/15658451/


376-1(1607) イェルサレムのアイヒマン悪の陳腐さについての報
ハンナーレント、みすず書房、1969
原著19631965

http://ericweblog.exblog.jp/11702254/


94-1(437) 従の心理 アイヒマン実験
S.ミルグラム、河出書房新社、1980.1995改訂版
Obedience to Authority: An experimental view, 1974 by Stanley Milgram

http://ericweblog.exblog.jp/2124985/




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by eric-blog | 2017-09-19 14:41 | □週5プロジェクト17 | Comments(0)

江戸・明治 百姓たちの山争い裁判

江戸・明治 百姓たちの山争い裁判

渡辺尚志、草思社、2017

2881冊目


林野は村の人々のエネルギー源であり、食糧源であり、肥料源であり、生活に不可欠なものであった。時には田の所有と一体的に扱われていた事例もあるという。25


そして、林野の多くは共有地であった。そのために利用のルールが共有され、罰則も決められていた。一つの村田の入会を村中入会、複数の村々による入会を村々入会と呼ぶ。


ルールには「期間制限」「用具の制限」「一日の再狩猟制限」などがある。27


後述される事例の山口村は、所有権の主張において「留山」という区分を入れており、それは普段の入会では入山を禁止しており、飢饉の際に材を売って換金し、必要な食糧を購入するのに当てたりなど、緊急、村の臨時支出などが必要な際に活用する入会地があることが示されている。(4)


18-19世紀の平均的な村は、石高400-500石、耕地面積50町前後、人口400人。

全国に63276村、現在の市町村には37村程度が含まれている。33


町は約100m平方。=1ha。一畝が10m平方で1a10石強30(60kg/)

一反一石。


百姓とは、土地を所有して自立した経営を営み、年貢などを負担し、村からも認められた身分呼称のこと。39


家を単位とした土地や財産を子孫に残していくことが、責任。41


村は行政組織であるともに自治組織。村方三役。名主、組頭、百姓代44


村同士の争いは、藩に訴えて出ることに、江戸時代にはなっていた。

3章は江戸時代の山村の暮らしぶりと境界争いについての紹介。


そこに明治の地租改正があり、境界線を確定する必要が生まれ、訴訟は対国の裁判へと移っていく。


その実相が第4章で紹介されている現在の山形県内、山口村と田麦野村の争いである。192


江戸時代などについて本を読むときの基本資料として読んでおくと、実態が分かりやすくなるのではないかと思うほどに、現代の村社会から遠のいた人々の視点から分かりやすく書かれていると思う。




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by eric-blog | 2017-09-19 10:59 | □週5プロジェクト17 | Comments(0)