医療環境を変える 「制度を使った精神療法」の実践と思想

281-8(1261)医療環境を変える 「制度を使った精神療法」の実践と思想
多賀茂、三脇康生編、京都大学学術出版会、2008

「制度」はinstitutionの訳語だという。フランス語ではpsychothérapie institutionnelle 制度的精神療法。簡単なことなのだが、医学系の書き手たちは教養が豊かなために、簡単には済まない傾向が強い。この本も400頁を越えている。そのために、まず、自分の理解の枠を提示してから、ディテールの紹介をしたいと思う。

psychothérapie institutionnelleとはフランスのラ・ボルド病院で実践されている療法で、病院という制度そのもの、環境そのものを変化させていく療法のことである。「病んだ環境では病気を治すことはできない。だからまず治療環境を治して行こう。」

92-6(432) 増やされる障害児 「LD・ADHDと特別支援教育」の本質
宮崎隆太郎、明石書店、2004
は、診断や判断の制度が障害児を増やすという視点だった。診断や判定に対して、手だてがおっついていない現状に警告をならすと同時に、児童期という成長いちじるしい時期に、健全な成長のための手だてと治療的手だてのどちらが優先されることが有効なのかも、問うた本であったと思う。

「制度を使った精神療法」が指摘しているのは、精神病院という制度そのものが治癒、治療を阻んでいるのではないかということだ。そのために、病院の環境そのものを見直す必要があるのだと。それは患者と医師の関係、医師と看護士の関係、看護そのものの制度などの見直しにつながる。診察室で患者と向きあって行うことだけが治療ではないのだと。

それは、教育の現場におけるWhole School Approachとも通じるものがある。著者らは、制度による療法の「精度分析」の考え方は、「日本社会のいたるところで閉塞しているものをあらためて流れ始めさせるために私たちがもつべき勇気のことなのである。」と「はじめに」に謳う。

制度化された学習、institutional learningを、脱学習し、再構築しようということだが、それは1960年代にすでにパウロ・フレイレが実践しようとしたことにもつながるか。

とするとinstitutional facilitationというのも、あるだろうし、正しく、ERICという場所はそのような場所を構想していたものだ。

先日の「環境デザイン・ワークショップwith Youth」で出されたアイデアの中に、「エコ・キャンバス・キャンパス」、大学のキャンパスを、持続可能性の未来図のためのキャンバスにというものがあった。実践し、実証しようとするアクション・リサーチではなく、リサーチ・アクションだ。「失敗学を学び、対策は万全」という失敗を、「大学」というところが身にまとってしまっているのは、なぜだろうか。制度的学習の分析課題は多いね。

全体環境デザイン主義とでも言おうか。内外の連携も含めて。

いずれにせよ、この本で驚いたのは、わたしにとっては『三つのエコロジー』の著者であるフェリックス・ガタリが、1955年からラ・ボルド病院に参画していたということだ。系統的に学ばないことの陥穽だね。もっと早く「制度的療法」にも出会えていたかもしれないのに。

1992年にはガタリは沖縄県うるま市いずみ病院を訪問したという。なんてことだ!!!!

ドゥルーズとともに書いた著作のゆえに、ドゥルーズ・ガタリとも呼ばれるガタリ。

今年のTESTのお題は決まったね。精度分析。
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by eric-blog | 2009-02-13 10:44 | ■週5プロジェクト08 | Comments(0)
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