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高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院

高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院
水月昭道、光文社新書、2007
2473冊目

もうすでに「はじめに」からして衝撃である。

2004年に大学院博士課程を修了した著者自身が非常勤講師をしつつ、書いたこの本。そして、2012年から、たぶん現在も事務職として勤務しているのではないだろうか? wikiによると。

この本で大学院修了者たちの無職問題提起をしてから、さんざん嫌な目にあってきたと、言う。

著書[編集]
『子どもの道くさ』 (東信堂(居住福祉ブックレット)2006年)
『高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院』(光文社新書、2007年)
『アカデミア・サバイバル‐「高学歴ワーキングプア」から抜け出す』(中公新書ラクレ、2009年)
『ホームレス博士 派遣村・ブラック企業化する大学院』(光文社新書、2010年)
『他力本願のすすめ』(朝日新書、2012年)
監修[編集]
『高学歴女子の貧困 女子は学歴で「幸せ」になれるか?』大理奈穂子,栗田隆子,大野左紀子 光文社新書、2014年

わたしが大学に進学した頃、進学率は30%程度だった。
そして、大学院の数は598校、752校中実に80%近くが置いているのだ。
設置率は、国立:99% 公立:87% 私立:76% (平成20年)
1980年に院生数は53992名だったものが、いまや26万人! 実に5倍以上の伸びではないか。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/004/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2010/08/03/1295700_1_2.pdf

しかし、では、全体の人口に対して大学院卒業者が多すぎるのかと言えば、決してそんなことはない。
人口100万人に対して、日本581人、アメリカ2008人、イギリス3018人、フランス1482人となっている。

では、これらの国ではもっと問題になっているのだろうか?

思い出してほしい。フィンランドでは、学校教員の院卒率が高いこと、そして学級の人数が少ないこと。つまり、教員数が相対的に多いこと。
イギリスもアメリカも教員養成系の大学院が22.9%,29.4%と高いこと。

それに対して日本は工学系が圧倒的に多いのだ。
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上記資料、p.4


これはどう考えても、「教育投資」が高等教育レベルでもないがしろにされてきたことを表しているではないか。

さらに、「はじめに」を読むだけでも高等教育における少子化対策として、大学教員の採用数というパイを少なくしないために東大と文科省が大学院の増設に踏み切ったことがわかる。

このことは、高等教育の教育費負担が私的であることとあわせて考えると、彼らがまさしく「人のふんどし」で「人の財布を当てにして」政策を導入したこと断言できるのである。

日本だけが、いまだに「高等教育無償化」をしていない先進国であること、そして、この本を読むと、それはますます実現不可能なことになってしまったことが理解できるだろう。

就職氷河期と言われているいまでも、大学卒業者の就職率は90%以上だと、文科省は言っているのに対し、大学院卒者は50%というのである。

博士課程修了者の「死亡・不明」割合は11.45%!

大学院のために文科省はどれほど投資したのか。(税金負担分)
大学院のために、学生はどれほど学費を負担したのか。(私費負担分)

あほな国である。

投資の結果を無駄にしているのだから。なぜ、教育学部を廃止したのか? なぜ、学級人数を削減しなかったのか。なぜ、院卒の教員採用を増やさなかったのか?
なぜ?

1991年というバブル崩壊の時までに、あほな頭を切り替える必要があったんだなあ。浮かれすぎて、何も見えなくなっていたんだね。

年々1万5000人程度の博士課程修了者が生まれているという。なんてことない数字だ。小中高の教員数100万人、およそ2万人が再生産されなければならない数字なのだから、日本の学校教育が、しっかりと院卒採用、そして学級人数削減、常勤者の雇用という教育費の「公的負担」をしっかりと増やしていれば、何も恐れることのない数字だ。文科省の言う通り、「国際的な水準」にはまだ届いていないとすら言えるだろう。

しかし、学級人数はかえって「40人」の復活などと言っている。非常勤雇用を増やしている。院卒レベルは必須ではない。

とまったく教育改革としては何の未来への展望もないことばかりしている。

なぜか。

思うに「日教組」フォビアがあるのだと思う。常勤の高学歴者が増えれば、「批判的」な活動をする人びとが増える。高学歴であればあるほど、管理しやすい状況を作りたいと、思ったのではないだろうか? 

