Kagan Structure ケーガン教授法

かくたです。長いです。
                         2003年10月2日配信
PGL会議でのケーガン博士のワークショップと講演の構成的まとめです。

基本的に、手法をクラスルームで活用することは自由ですが、一般的な著作権の扱い
方同様、「書いたもの」を出版する際には、Kagan Publishingからの文書による了解
を得る必要があるものですので、転送・転載などはしないでください。

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Kagan Structure

2003年9月26日18.30-20.00ワークショップ「平和教育と構成的教授法」

2003年9月28日11.00-12.40基調講演「人格教育と構成的教授法」

訳については関田一彦さんの翻訳された「ケーガン博士の構成的教授法」参照。

■Kagan Structure ケーガン博士の構成的教授法

ケーガン博士が「structure」(指導工程と関田一彦さんが用意した翻訳ではなってい
る。以下、訳語はすべて関田による)というのは、まさしく協同学習の事細かに定め
られた指導手順のことである。基本的にはウォームアップ、作業内容の指示を出し(
インストラクション)、作業を行い(エクササイズ)、そして共有する(シェアリングす
る)という工程である。協同学習cooperative learningというのは、グループやペア
による学習作業を活用した教授法であるが、それが単に「学習結果」につながる協同
作業であるだけなのか、それともその教授法自体によっても教育目標が達成されるも
のなのかが違ってくるという。いわば狭義の協同学習という分野をなしている。
特に、構成的教授法は、学習内容にかかわらず、この教授法で教えることで、以下の
4つの目標が達成できるものである。あるいは、以下の4つを達成するために、さま
ざまな類似のアクティビティやワークがある中から、ケーガン博士が練り上げたもの
だという方が当たっているだろう。それがせにぃとという基本原則である。

P positive interdependence 互恵的相互関係(→積極的な関わり合い)
I individual accountability 個人の責任(→各人の説明責任)
E equal participation 平等な参加
S simultaneous interaction 活動の同時性(→同時並列的活動の展開)

つまり、前向きで積極的な相互作用と、しかしながら各々がちゃんと聞き、理解して
いるかどうかの確認(理解責任・参加責任)がある、時間だけでなく、肩書きや関係性
においても平等な立場で話し合いができるように配慮された、学習者一人ひとりの活
動時間が最大に保証されるように、グループ作業を考えられたもの、それが「構成さ
れた」教え方であるということになる。

■ストラクチャーとは何か
全部で200ほどのストラクチャーをケーガン・ストラクチャーは有している。ストラ
クチャーの名前がかわいい。指導者育成のためなのか、かならず、「ストラクチャー
名」そのストラクチャーで何をしようとしているかの説明、そして作業の仕方と作業
時間の確認、で「Go」の繰り返し。
平和的な相互関係がストラクチャーの作業の基本である。また、帰納的、演繹的思考
や高度な思考力につながるようなストラクチャーもある。多重知能の8つの能力にも
対応したストラクチャーもある。あるストラクチャーは、限られた目標に適し、ある
ストラクチャーは幅広い能力や目標に対応する。
また、ストラクチャーは、「(~~について教える)学習的アプローチ」と「習得的アプ
ローチ」と分けるとすると、習得的アプローチacquire approachであると言える。あ
るいはformal approach vs natural approachと言うこともできる。

■ストラクチャーの具体例
ワークショップおよび講演会で活用したストラクチャーは以下の通り。
・LIne-up ストラクチャーかどうかはわからないが、ヘテロなグループを作るた
めに、まず順番に並び、端と端を組み合わせていく方法で、4人一組になるようにし
た。
・Team Interview 一人が立ち上がり、残りの3人が質問する。質問は「open-end
な質問で(Yes,Noで簡単に終わってしまう質問ではなく)」「話し手の話したい内容を
深めるfollow the lead of the speaker」インタビューされる側は「積極的
にpro-active」そして聞かれていないことでも話していい、という三点(4点?)を心
がける。(この4点の指示の出し方は早速英語討論の時に使えた!)「立つ」ことで
「力」を話し手に与えている。そのことで人間関係のヒエラルキー上下構造がくずさ
れ、平等が達成されていく。だから必ず立つこと。
・Rally Robin 二人一組で、いくつかのポイントを必ず順番に上げたり、確認し
たりする。確認というのは、それまで出されたポイントを二人で協力して思い出して
いく感じ。「各人の責任」の要素が強い時と、ブレーンストーミング適要素の強い時
の使い方があるようだ。
・Round Robin rally robinのグループ版。輪番発言法。
・Timed-Pair-Share 傾聴みたいなもの。同じ時間ずつ、話す、聞く。"I enjoyed
listening to you, because...."で一人目は返し、そして二人目は"I thought you
are toughtful and intelligent, because...."で返す。
・3-Step-Interview 4人一組の中のペアが、お互いをインタビューし、グルー
プに対し、他己紹介を行う。
・Paraphrase Passport 前の人の言ったことを言い替えて、それがオーケーだっ
たら「パスポート」を渡し、渡されてから自分の意見を言う。自分の言ったことが伝
わっていないと感じたら"I dno't think I got my point straight. Let me
explain..."と介入すること。
・Corners 4つのコーナーのやり方だが、それぞれのコーナーに分かれてから、
その中でrally robinを行い、意見交換する。さらに、一つのコーナーから何人かに
発表させ、どんな意見が出たかをさきほどのrally robinのペアでrally robinする。

