318-3(1374)狙われた「集団自決」 大江・岩波裁判と住民の証言
栗原佳子、社会評論社、2009 第二次世界大戦争中に、渡嘉敷島の戦隊長だった人が、大江健三郎さんの『沖縄ノート』『太平洋戦争』の記述とその出版社である岩波書店を相手取って、名誉毀損の訴えを起こした。 この本は大江・岩波裁判を支援する会の人が書いたもの。 裁判そのものを書いたというよりは、1963年生まれの内地人が、沖縄の真実にせまろうと取材した内容が中心。まさか、教科書検定問題に発展するとは思っても見なかったと、後書きに言う。 沖縄戦の真実そのものが梅澤さんら原告の訴えによって、「狙われた」。「沖縄プロジェクト」。 2005年8月5日 提訴。 2006年3月 山川出版「日本史B」高校歴史教科書から「日本軍の島民に対する残虐行為・集団自決の強要などが生じた」記述削除 2007年3月30日 高校歴史教科書検定によって、「集団自決」削除・書き直しを求められた教科書確定。 2007年12月訂正申請で「軍の関与」復活。 2008年3月28日 大阪地方裁判所、原告の請求棄却 2008年10月31日 大阪高等裁判所は控訴棄却 2008年11月20日 「検定意見の撤回と訂正意見勧告を求める要請書」 2009年1月29日 2009年度教科書において「日本軍の強制という記述復活断念の記者会見。実教出版、東京書籍。 2009年2月26日 教科用図書検定調査審議会検定手続きに「申請図書や訂正申請などの情報が流出した場合、審議を一時停止する」ことを盛り込む。 なんという倒錯した年表であることか。なんという倒錯した検定手続きであることか。 戦争で起こったことについての批判や反省や、そこから学ぼうとする姿勢を「自虐」だという国に、世界との共生の未来はあるのか? 皇軍の将校であった人が、一敗地にまみれる。そのことを引き受けずに一軍の長であった人とは何なのか。理解に苦しむ。戦いとは勝つこともあるし負けることもある。という言い方は比喩的だが、負け方の問題でもあるよね。 ま、「南の島に・・・」なども読んでいると、長の立場の人が職業軍人であったわけでもないことはわかるけど。 いま報道される戦争の姿が多様化していて、軍人、民間人の区別がなくなっている。第一次世界大戦などを経て、合意されてきた戦時国際法も、役に立たなくなってきている感がある。 が、しかし、わたしたちは「ジュネーブ条約第四条」に謳われた精神に基づいて、見つめる、見つめなおす、再び同じことを繰り返さないことを確認できる、確信できるように育って行く、子どもたちを育てて行く義務がある。国際社会に生きる者として。 「文民は戦闘対象から除外され、保護される権利を持っています。いかなる時も基本的人権を保障され、人間として尊重されます。特に児童とその母親(妊婦及び 7歳未満の幼児の母)、及び女性は特別尊重の対象とされ、あらゆる暴行、暴力から保護されなければなりません。もちろん男性といえども、あらゆる略奪、虐 待、及び科学的実験の対象になる事などから保護されます。」http://www4.ocn.ne.jp/~tishiki/junebujouyaku.html 「生きて虜囚の辱めを受けず」とは戦陣訓であり、民間人に及ぶものであってはならない。まして、戦陣訓そのものが「ジュネーブ条約」の精神を伝えていないものであったということも、十分に、しっかりと指摘され、共有される必要がある。 (ホント、「カウラの大脱走 20の扉 あなたは生き延びれるか」のアクティビティを年配の方とやっていると、骨身に染みているのだな、この人たちは、と思います。このフレーズを言われる時、「いや、わたしは捕虜として生き延びる権利がある」ということばを発し得ないのですよ。アイゴー!) 人権思想が、皇軍にあったのか? もし、なかったのであれば、わたしたちは、学びなおす必要があるのであり、美化することが自虐から逃れる道ではないのです。 島民の1/4、十万人の犠牲の上にまだ戦時に置ける人権を学ぶことのできない人びとがいる。いまだにこの国は「戦後」を生きているだけだ。 さて、民主党政権は教科書検定制度にどのような態度で臨むのだろうか。
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