げすの勘ぐりであればいいけれどね。

では、これらの「ノラ博士」の活かし方として、次善の策でしかないと思うが、いくつか、提案されている。
「ボトムアップ的人間関係」。つまり、科学と素人をつなぐ役目。138
弁護士などの弱者救済。
塾講師

あらあら、受験競争体制強化に、大学院増強が結果するのね。

そして、学生をカモにしているのが大学院なのだ。

文科省の教育政策おそるべし。あほやな。これでは国も民主主義もほろぶな。

■『ホームレス博士 派遣村・ブラック企業化する大学院』より

博士号を活かす制度(梯子)そのものがない。
小中高の教頭・校長や学校法人の理事・評議員などの50%を修士号・博士号取得などのルールがあれば。
37

教育行政に投じられる国費は、他の先進国にくらべきわめて少ない。最低のレベル。
46

国際人権規約の高等教育の段階的無償化も承認していない。
ターゲットになったのは「親財布」

■ちなみに曾祖父さんが女学校の創設者。
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by eric-blog | 2015-03-31 12:05 | ■週5プロジェクト14 | Comments(0)

よくわかるヒューマン・キャピタル 知ることがいかに人生を形作るか

よくわかるヒューマン・キャピタル 知ることがいかに人生を形作るか
ブライアン・キーリー、OECD、明石書店、2010、原著2007
2471冊目

早期教育段階から学校教育、生涯学習段階まで、「知ること」がいかに人生に影響するかを調査したもの。

知識・技能・態度という要素を統合するコンピテンシーの考え方が、学校で何を身につけるべき かという点から紹介されている。

平均すると、統合化された平等な教育システムの生徒は、選別的なシステムにいる生徒よりも成績がよく、教育の成績は、生徒の社会的背景とはあまり関わりがない。
School Factors Related to Quality and Equity: Results from PISA 2000
63

学校教育の質をあげるポイントは「教員」である。66

教師自身の継続的成長への教師自身の責任と、教師の成長を促進する支援の構造への、明白な一連の期待が求められている。
Teachers Matter,
70

そして「よい学校」とは
形成的アセスメント formative assessment
を活かすこと。

先進国では、若者の約80%が中等教育を終了し、20%が中退する。

14歳で職業教育、あるいは見習いになることも復活しつつある。「若者たちが失敗を経験した学校システムから若者を引き上げること」にその目的はあるという。75

なぜ、フィンランドがPISA調査で結果がよいのかをコラムで取り上げている。その中の答えは「まず教師、第二に教師、第三に教師」である。74
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by eric-blog | 2015-03-20 18:47 | ■週5プロジェクト14 | Comments(0)

オランダ人「慰安婦」ジャンの物語

オランダ人「慰安婦」ジャンの物語
ジャン・ラフ=オハーン、木犀社、1999
50 YEARS OF SILENCE、1994
2470冊目

1992年、金学順さんら韓国の戦時性暴力の被害にあった女性たちが声をあげ始めたことによって、50年間封印してきた被害の実態を、家族に、そして親しい人びとに、国際社会に語ることを選んだ女性の物語。

父方で数えれば4代目、母方で数えれば三代目の、インドネシア生まれのオランダ人として1923年に生まれた。

製糖農園を成功させた祖父のもと、職業写真家としてもオランダ人社会で活動する父親、オランダから嫁いできた母親のもとに、五人兄弟姉妹の三人目。子どもの頃の思い出は、五人の召使いに囲まれた豊かで、しあわせな日々。

インドネシアは、300年ものあいだオランダ支配の元にあったのだ。

日本軍がオランダ領東インドに侵攻した時、そこには20万人ものヨーロッパ人が暮らしていた。同盟国以外の諸国人は「抑留」の対象とされる。
1942年から1945年、日本軍による支配が続く。

