人気ブログランキング | 話題のタグを見る

事典 哲学の木

かくたです。
                            2003年7月18日配信
出版社は講談社です。哲学と言えば、当世はやりの中島善道の名前が編集委員に入っ
ていたのに惹かれて買いました。

渡辺さーーん、これを参考に、いいアクティビティ事典にしていこうねーーー!
アクティビティ事典編纂走向未来プロジェクトをたちあげましょう!

---------------------
11-3(44) 事典 哲学の木

「自由」

さて、中途半端な週ついでに、「事典 哲学の木」を紹介しておこう。これまでの事
典と違い、ある程度の固まりで、紹介しているので、関連項目がわかりやすく、幅広
い理解が得られる構成になっています。また、より読み物的でもあります。400項目。
この特徴は、今後ERICのアクティビティ事典にも取り入れたい方法だと思います。

その代わり、索引は充実しているので、これまでの「事典」的な活用も、検索を通じ
て可能。さらに、参考文献が充実しているのがいい。

で、今日は、「自由」です。ニスベットの「共同体の探究−自由と秩序の行方」では、
自由というのは、秩序の根源であるアソシエーションからの「解放」(リリース)とし
て考えられ、しかし、自由とは、アソシエーションに所属しないということではなく、
複数のアソシエーションに所属することで得られるものなのだということでした。

これはとても説得力のある議論なのですが、もう少し自由について整理しておきたい
と思います。

さすがに、事典です。簡潔に、問題点をまとめています。

「自由」という言葉の用法として、「管理貿易と自由貿易」「規定演技と自由演技」
「定型詩と自由詩」という対概念としての「自由」は規則や強制にしばられないとい
う意味=強制の不在=であり、一方、対概念ではない「自由」とは「自発性」「自己
決定」「自己責任」という概念である。

このような多義性が、「自由」についての議論の混乱を呼んでいるという。

そして、対概念的に自由を論ずる時、社会的強制や圧力から逃れて個人の自由を追及
することがどこまで可能かというのは、「平等」との関係をどう理解するかという問
題になるとこの項目の著者である伊藤邦武は指摘する。

しかし、それ以上にエキサイティングなのは、と著者は言うのだが、現在刻々明らか
になりつつある脳神経学、認知学の成果とのからみで、本当に人間に自由意志に基づ
く自己原因的な行為の選択や決定がありえるのかという後者の自由にからんだ問題な
のだという。

さらには、それは自分はどのような存在でありたいのかという決定と選択であり、し
かも、それはある瞬間の一回かぎりではありえず、試行錯誤的努力の別名だという。

えっ、とわたしは思う。「自分」を規定していく試行錯誤によって、わたしたちは自
分自身から「自由」ではなくなるのでないでしょうか。人間形成と社会形成の議論は
いつもうっすらと両義的なのですが、社会が作り上げられていけばいくほど、規制、
規則などは出来上がっていく。同じように「自分」ができていけば行く程、前回の試
行錯誤的努力の結果に縛られていく自分がいるということになるのではないでしょう
か。

わたしたちはどうやら、自分の自由意志からは「自由」ではありえなさそうな話では
ある。

今回も短うございました。そして、たぶん、今週は出張もあったことでもあり、ここ
までかな。来週も3日間出張が入っていますが。

次に読むべきなのはバーリンの「自由論」であるように思うのですが、いかがでしょ
うか?
by eric-blog | 2004-08-05 18:15 | ■週5プロジェクト03
<< Study Guide メディ... 異文化を超えて >>