かくたです。
2003年11月4日配信 いま、懐かしいオランダの知人から電話がありました。すごいですね、インターネッ トで検索したのだそうです。1986年の時知り合った人です。 ---------------------- 23-3(87) セラピストの物語/物語のセラピスト 小森康永、野口裕二、野村直樹 日本評論社、2003 セラピストが、自分の治療法に影響を与えた一冊の本を紹介し、その本の影響を受け たと思われる事例とその治療法について紹介しているもの。これまでの臨床例の報告 が、専門用語を使った「事例紹介」のフォームによって、セラピスト不在の書き方に なるのに対し(しかもつまらない)、臨床はセラピスト個人の関与なしではなりたたな い関係性なのではないかという問題意識から作成された。 科学者の立場から書かれたものに信ぴょう性がなくなってきた。4 書くことは科学の世界にとっては記録、しかし、書くという営みはそれ自体行為とし て完結したもの。出来事の一側面を語る部分的真実。 科学もひとつの大きな物語であって,,,一方で人々はまだ他にも拠り所となる物語が ありえて、それらを選択できることに気づきはじめた。 「大きな物語」(ドミナント・ストーリー)を、書く方も書かれる方も共有している。 むしろ、物語形式が最初にあって、すでに始まりと終わりが想定され、そこから現状 が何たるかを解釈してきたのだ。7 エスノグラフィーは物語(ナラティブ)である、そして人類学者はその語り手(ストー リー・テラー)であるBruner, Edward、1986 「物語られたことは情報にはないような振幅を得るのだ」Benjamin,1936「物語作者」 解釈の幅が物語りにはある。 情報は即座に検証可能であることを要求するし、「それ自体で理解できるもの」。情 報はこの瞬間にのみ生きている。物語りは、みずからを出し尽くしてしまうことがな い。 語り継がれるにつれ、テクストと解釈の間の往復をとおして幾重にも意味を重ねてい く。 以下、参考文献と事例など。 『べてるの家の本−和解の時代』1992 北海道にある「べてるの家」は、心の病の当事者の生活が出発点。病と苦労を排除す るものでなく、必要なものとみなす。その過程を「順調」だと認めること。「健常」 に合わせるのではなく。 『The Resilient Self: How Survivors of Troubled Families Rise Above Adversity』, Wolin, Steven&Sybil, 1993『サバイバーと心の回復力−逆境を乗り越 えるための7つのリジリアンス』金剛出版、2002 1980年代の「ダメージ・モデル」の大衆文化への広がり。「サバイバー=犠牲者」と いうイメージ。治療者の役割は害の修復を援助すること。悲観主義。ウォーリン夫妻 は逆境が訪れた時にそこから立ち直る自分たちの能力=チャレンジ・モデルを提唱。 危険と機会。サバイバーにある対立する感情を探す。ダメージの刻印を受け入れ、よ く生きることで報復する、悪循環を断ち、過去を水に流す。 リフレイミング=古いストーリーの中に隠れた新しいテーマを探し、明らかにする。 7つのリジリエンス=洞察、独立性、関係性、イニシャティブ、創造性(秩序、美し さ、目的)、ユーモア、モラル(よい人生を送りたいという希望を全人類にまで拡大し ていく意識) 『Uncommon Therapy: The Psychiatric Techniques of Milton H. Erickson MD』 Haley,J.1973『アンコモンセラピー−ミルトン・エリクソンのひらいた世界』二瓶社、 2001年 著者は戦略的家族療法の担い手。「治療中に起こる出来事には治療者に責任がある」 「コミュニケーションは相互関係を来ていしようとする策略である」「『催眠』は二 者関係における特殊な相互作用。「抵抗」「さらに悪い選択肢」「メタファーによる コミュニケーション」「挫折」「再発」「プラス面の強調」「種まき」「わずかな変 化を拡大」「健忘と情報の制御」「解催眠と阻隔化」などの技法。 『家族療法−システムズ・アプローチのものの見方』吉川悟、ミネルヴァ書房、1993 円環的的因果律=「ものごとには原因も結果もない。それはものの見方次第なのだ。 原因を追及すること自体に治療的な意味はなく、治療にとって必須なことでもない」 「家族の関係性や力動を利用して、家族システムに変化を引き起こす」「エナクトメ ント」「逆説介入」「円環的質問法」などの技法がある。しかし、この吉川の本には 技法の説明や名前は出てこない。「技法を使おうと面接を行うのではなく、いかにし て治療的なやりとりを続けるかと配慮しつづけた結果、後からふりかえれば、やりと りの所々を「技法」として取り出すことができるに過ぎない」。「見立てと見立てに 合わせた技法を検索する介入者としての私の都合」ではなく、徹頭徹尾「ものの見方」 を意識すること。自分の持っている仮説を意識し、やりとりを意識する。