ジャンの家族も抑留され、食料も衛生的な施設もない抑留所での飢餓生活がはじまる。

そして、1944年2月から約2ヶ月。ジャンは同じ収容所からの17名の女性たちとともに、日本軍将校相手の慰安所に連れて行かれる。

http://ja.wikipedia.org/wiki/ジャン・ラフ・オハーン

写真を見て驚かされるのが、彼女の笑顔である。国際公聴会での写真でも、その他の女性たちとは、まったく表情が異なるように思える。

そして、この手記を読んで、その答えはカトリックとしての信仰にあったのではないかと思える。

日本軍将校による強姦に対して、毎日抵抗をくり返し、そのことを受け入れたり、あきらめたりしない。それを支えているのが聖書であり、信仰なのだ。

人間が苦しい時に、適切な祈りが、聖書の中にはあるのだなあ。

恥辱の中にあって、彼女は、裸にされて、衆人環視の中で十字架にかけられてイエスの恥辱を思うのだ。その気持ちを理解できたことが、彼女をより信仰へと近づける。

これは、なんなのだろう?

修道女をめざしていたという彼女。解放され、神父に告解し、それでも修道女になれるかどうかを問うた時、その神父は、ネガティブと応えた。そして、そのことを、後に彼女は、「彼の判断は間違っている」とふりかえるのだ。150

抑留者を慰安所で強制的に性奴隷にしたことが国際法違反にあたることを知っていた日本軍は、彼女たちに沈黙を強いる。
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by eric-blog | 2015-03-20 14:03 | ■週5プロジェクト14 | Comments(0)

森は生きている

森は生きている
富山和子、講談社青い鳥文庫、1984
2469冊目

『川は生きている』によって森と水の関係を、『道は生きている』で文化の土台を、そしてこの本は森林のもつさまざまな働きを学び、自然を守るということはどういうことか、考えてほしいとあとがきに言う。

ものごとを総合的に見るということは、頭の柔らかい子どものうちに教えねば・・・と。

すばらしい一冊。

大学院生の時に、総合学習の教材を開発するのに、富山さんの本を読んだ感動。

三部作。ぜひ。
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by eric-blog | 2015-03-19 09:57 | ■週5プロジェクト14 | Comments(0)

劣化国家

劣化国家
ニーアル・ファーガソン、東洋経済社、2013
2468冊目
The Great Degeneration, 2012

どんな古い本やねん! というような装丁。

原題は「再生不可能」というような感じか?

4つの点で、西洋は劣化し、衰退しているという。

民主主義
資本主義
法の支配
市民社会

市民社会の劣化では『孤独なボウリング』が引用されており、人がアソシエーションに参加しなくなっていること、イギリスではまだその傾向は軽いかもしれないこと。

しかし、全体として「制度的衰退」が起こっているという。

いや、その前に、なぜ、いま、西洋世界の収入、寿命、物質的豊かさが、人類史上、たった数百年のうちに、定常状態を脱し、そして、その他の地域はいまだに定常状態を脱し得ず、格差が拡大しているのか。

その「大いなる分岐」はどこにあったのかから、明らかにする必要があるだろう。28

後者は自然状態「アクセス制限型パターン」であり
●低成長経済
●比較的少数の非国家的組織
●小規模で中央集権的な政府が、被統治者の同意を得ずに運営される
●個人や王家のつながりをもとに組織された社会的関係

もう一方は「アクセス開放型パターン」
●より急速な経済成長
●多くの組織からなる、豊かで活気ある市民社会
●より大規模で分権的な政府
●法の支配などの、非人格的な力が支配する社会的関係。そこでは所有権、公正性、平等が確保される。

ノースによれば、西欧諸国は開放型に移行した。「制度的しくみを通じて、エリート間の非人格的関係が生まれるような環境を整え」、「政治経済機構へのアクセスをエリート層の間で解放させるインセンティブを新たに考案し、維持する」。33

