コトバ、言葉、ことば

52-2(216) 川田

複数の論文のまとめなので、それぞれの論文名を書かないとわかりにくい面もあるけれど、引用箇所のみ。
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日本語は、やまとことばに漢字を取り入れたわけだが、川田は次のように指摘する。38-39「やまとことばがそれ自体で十分成熟しないうちに、漢字を無節操に取り入れ、それに寄りかかりすぎたために生まれた病弊の一つに、同音異議語の氾濫=反乱がある。」「語としての意味を先行させ、分節的な意味表現力、造語力の大きい漢字を奈良平安以来大量に導入し、明治以降は一万語とも言われる西洋語の訳語を漢字の造語力に頼って製造しし、数え方で多少変わるがせいぜい120位と音節(モーラ)の種類が極めて少ない日本語でそれに読みをつけたからにほかならない。」39

おもしろいこともいろいろとある。2つあげると 40
・音、文字、意味の異様な自在さ
・漢字の象形性、表意性、およびそれによって多分に二次的に形成されうる漢字の図像象徴性の、やまとことばの側からの恣意的な利用

記号=「イコン(写像)」「インデックス(指標)」「シンボル(象徴)」(記号論の先駆者パースによる)
このパースの三分類と、漢字の原理「六書」とを交差させて検討する。48
六書とは、象形、指示、会意、形声、転注、仮借=図像表意性・表音性の原理=

川田は、言語のこれからを「自分が幼時から馴れ親しんでいると思っている言語を、それ以外の言語を覚え、使うことによって異化し、ことばによる自己表現にダイナミックな創造力を、ひとりひとりが、たとえ作家でなくとも、日常の言語活動に吹き込む。」情報化、地球化した言語の未来として夢想するという。91

母語の絶対化の幻想をアフリカ、マリの言語調査から示しつつ「柔軟、自在、マジョリティによる自己主張や押し付けのない言語状況が、このアフリカの古来の交易都市にはある」という。93

「文化の三角測量」として提唱してきたように、言語についても「東」「西」「南」を加えた視野が必要。そしてできれば元来文字をもたなかった言語を、...そのことばである程度自己表現ができるぐらいまで、希望者が学習できるようになれば...94

メッセージの発信、受信の4つのレベル
(イ)シンローグ(協話) 三人以上の発話者による、撚り合わされた言説(川田による造語)
(ロ)ポリローグ(複話) 2人以上の者が、同じ場を共有しながら、明確な意図はもたずに、発話。
(ハ)ディアローグ(対話) 相互にメッセージをやりとりする
(ニ)モノローグ(独話) 自己回帰的伝達、非相互伝達

(a)自己回帰的伝達
(b)相互伝達
(c)非相互伝達 拡散伝達

音声言語による伝達Sと文字による伝達の違いW
=知識の伝承性と反復性が重きをなす社会vs個人的な創意と伝承の改変のメッセージが、固定されて拡散・遠隔伝達される、知識の変化と蓄積が容易な社会
S=音声言語の超分節性、伝達における情動性、音象徴性、広い意味での音楽性、受信者の受動的なたどり、手の運動記憶による言語伝承の安定化
W=言語の概念化された意味作用の伝達、文字の視覚的象徴性、受信者の能動的な読み取り、メッセージの固定性、遠隔伝達性、反復参照可能性

三文化における音の世界116-117

1.人の発する音 叫び、苦痛、警告が共通にわかりやすいのに対して、泣き方、笑い方は文化の約束によって条件づけられている。
2.言語音の直接感覚=音感語
3.言語音の表音
4.言語音の表容
5.言語音の概念化された意味
6.人工音(楽器、道具、手拍子)
7.身体の律動
8.視覚、触覚等の感覚刺激
9.自然音

川田は、無文字社会」という位置付けではなく「文字を必要としなかった社会」としての豊かな言語環境に注目している。172
・彼等の声、ことばが個性的である。声のアナーキーな輝き。
そしてそれは「ことばを文字化し、文字を用いて画一化された言語教育が普及している社会では失われてしまった。」「言語が文字を通して規格化されれば、方言差、個人差はへって、ことばは少なくとも形式の面ではより広く共通のものとなるだろう。」172
伝えられることばの層と伝わりにくくなる層173

声には、理性を超えて、人間の生理の最も奥深い層にまで、じかに届くような力がある。243
「聞く」という行為には、声で発せられた指示への服従の意味がこめられている。243
文字に書かれたことばを...理解する行為とは、違う
話す、聞く、と書く、読むは脳神経的にも、別の系統のもの

文字を必要としなかった社会は、「無」という欠落ではなく、充足。282
人間にとって、元来言語というものが100パーセント声であり、文字は声による表現の一部分に対応させられているにすぎない

学校で文字を使って何をどう教えるか
文字化されて言語によって教えられるものは、,,,大きなマイナスの面と抱き合わせ286
「文字を必要としなかった」「学校のない」社会
文字文化と非文字文化の特性を、相互補完的に生かして行くことが大切286
声のうちでも、生物として発する声から、音感語、表音語、表容語、概念化された意味を媒介する言語へ。
生身の人間から、「について」の伝達などへ。
伝達における身体性がより希薄になること287
一人一人の個性的な声での伝達が重要な伝え合いの世界

文字を用いて「について」の知識を蓄積してきた人々が圧倒的な優位に立って、世界の主導権を握ってきた。290その中での学校のあり方がいま問われている。

いまの学校における「同年齢者が強豪的な関係の中に閉じ込められていることの重圧」293
など、「学校のある社会と学校のない社会」についての対談を踏まえた最後の論文は示唆に富んでいる。
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by eric-blog | 2004-08-13 17:41 | ■週5プロジェクト04 | Comments(0)
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