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サヨナラ、学校化社会

かくたです。
                    2003年6月10日配信
ちょっとやっぱり、一日に5本はむずかしいか。これからファシリテーター・ミーティングなので、来週まで、サヨナラ。

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6-4(24) サヨナラ、学校化社会
上野千鶴子
太郎次郎社、2002

上野千鶴子さんの本は、「枠組み」に刺激されることが多々あります。特に、わたし
が感動したのは、マイノリティが共闘できるかという問題に対し、「普遍的な理論に
対する禁欲」という言い方で、安易な共闘、そして、さまざまな差異と細部の切り捨
てを問題にした視点が、人権の本をまとめている時には、参考になりました。

さて、その上野さんが書いた、ベル・フックスの「Teaching to Transgress」にあた
るような、学生とのやりとりや、学生についての観察から論じた当世学生気質とそこ
からの分析とでも言う本です。軽く、読めます。(たまには、そういうのも紹介させ
てくれーーー!)

学校的価値というのは、業績原理で「やればできる」を前提にしたもので、しかも、
それは多いに「言語化」能力と対応している、その学校的な価値が、社会的な価値や
あるいは子育てにおける価値などにまで蔓延、共通してしまっているところが、あや
うい、というのが、「学校化社会」の問題だ、というのが、問題意識です。

そのことの立論と、描写には、上野さんらしく、いろいろと鋭い分析と主張があるの
ですが、わたしがおもしろいと思ったのは、
・女の子には、学校的価値基準で「できる」ことをウリにするか、「ジェンダー」を
逆手にとった「女性性」をウリにするか、選択肢がある。(男の子にはないので、大
変だろうなーと思うけど、上野さんには「男の子」のことはわからないので、放って
おく。)
です。

プラス、上野さんの「学生たちのトレーニング」方法が紹介されていて、「フィール
ド・ワーク」による第一次資料の獲得と、「KJ法」による分析→発見を、一年間でト
レーニングするというものです。それが彼女の知的生産の技術で、彼女は教員として
「ハウ」を教えるのだと言います。自分で「問い」をたて、資料、情報を収集し、分
析して「わかった」時の快感は何物にも変え難く、それが「研究者」であることの意
味だと言います。ディーコンの「前頭前野皮質」的快感みたいだね。

女性起業家のグループでも同様に指導し、知的生産性を上げていく方法を伝授するの
だそうです。

なんか、まさしく「ワークショップ」や「参加型」でやっていることと同じですね。
ただ、上野さんの「ハウ」はもちろん社会学に限定されるので、社会学を選考すると
決まった高等教育段階としてはいいけれど、中等教育段階までの問題を指摘する中に、
自分の教育方法論ですべて切って見ている感じがしなくもなくもない部分は、気にし
ないようにして読まないとね。
何が、学校化社会を進めたのかの分析はもう少し必要だなー。
by eric-blog | 2004-07-31 09:50 | ■週5プロジェクト03
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