■ストラクチャーの教育的効果(資料より)
・チームの和づくり
・学級の和づくり →学級風土づくり
・知識・理解の定着
・高次の思考能力
・情報共有技能
・コミュニケーション技能

■協同学習の効果
このようにPIESの原則を満たす協同学習は、以下のような平和教育にかかわる教育的
な目標を、教授法そのものによって満たすことができる。

1.人種関係 race relations
2.躾の問題 discipline problems
3.社会関係 social relations
4.紛争解決のスキル conflict resolution skills
5.思いやり empathy
6.自尊心 self esteem
7.協力とチームワークのスキル cooperation/teamwork skills
8.暴力の防止 violence prevention

実際にワークショップで体験してみて、4.については、扱い方まではいかないが、
暴力防止のように、対立の防止にはなる。7.もスキルが身につくというものではな
く、協力とチームワークそのものを体験することができるし、応用することができる
ようになるかもしれないということ。すなわち、PIESを本人が心がけ、この作業工程
を実践することができるようになるとすれば、3.4.7.は達成することができる
と言えるものであるし、1.2.5.6.8.は、この方法で活動している限りにお
いては、学級でそしてひいては学校で実現できていくものだろう。だから、日本で実
践する場合であれば、以下のものが副次的に達成できる教育的目標であると言えるの
ではないだろうか。
1.自尊心
2.思いやり
3.自律[的参加の態度](躾という言い方がいやだ)
4.良好な、平等な、対等な人間関係
5.暴力の防止
さらに、人間関係スキル、対立解決のスキル、協力やチームワークのスキルの基本が
身につけられる。

■平和教育の5つのアプローチと構成的教授法によって達成される副次的教育的目標
との関係について検討する

1.地球規模平和教育 global peace education 国際関係研究、ホロコース
ト研究、核教育(わけのわからんくくりだ)
2.紛争解決プログラム conflict resolution programs ピア・メディエーショ
ン、調停、コミュニケーション・スキル
3.暴力防止プログラム violence prevention programs DV、麻薬乱用、怒り
のコントロール、寛容を教える
4.発展教育(→開発教育) development education 人権教育、環境教育、力
と資源の平等
5.非暴力教育 non-violence education 平和活動家、ガンジーやキングなど
の伝記や哲学を学ぶ

いやーーーー、ひどい括り方だし、ひどい訳ですが、いいたいことはわかります。以
上のように教育内容で平和教育を達成しようとするアプローチを「カリキュラム内容
によるアプローチ」と呼び、ケーガン博士のようなアプローチを「教授法アプローチ」
と呼ぶ。教育内容はなんであっても、教科がなんであっても、教授法アプローチは、
平和教育の目標も達成することができる。

「平和についての教育」 戦争、軍事、安全保障、持続可能性
「平和を通しての教育」 対立解決、暴力防止などのスキル
「平和のための教育」 非暴力主義者、平和活動、市民性教育
という括り方などを、わたしならばしたいところだなーーー。しかし、これでは、
「教授法アプローチ」とカリキュラム・アプローチの違いを強調できないね。

さきほどの8つの目標で平和教育ともオーバーラップするものが達成できるという訳
です。いい説明です。わたしたちはいままで、「参加型が参加を伝える最善の教授法」
と言い、「参加型はコンテンツ・フリー=どんなテーマにも応用が可能である」とい
うことを言ってきました。また「内容と方法の組み合わせ、コンテンツとハウでアク
ティビティができる」ということも言ってきました。同じことを彼も言っているとい
うことです。PIESというのがいいですけれど。たぶん、これはケーガン博士のオリジ
ナルではないと思いますが。どこかで見たことがあるので。
いずれにせよ、協同学習、参加型手法についてのルーツ争いはなかなかに特定しがた
いものではあります。