「特権を通じたレント創出という自然状態の論理から、新規参入によるレント縮小というアクセス開放型」へ

さまざまな法人の発展
土地所有の変化

フランシス・フクヤマ『政治秩序の起源』による「原題の政治秩序を構成する3つの要素」34
強力で有能な国家
法の支配への国家の従属
全国民に対する政府の説明責任

イギリスで政治的権利を求める革命が起こり、政治的権利にもとづいて経済力を拡大する市民社会が生まれた。

そして、イギリスはその包括的な制度を新大陸に輸出した。スペインは、インカ帝国アステカ帝国にひきずられた。

*レントとは「レントとはすなわち、労働者が特定の仕事を引き受けたり、企業がある市場に参入したりする場合の誘因(インセンティブ)となる収益」


さて、イギリスにはもう一つ、成功の要因となったものがある。
安価な石炭と高価な労働力の組み合わせ。=生産性向上技術の進歩。47

さらに、自己拘束的な税制の改善と支出の監査、債務不履行を禁じることで、公的債務が急速に積み上がった! 48

金融革命。

国家債務はGDPの260%を超える借り入れになったが、その借り入れで海軍を増強、世界帝国を獲得したので、債務不履行は起きなかった。49

4つの要素について、なぜ西洋がうまくいったかの説明はとてもおもしろい。
だが、ポイントは、ここからどこへ、だ。

よりどころとする原則のすべてが、崩壊しているのだから。
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by eric-blog | 2015-03-19 09:27 | ■週5プロジェクト14 | Comments(0)

成人スキルの国際比較 OECD国際成人力調査(PIAAC)報告書

成人スキルの国際比較 OECD国際成人力調査(PIAAC)報告書
国立教育政策研究所編、明石書店、2013
2467冊目

Programme for the International Assessment of Adult Competencies

24カ国が参加した16-65歳の成人を対象にした調査。
2011年8月から2012年2月に実施。11,000人を抽出、5200人が参加。

調査内容は
読解力
数的思考力
ITを活用した問題解決能力
背景調査(Background quiestionnaire)

調査方法
■対象者の自宅などにおいて、専用のパソコンを用いて対面式で行う。

PIAACにおける読解力とは、社会に参加して、自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発展させるために、書かれたテキストを理解し、評価し、利用し、これに取り組む能力である。7
0-500点。

レベル5 376点以上の割合がもっとも多いのはフィンランドで、2.2%。日本は1.2%。平均点は296点と日本が一位。平均点が高いのは得点の低い人がいないためである。

数的思考力でも平均点は一位。

ICT活用については、調査拒否者も多く、評価は高くない。
ICTコアの不合格率10.7%は調査国中もっとも高い。

ICTコアとは、6つの操作の内、3つ以下。ハイライトができない場合も不合格。
・クリック
・文字入力
・プルダウンメニューからの選択
・スクロールおよびクリック
・テキストのドラッグアンドドロップ
・テキストのハイライト表示。

日本ではコンピュータを日常使わないという人が多い。

能力に見合った仕事につけているかどうか、仕事で必要な能力は何かなどの検討がある。

日本では学歴と賃金との関連の方が、能力との関連より大きい。

また、「社会的アウトカム」を次の4つの指標ではかっている。231

■他人への信頼の度合い
■政治的効用感
■ボランティア活動・共同活動への参加
■自己評価による健康状態

日本は、フィンランドに並んで、読解力習熟度と社会的アウトカムの関係が最も弱い国の一つ。統計的な有意なし。

アメリカ、ドイツ、オーストラリア、イギリスは高い。


http://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div03-shogai-piaac-pamph.html

http://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/pdf/piaac_summary_2013.pdf
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by eric-blog | 2015-03-17 15:01 | ■週5プロジェクト14 | Comments(0)

童話と樹木の世界 林学との接点を求めて

童話と樹木の世界 林学との接点を求めて
筒井迪夫、朝日選書、1986
2466冊目

95話の童話の中に、樹木がどのようにかかわっているかを解説したもの。すばらしい本だね!