「面接中の すべての相互作用は治療者の責任である」 『Narratives of Therapists' Lives 』White,Michael、1997『セラピストの人生と いう物語』 ナラティブ・セラピーのムーブメントの中心人物による家族療法の本。「ドミンナト・ ストーリーを脱構築する」段階ではなく、「オルタナティブ・ストーリーを分厚くす る」段階について踏み込んで議論したもの。 「リ・メンバリング」=水からの人生をクラブに見立てて、サポートグループを立ち 上げていく。 『ナラティブ・セラピーの実践』ホワイト,D.、デンボロウ,D.、金剛出版、2000 「共同研究」=安全確保のためのガイドラインを作り、協力してもらう。例えば、自 傷行為を行った若者たちと共に取り組むことで、「自己虐待」という名称で自傷行為 が説明され、そして、「どんなことが起こっているだろうか」というような問いによっ て、「セルフケア」の工夫をみずからも身につけることができていく。共同作業の有 効性。アンケートによる相互作用も活用。 『忘れられた日本人』宮本常一、岩波、1984 「教えてもらう」という基本的姿勢による共同作業。 『精神の生態学』ベイトソン,G.、思索社、1990 関われば関わるほど「問題」が増幅。「問題」をかえって維持してしまう「指導」と いう名の二重拘束的コミュニケーション。 「学習とコミュニケーションの階型論」1971=「魔術を行うものは、自分の魔術が功 を奏さなかったといって、出来事への魔術的な見方を崩しはしない。」「学習」を論 理階型理論によって理論化。学習現象「学習I」「学習II」「学習III」という3つの ヒエラルキー。「学習I」は心理学の実験室的学習。古典的条件づけ。 「学習II」事象のまとめ型、統覚の習慣。習慣の形成。「すべての生きたシステムは 「適応」の能力があり、その「環境にあわせて変化する能力」にはフィードバック回 路の存在が前提になる。」(フィードバック回路をもつシステムをサイバネティック スという)学習IIは、適応のための試行錯誤の不経済を減らす。「学習IIの学習内容 が、このようにそれ自体を妥当化するはたらきをもつ結果、このレベルの学習は、一 度なされてしまうと、根本から消しさることはほとんど不可能になる」 「学習III」とは、この変化しがたい学習IIの変化を意味している。身にしみついた 前提を引き出して、問い直し、変革をせまる」 『Aesthetics of CHange』 Keeney,Bradford、1983 ベイトソンのよき解説書。「関係性のパターン」に注目する。個々の人間がもつ属性。 「サイバネティックス相補性」=サイバネティックなシステムが自己修正できるのは 差異、あるいは誤謬がきっかけとなる。治療者の役割とは、その誤謬をランダムなノ イズとしてシステムにうまく導入すること。治療的危機状態を作ること。「犠牲者を 含む形で偽りの安定性を保っているシステムが変化し、別のもっと機能的な安定性を 得る」変化の結果がどのようなシステムであるかはあらかじめはわからない。 患者の多くには家族・友人などの人間関係が大きく影響している。 「いくら道具を上手に使おうとしても、それを発明した人と同じように使えるはずは ない。自分の人生の物語を知っていること。理論と臨床のギャップを埋めてくれるの は、自分という体験」167 「語りから何が読み取れるか−精神病院のフィールド・ノートから」野村直樹、文化 とこころ第2号3巻、1998 自らの解釈は「数ある可能性のひとつ」。治療者の解釈を書き、当事者から書いても らうという共同作業を進める。家族の場合、それぞれの解釈がまるで「薮の中」のよ うに語りあわされ、ずれ、反発する。共同作業により「さまざまな解釈の可能性」の 検討を了解する。自分を対象化できる。のかな。往復運動の治療的効果。 『「声と身体」の語らい』豊永武盛、金剛出版、2000 精神科臨床のためのパスウェイガイド as a person as a dual system as a family/group as a social マズロー 心身を整える 生理的欲求 遊ぶ寛ぐ楽しむ 愛情の欲求 思いを伝える 所属の欲求 学ぶ 尊敬の欲求 役割を取る 自己実現の欲求 日本語や心理劇など言葉の大切さ。 『児童精神医学』カナー著、医学書院、1974 「症候」 1.入場券としての症候=芝居の内容とは無関係。子どもの問題行動そのものは入場 券のように、それが問題なのではない 2.信号としての症状 3.安全弁としての症状 問題階決手段として 4.厄介物としての症状 問題行動が厄介であればあるほど、早期に治療の機会が 恵まれている 「なぜ、そのような行動を必要としているのか」「どのような葛藤をこうして解こう としているのか」「どのようにしたら、もっと正しい方法で助けてやれるだろうか」 という「問題行動」の捉え方の枠組みの転換。 全体として、共同作業、コミュニケーション、脱学習と再構築という学習、など教育 に通じることが多いと感じた。臨床心理学の世界もずいぶんと変化してきているのだ なと思った。
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