かくたです。
2003年11月26日配信 未来型コミュニケーションが必要とされるゆえんを説いたような論文ですね。 ----------------------- 26-2(106) 敬語で解く日本の平等・不平等 浅田秀子 講談社現代新書、2001 身分差・階級差が厳しく決まっていた前近代において、すでに日本人は上下の交流に より互いに対等な認識に立ちえていたのであるから、敗戦後のGHQ主導による普通選 挙・財閥解体・農地改革などの施策により、身分差・階級差が制度的実質的に消滅し た民主主義の現代にいたって、全世界に類をみないほどの平等観が達成されたのは、 ,,,これは歴史の当然の帰結であった。,,,一方、われわれが容易に不平等を認めてし まうのも、,,,当然の心性といえるだろう。157 言葉が通じるかどうかが境界。 日本の上流階級が自分たちの仲間と認め、下層階級といえどもコミュニケーションし て理解しなければならないと思ってきたのは、,,,日本語の通じる「日本語人」だけ であった。 162,,,それ以外に対しては残虐 その背景となる「日本語人」のくらしと感覚 「日本語の社会で最も古く根源的なのは、人々が近いか遠いかを軸にして人間関係を 考えること」(大野晋、日本語練習帳)166 遠くの存在に対して「ウタフ」とていねいになる。170 そのウチソト感覚が上下関係に。172 祝詞という形式で、下手に出て、ていねいに言う=「訴える」ことで、聞き届けられ る。174-179 上位者と下位者がコミュニケーションするというのは、 ・質問に対する応えの場合(上位から下位へ質問し、下位が上位に応える) ・命令をそのまま聞かない場合(口答え) ・命令をきかないことについて訴える、あるいは申し開きする(依頼) 180 日本では形式が整えば整うほど、相手に高い敬意を表わしたことになる。185 日本の上位者は、下位者が形式にのっとり敬語を使って申し開きをしてきたときには、 それを聞かねばならない。188 「問答無用」というのは、申し開きを聞いてしまったら、相手を殺せなくなるから。 188 日本語の敬語は、自分と相手の上下関係を言語によって表明する役割を持っていたの だが、実はこの原理は、社会言語学者の鈴木孝夫氏が親族名について打ちたてた理論 をそっくりそのまま適用できる。193 ・下位者が上位者について使う尊敬語が、直接明示的に上位者を確認し、間接含意的 に下位者が確認される。 ・自分の行動について使う謙譲語が、直接明示的に下位者を確認し、間接含意的に上 位者が確認される。 ・自敬語=上位者が自分のことについて ・命令語=上位者から下位者 つまり、上下の間で敬語を使うということは、相手と自分との身分・階級差を遵守す ることにほかならず、それを,,,直接明示的・間接含意的にそれぞれ4通りの方法で 確認している。194 階級遵守語から礼儀語へ 前近代の日本人は、階級遵守語、礼儀語、自己品位語の3つの敬語をたくみに駆使し て自分と相手の身分・階級を確認し、しかも上下の活発なコミュニケーションを行っ て、円滑な社会運営を行ってきた。201 日本語の敬意表現は、敬語に依存しているから、英語など敬語のない言語でコミュニ ケーションすると、「敬語」が含んでいた意味を言語化することを忘れて、直接翻訳 だけしていしまう。ぶっきらぼうに聞こえることになる。「−−していただけますか」 はPleaseなどが必要になるのに気付かない。217 「名前に−−君、--さんをつけて呼ぼう」としたところ、人間関係を尊重する雰囲気 に変わって行ったという中学校での取り組み。220 良好な人間関係はいかに多くのソトの人を持つかにかかっている。221 気心のしれた友人が少数しかいないのは当り前であって、乱暴なののしりは「ウチ」 でしか許されない。「ウチの関係」の拡大では良好な人間関係にはつながらない。 ・まず自分の不安を克服すること ・まわりを味方で固めなくても大丈夫なだけの確固たる自我を確立すること そうすれば、少数のウチ以外の人は大切なソトの人間として丁重に扱わなければなら ないという気持ちになるだろう。221 日本の未来はわれわれの使う敬語にかかっている。223 現代の「上位者」が「下位者」の意見反論を聞く耳を持たないのは、,,,彼等が真 の上位者でない証拠である。223 民主主義の世の中とは基本的に上位者不在の世界である。ならば下位者も不在になら なければいけない。223 言うべきことがあれば丁重な言葉と態度で敢然と勇気を持って言うのが、ともに社会 を 担う者の責任ではないか。224 役職のうえでの,,,「上位者」とは階級遵守語を駆使して打々発止と議論を戦わせ、 一方、見知らぬ人や対等な人どうしは礼儀語を駆使して良好な人間関係を構築する。 225
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| 2004-08-16 16:08
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