桃太郎のモモの由来。
一寸法師が使った箸と椀は、何から作るか。
山で育った金太郎は、怪力でたくましい! これは苦しいか。

きき耳ずきんは、クスノキの苦しみに耳をかたむける。また、そのクスノキを見舞って、毎夜毎夜、ナギやハイマツなど、遠路はるばるやってくる。不思議。

ネズミの餅つきというのはいまでは「おむすびころりん」の型の方が有名だと思うが、山に生き、薪を売って生きるおじいさんたちの姿が描かれている。

サルカニ合戦 もちろん、出てくるのはカキである。

花咲か爺さん! 愛犬が死んで、木を植える。木が育ったので、臼にする。その臼を燃やして枯れ木にまいたら花が咲くというお話し。しかし、臼の材料は松、松の木から直径50センチの臼を作れるまでには200年から250年かかる。それだけおじいさんは長寿だったということ? なんて言うのもおもしろいね19

舌切り雀はもちろん、竹である。

なるほどねえ。

ロビン・フッドはシャーウッドの森を根城にしたアウトローのモノ語りだし。

外国のお話しにも、森との切っても切れない関係があらわれている。


【関連】
森は生きている、富山和子
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by eric-blog | 2015-03-17 14:14 | ■週5プロジェクト14 | Comments(0)

「学力」と「社会力」を伸ばす脳教育

「学力」と「社会力」を伸ばす脳教育
澤口俊之、講談社、2009
2465冊目

HQ 人間性知能 とはEQ情動知能を含む総合的な能力。

ほめられることで活動するのはドーパミン系 学習が効率よくすすむ。

脳は8歳までに急激に発達する。

脳の発達に必要なのはEEE。進化的に予想している環境 32
 Evolutionarily Expected Environmnet

8歳までの「臨界期」 critical period

ヒトの子どもは「人間社会で音声言語に囲まれて育つこと」を進化的に予想しており、そのために、音声言語のための神経回路を幼少期に発達させるような遺伝的(あるいは進化的)なプランを持っている。44

EEEという、いわば「普通の環境」。

言語の臨界期とは母語(第一言語)
8歳までに移住してくると第二言語の習得も第一と同じ。46

多重知能を刺激する「読み書きそろばん+音楽」65

スピアマン理論による一般知能gF>

gFにマイナスに寄与する項目  155
◎よく泣くこと
◎TVゲームをよくすること


仲間との社会関係力の獲得の臨界期=5歳児
公園での集団遊びの重要性。161

バラエティ番組は社会行動をモニターする機会。
祖母と過ごす時間。
箸を使って魚をたべる。

澤口氏の指導で実践をしている保育園も。
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by eric-blog | 2015-03-17 09:59 | ■週5プロジェクト14 | Comments(0)

戦争の読みかた グローバル・テロと帝国の時代に

戦争の読みかた グローバル・テロと帝国の時代に
加藤朗、春風社、2008
2464冊目

ニーチェの言葉、「良心の疚しさ」

負債は負債にしかすぎない。それを負い目や罪責と感じるのは「良心の疚しさ」があるからだ。105

「敵意、残忍、迫害や襲撃や変改や破壊の喜び----これがすべてが、こうした本能の所有者自身へと方向を転ずること、これこそが<良心の疚しさ>の期限なのだ。(ニーチェ、463頁)

脱近代思想と、民族主義、共産主義などを生み出してきた西洋近代思想の衰退。
1968年が分水嶺。現代テロの始まりの年。

イスラム世界の「ルサンチマン」という弱者の正義によりそい、植民地主義という負債を「良心の疚しさ」のなかへ押し戻すことで、近代西洋文明世界に新たな原罪を生み出した。105

