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私は誰になっていくの? アルツハイマー病者からみた世界

302-3(1348)私は誰になっていくの? アルツハイマー病者からみた世界
クリスティーン・ボーデン、クリエイツかもがわ、2003
Who Will I Be When I Die? 1998

46歳でアルツハイマー病と診断されたオーストラリア在住のイギリスとオランダのルーツを持つ女性の体験記。書きながら、イギリスとオランダという二つの文化的背景、二言語で育ったことについて著者自身が言及しているのに、「混血」という概念がびくともわたしの脳裏に浮かばないことに驚いた。「ハーフ」や「ダブル」「ミックス」も、出て来なかったなあ。なるほどなあ。

さて、本題。

科学情報局というような政府機関で重要なポストにつき、20人ものスタッフを抱えて、忙しい毎日を送っていた彼女。偏頭痛は常のことであったので、薬も飲んでいた。異変の自覚症状というよりは、偏頭痛やストレスのせいだろうと、治療を求めて診察を受けた。MRIなどの精密検査、三ヶ月にもおよぶ「他の可能性」の排除の結果、アルツハイマー病と診断された。1995年のことだ。厳密には前頭側頭型痴呆という分類らしい。

人間の人間的な部分、記憶が失われていく。エピソード的な記憶ではなく、現実の一瞬前のことだ。何をしていたのか、何をするつもりだったのか、何をしなければならないのか。それらのことがどんどん失われるために、何をするにも集中を維持するために極度な緊張が必要になる。

「自分がなくなる」恐怖なのだと言う。しかし、著者は信仰によって「魂がなくなることはない」という確信を得て、「違う自分を生き直していこう」という心境に至る。

なんと1998年、この手記を完成させた後に、再婚もされている。病を知った上での結婚だった。国際アルツハイマー学会で講演をするなど、活発に活動を継続しているようだ。
http://www.christinebryden.com/christine.php?text=1&translate=

日常生活の苦労は、ほんのちょっぴり、ふれられているだけだが、工夫と笑いに満ちていることが伝わってくる。そして、彼女自身、「病気になってからの方がいい人になったみたい」と。

そうだろうなあ。超多忙な執務の中では、三人の娘たちに配慮することだけでも手一杯だったようだし。

この本の執筆にもつながるが、この達成意欲の強さはどこから来るのだろう?

資源を活用しないことは神への冒涜というような宗教観が近代への道筋で生まれた背景について書いていたのは『言語と国家』だったか。

キリスト教という信仰に1992年に出会っていたことが、いまの彼女を彼女たらしめていることは確実だ。

第二作は『私は私になっていく』

扉を開く人 認知症の本人が語るということ

クリスティーン・オブライデン、クリエイツかもがわ、2012

監修永田久美子

日本での講演会やこれまでの記録などを日本人の著者らが再構成したもの。

当事者発信が生み出しつつあること

・医療が変わる

・ケアが変わる

・地域が変わる

そして、当事者たち自身がクリスティーンさんに勇気づけられている。


■私の記憶が確かなうちに 「私は誰?」「私は私」から続く旅

クリスティーン・ブライデン、クリエイツかもがわ、2017

Before I Forget, 2015

1995年にアルツハイマーと診断されるまでの彼女の人生について「覚えているうちに」書いたもの。20年間もアルツハイマー病の進行とこうしながら生きている今も描かれている。


病気が診断されてから3年後、1998年、快復を感じた彼女は結婚相談所を通じて相手を探す決断をする。それがケアテイカーとなったポールだ。

物語の後半はポールとの家族の物語だ。そして、その間、彼女は日本にも来ている。


脳の健康を保つための5つの簡単な心がけ。

・心臓病に気を付ける・体を動かす・脳をよく使って知的な挑戦をする・健康な食事・社交性


そして、とても具体的な日常生活についての彼女からのアイデアが。



by eric-blog | 2009-07-08 09:55 | ■週5プロジェクト09
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