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ああ、今年もか

ああ、今年もか

今年もIWCの季節が来た。見苦しいプロパガンダ番組がやはりメディアに流れる。IWCは、レスリングの団体ではなく、国際捕鯨委員会の略だ。知らない人の方が多いのだろうと思っていたが、この前クイズ番組で、「絶滅の危機にある動植物の取り引きに関する国際条約は通称●●」というので●●の答えを求めるような質問があったから、意外に「知っているIWCを5つ答えよ」なんていう質問に備えて、クイズ王はチェックを怠っていないかもしれない。
何が見苦しいか、それは、捕鯨に関する議論は、一方は取りたい、一方は取らせたくないという双方が、歩み寄ることなく、攻撃しあう広報合戦だからだ。発見、学びのない論争が続く。
「取りたい」「取らせたくない」という立場であるならば、妥協がないというのは理解できる。妥協がない、とは言いつつ、沿岸での捕鯨については、国際的にも認められている。誰の責任が大であったかは別にして、現在の日本沿岸へのクジラの来遊種と数が、大規模な商業的利用に耐えられるものでないことは確実なことである。「ホソボソと」続けられるのも、これまでの規制のおかげだろう。しかも、最初は遠洋課は切り捨ての取り引きに沿岸捕鯨を利用していただけなのだが。
問題は南氷洋だ。日本が位置する北半球の反対側にまで出かけて、クジラを取る行為を「伝統」や「文化」の愛国心にくるんでくるあつかましさ。日本の沿岸捕鯨の伝統と言えば、網取り捕鯨であったし、その最後の基地であった太地や和歌山の村々から、その網取り捕鯨を駆逐した近代捕鯨砲方式の砲手になった人々がいることをいいことに、「捕鯨の心」「伝統を守れ」と叫ぶ。日本の近代化の波に乗った彼等が伝統の代弁者というわけだ。あつかましくないか。
捕鯨論争は、水産庁から「遠洋課」がなくならない限り、終わらない。なぜなら、彼等が「伝統だ文化だ」から始まり、「クジラは増えている」「クジラのせいで、他の生物が脅かされている」「いつか、世界もクジラという食料資源の選択肢が残っていることに感謝する」など、愚にもつかない議論をころころ生み出すのは、「遠洋」での活動を継続したいからである。そして、そもそも、その「遠洋漁業」自体は、200カイリ時代になって、無意味になった漁業なのである。しかも、200カイリの主張は、日本のあくどい「遠洋漁業=あなたの地先の海はわたしの遠洋=」に対するリアクションであったのだ。
「公海漁業課」とでも名称を代えていたならば、その後の醜態も減っていたものを、200カイリの導入、そして海洋法にも長らく反対しつづけざるを得なかったのは、なぜなのか、いまだにわからない。
遠洋漁業から主要な私企業も撤退したいま、日本の守るべき「遠洋漁業」の実質の姿など、あるのだろうか。
日本にとっては「遠洋課」しか守るもののない捕鯨論争。国益という名の省益、いや庁益、いや課益を追及するためだけに予算を投入する姿勢を、変革することのできないわたしたちの政治がある。国益が課益のために損なわれてすらいるのに。いまだに1955年体制は健在なのだ。
「遠洋課を守る」という政治的意図のために、次々繰り出される文化的、生物学的、生態系的、産業的、感情的論理に太刀打ちしていくだけの論争であることは、数年IWCに通えば見えてくる。その空しさに、身が引けるが、いま、別の側面も見えてくる。
「取りたい」「取らせたくない」という果てしない論争の、一方からだけのプロパガンダ番組を見て育った人々は、いったい国際理解教育的観点から見て、どのような存在なのかという関心である。そして、そのために国家予算が使われ続けていること。
そして、「心は語られ続けなければ、死に絶える」。わたしの心にあるものを死に絶えさせたくはない。南氷洋は公海であり、公海の活用は行うにしても「予防原則」を守った国際的合意の上であるべきだ。そして、オキアミであれ、クジラであれ、南氷洋の資源に頼らなければ生き伸びられないとすれば、その人類の先は危うい。
それが、わたしが南氷洋での捕鯨に反対する理由である。
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クルーグマンの「意図と理屈」の整理に刺激されて書いて見ました。
あ、ちょっとすっきりした。でも、なんで、こんなにたくさん魚を消費し続けられるのかな。いま、中国でシーフード・ブームと言うけれど。一度、しっかりいまの水産をあらためて勉強してみようかな。「対立」「平和」「和解」の教材としても、捕鯨はグッドかも。
相手は、国家公務員、研究所つき、広報予算つき。で、こちらは、ボランティア、では到底息切れしてしまう論争ではあるのですが、興味のある方は次の団体に連絡してみてください。がんばってます。
◯イルカ&クジラ・アクション・ネットワークhttp://homepage1.nifty.com/IKAN/
◯エルザ自然保護の会
by eric-blog | 2004-07-25 17:29
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