西洋文明世界に植民地主義という暴力をふるわれ債権者となったイスラム世界がテロを快楽と感じる心情

「おのれの権力を無力なモノの上に遠慮会釈なくふるうことができるという快楽できるという快感でもあれば、「悪をなす楽しみのために悪をなす」という悦楽でもみあれば、暴行を加えるということの享楽でもある。」

ニーチェ、434頁、『善悪の彼岸』ニーチェ全集II、筑摩書房、2003より

イスラム・テロがなくなりそうにもないのは、テロが西洋文明世界には自虐の快楽を、イスラム世界には優越、悪行、暴行などの快感を与えるからである。107

「苦悩は負債の補償」と西洋文明世界はテロを受け入れる。
「苦悩するのを見るのは愉快、苦悩させることはさらに愉快」とイスラム国はテロを実行する。

ルサンチマン(怨恨)と良心の疚しさの相互応答のなかで生まれた暴力。

果てしのない怨恨の感情と疚しさの道徳の相互応答。

Zur Genealogie Der Moral


第三部 「新しい世界」とは何か
第五章 「新しい世界」の政治
第一節 配分政治と承認政治 100-

欲望と気概
配分価値と承認価値
配分政治と承認政治
生存の手段的価値=福祉価値=安全・富み・技能・健康=利益体系
生きがい=名誉価値=権力・地位・愛情・徳義=信条体系 社会状態において意味を持つ。


第6章「新しい世界」の安全保障

グローバル公共圏

その権力構造は情報/知。
市民社会と非市民社会
財産と教養を入場基準とする市民社会。
何が「公共の利益」かを定義し、また「公共の理解」に反する人びとを非市民として差別する権力を有している。247

自由・平等・公正という正義も、じつはキリスト教西洋文明に固有の正義であって普遍性はないのではないか。また民主主義や人権の概念も一元的ではなく、文明や文化、国や地域によって異なり、多元的ではないか。248

このような市民社会の独善的、一元的な価値にもとづく独断的な価値判断が公共圏に権力構造を生んでいる。そしてこの価値判断への承認的正義にもとづく異議申し立てとして、グローバル・テロリズムが発現する。(斎藤『国家を超える市民社会』、217-228頁)


テロへの共感はどこからくるのか?
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by eric-blog | 2015-03-17 09:41 | ■週5プロジェクト14 | Comments(0)

亡びゆく言語を話す最後の人々 

亡びゆく言語を話す最後の人々 
K.デイヴィッド・ハリソン、原書房、2013
The Last Speakers: The Quest to Save the World’s Most Endangered Languages, K. David Harrison, 2010
2463冊目

世界には8000以上もの言語があり、その80%が絶滅しつつある。

「生物学、薬学、遺伝子学、航海術などの分野で重要な鍵を握る洞察は、文字に期されない、口承の少数言語によってのみ生み出され受け継がれてきたのである。」はじめに、より、p.8

言語の絶滅が激しい地帯を「ホットスポット」と呼ぶらしいが、20カ所以上確認されているという!
著者はナショナル・ジオグラフィック・ソサエティからの助成を受けて、これらのホットスポットの現地すべてに赴き調査をしてきた。
その活動は2008年に「The Linguists」としてドキュメンタリーにもなっている。
http://www.ovguide.com/the-linguists-9202a8c04000641f800000000b3c7ef9

風景と言語とのつながり。

言語がその土地の地理を反映していくこと・・・つまり文法にも及ぶこと。57

(例えば、トゥパ語の「行く」という言葉は上流の方に向かうか、下流に向かうかで異なっている例をあげている 。また、「赤」という色も抽象的な表現はなく、どの家畜のものかによって異なる。)

風土は人間の経験ともそして言語とも結びついているのだ。

donggur(正確には書けていないいないが、ドゥーングルと読みは表記されている。)という言葉は、「家畜化し、人を乗せられる去勢されていない三歳の雄トナカイで、初めての交尾期を迎えたが、まだ後尾の準備が整っていない」という。63
知識が言語として記号化されている。