■人格教育と構成的教授法 基調講演
さて、ワークショップ時と同じように、協同学習的な方法を、一般的なものと構成的
教授法の二つを比べ、構成的教授法の効果を確かめるという方法で、講演会も行った。
階段教室で全員を動かして行うのだから驚いた。(昨日、大学生にもやってみたがやっ
ぱり構成的教授法でも、それだけでは動かなかった。)
現在、価値観の教育や人格教育(character education)というのが米国では強調され、
学校に求められるようになってきている。従来は、家庭や教会の役目であるとして、
学校教育でさまざまな価値を扱うことには大きな抵抗があった国であるから、これは
興味深い変化だと言える。
そして、これもまったくERICの構造と同じなのであるが、「個人」「対人」「社会」
という「わたし」「あなた」「みんな」というのと同じ枠組みで、さらにそれぞれに
5つずつの(これまた、いいかげんな括り方の)価値観をたてて、それらがどれほど構
成的教授法によって副次的に達成できるかを検討するというやり方で講演が進められ
た。
個人としての価値 personal virtues
1.勇気 courage
2.思慮分別 good judgment 判断力、見識、善悪の判断
3.誠実さ integrity 首尾一貫性、統合
4.自律性、自制心 self-discipline, impulse control
5.粘り強さ、自発的に取り組む力 perseverance, self-motivation 
対人関係における価値 relationship virtues
1.配慮、親切、礼儀 caring, kindness, courtesy
2.協力性、人を助ける心 cooperativeness, helpfulness
3.正直さ honesty
4.敬意 respect
5.共感、寛容 understanding, tolerance
社会的な価値 community virtues
1.市民性、共同社会性 citizenship
2.公正さ fairness
3.指導力、統率力 leadership
4.責任感 responsibility
5.信頼性、忠実であること trustworthiness, loyalty

■その他の小道具やアイデア
・student selector 番号ルーレットとでも言うもの。チームの中の誰が最初に
話すかなどを指定するために、ルーレットのように矢印を回転させ、指された数字で
決める。同心円で、「1.2.3」分割の円と「1.2.3.4」の円、「1.2.
3.4.5」の円があるので、3人、4人、5人のグループ作業について順番を決定
することができる。こういう小物は学習者の協力を引き出しやすい、構えを作りやす
い。
・ペアの場合、ケーガン博士が活用したのは、「髪の長い人」「手の大きい人」など、
2人で比べたり、ふれあったりするもので、先行後行を決める方法だった。
.タイマー いやーー、これは見にくかった。でも、ルーレットにしてもタイマー
にしても学習者が見れるようにしているというのはとてもいい。オーナーシップ、自
律、責任が生まれる。見えなキャ意味ないけど、意図はわかる。
?・Hand-up, Pair-up, shake-hand and sit-downで2人組を創る。指示は、なるべく
知らない人と。
・セルフ・エスティームの3つの要因「学力的セルフ・エスティーム」「同年代仲間
セルフ・エスティーム」「家族セルフ・エスティーム」
・共有の後の返し方の言葉がグッド。"Thankyou very much for sharing that.
That was very interesting, because...."とか、"Thank you very much for
sharing. You must be very nice and intelligent because...."やっぱり英語って
こういうのがいいやすいし、こういう表現があるんだよね。英語会話の授業でも
「Positiveな会話」のための感投表現を挙げて見たら、あるわあるわ。いやになっちゃ
った。日本語は貧弱で。

これはまったく、他の参加者からのアイデアだが、4人組の役割分担として
leader 司会
reader 課題を読み上げる
reporter 発表
recorder 記録
もしも5人ならばさらにtimer 時間管理
というのがあるというのが面白かった。

■私見
報告中にもコメントは入れているが、
小学校、中学校ぐらいまでにして欲しい、このような方法を四六時中使うことで、教
育的目標を達成しようとすることは。中学校からは逆にPIESをそれぞれが心がけるこ
とを中心に、教育目標が達成できるようにしたいものである。
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by eric-blog | 2004-08-11 10:50 | ■週5プロジェクト03 | Comments(0)
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