ユピクの人々は、99種類の開票の刑場を識別し、それに呼称をつけている。

北極圏の気象状況に関する比類なき知識の宝庫。84

氷が形成されるまでの動き、その外見、質感、氷上を歩けるかどうかの安定性、季節や時期、狩猟に役立つか、食用になるものが見つかるかの可能性。86


http://www.conservation.org/global/japan/news/Pages/ThreatenedLanguage.aspx

チリのマプチェ族は2005年8月12日にMicrosoft社に対して「知的財産侵害」を訴える書簡を送った。M社はマプチェ族の言語によるウィンドウズOSを作っていたのだ。それに対して、「わたしたちの文化の基本的部分としてのわたしたちの民族言語を研究者、言語学者、公人が先友することは、わたしたちの文化遺産に対する固有不可分の権利を侵害するものである」と主張したのだ。94

(以下のサイトでは、別の解釈が書かれているけれど。)
http://www10.gencat.cat/pres_casa_llengues/AppJava/frontend/llengues_detall_print.jsp?id=260&idioma=13


これらの言語を話す人達は、優勢な言語話者から友好的に扱われるわけではない。
そして、言語は、ある人があるグループに所属することも示す。

わたしたちにも理解できるはずだ。

日本では標準語を広げるために「方言」を学校で禁止した。公的な禁止のゆえに、わたしたちの社会は言語的差異に対する「差別」を学んだのだ。差異が優劣の衣を着せられた。言語とその言語のグループそのものに対しても。

ばかな話だ。

それぞれの言語は独自の数え方を持っている。十進法が高尚なわけではない。210

言語は人間を集団につなぎとめることで社会を成り立たせている。
民族のアイデンティティや帰属を示すしるしとなる。
言語は世界を知るための土台となる。
強制されて言語を放棄せざるをえなくなったら、それは暴力以外の何ものでもない。
それは歴史の、創造性の、知的財産の抹消を意味する。
受け継いできた言葉を守るのは人間すべてに与えられた権利だ。
多様性を認め、称えるようになれば、わたしたちはこの権利を守る力になれる。211


言語には言語転換の時期がいつかも残されている。独自な語彙の分野がどこにあるか、何であるかが、出自を語るのだ。270


2010年、ひとつの言葉が消えた。
http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2010/02/post-777d.html

2008年になくなったマリー・スミス・ジョーンズも最後の話者だった。
http://ja.wikipedia.org/wiki/マリー・スミス・ジョーンズ
ジョニー・ヒル・ジュニアは、消滅の危機にある米国先住民の言語、チェメウェビ語の数少ない話し手だ。
http://nationalgeographic.jp/nng/article/20120621/313414/index_sp2.shtml

ネバダ州のワショ族は白人が来てから、子どもたちは寄宿学校に入れられ、言葉を選べなかった。
http://articles.latimes.com/2007/sep/21/local/me-washo21

いま、彼らは、編み籠を教える時などに言葉も伝統もいっしょに教えようとしている。305

道具も、籠の種類も、言葉とともにある。

ワショ語でしか伝わらないこと。それはジョークだという。
そして英語が便利なのは、怒りの表現だと。

うんうん、わたしも「ガッデム」とか英語って便利だなあと思ったよ。

言語の消滅に伴って消えゆくもの。

last words, final thoughts Bernard Perley in
The anthropology of extinction : essays on culture and species death
https://books.google.co.jp/books?id=nLk-XSjSQL8C&pg=PA127&lpg=PA127&dq=last+words,+final+thoughts&source=bl&ots=7W3zvHqEaF&sig=Jn__SXQ24nJnQVyAcAsxfjcanoU&hl=ja&sa=X&ei=yWQFVar4LKOwmwX68oGoBQ&ved=0CDQQ6AEwAw#v=onepage&q=last%20words%2C%20final%20thoughts&f=false

『消えゆく言語たち』
――失われることば、失われる世界
http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/4-7885-0763-3.htm

言語の消滅も、「文明災害」なのではないか。
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by eric-blog | 2015-03-15 20:08 | ■週5プロジェクト14 | Comments(0)