50-1(207) 木を見る西洋人・森を見る東洋人
ニスベット, リチャード E ダイヤモンド社、2004 こんなに、東洋人、西洋人を比較した心理学研究が存在したのだという驚きと、以前に、「日本型コンフリクト研究会」で、ホフステッドの指標によって、研究会参加者の点数をつけてみた時、見事に、「日本的ではない」分布を示したことを思い出しました。たぶん、わたしは、これらのテストを受けた時、本人も混乱するのだろうなと思いながら。だって、「草」と「鶏」の絵を示されて、「牛」はどちらの仲間? というような事に答えるのですから。あーあ、大学時代に、心理学の実験が大嫌いだったのを思い出してしまいました。なんで、こんな実験から、そんなことが言えるんだ? という葛藤です。 それは、この本を読んでもまた、感じたことです。やっぱり、心理学研究者には向かない、ね。 ----------------- ・認知プロセスは人間誰しも同じか? ・「高度な」推論プロセスほど形式的な論理規則に従っている。 ・推論のプロセスは何について推論するかによって左右されない。 しかし、新しい思考の規則を教わることで、推論の力は伸ばせる。つまり、推論は「学習」の結果でもある。ということは、それぞれの文化で学んでいる推論のプロセスが違っているならば、「学び合う」ことは可能である。 7 ・科学と数学 ・注意と知覚関係をとらえる東アジア人vs ・原因推測文脈を見落としやすい西洋人vs「後知恵バイアス」がかかる東アジア人 ・知識の体系化西洋人の幼児は名詞から(対象自体の属性)vs動詞を早く覚える(関係) ・推論形式的な論理規則への固執vs矛盾を受け入れる [最近の「複雑系」そして「知の挑戦」なども、より大きな地図でみようとする試みであるように思われる。] 第1章アリストテレスと孔子 第2章その社会背景 第3章西洋的な自己と東洋的な自己 第4章世界のかたち 第5章原因推測の研究 第6章世界は名詞の集まりか、動詞の集まりか 第7章東洋人が論理を重視してこなかった理由 第8章思考の本質が世界共通でないとしたら 終章われわれはどこへ向かうのか 以下、筆者らの行った心理学的比較実験とその他の社会科学からの知見をすり合せ、それらの傾向が同じであることをさまざまな面について論じている。 キーワードとしておもしろいものについての解説だけ引用します。 「場依存性」対象を知覚するときにその背景や環境(場)に影響を受ける程度 「低コンテクスト社会」「高コンテクスト社会」[ホール, エドワード]=相手が変われば自分も変わる 「自己が優れていることを実感していたい」西洋、精進して自己を向上させたいアジア的心理 「自己批判は他者との関係を向上させるためにも、自分自身の問題解決能力を高めるためにも必要」=「自己批判を通じて培われた日本人の完璧主義」vs「自尊心」 「相互協調的=人間関係を強調する子育て」vs「相互独立的」 ・個人か集団か ・個性か集団との調和か ・平等主義と、獲得される地位vs階層的関係と属性による地位 ・規則の普遍性vs文脈や人間関係を考慮した個別的アプローチ 140 性格特性の「ビッグ・ファイブ」: 情緒安定性、外向性、開放性、調和性、誠実性 141 「基本的帰属錯誤」性格特性vs状況要因 「因果モデル」=「目的志向型推論」による歴史の解釈 「後知恵の誤謬」思いもよらない結果が出ても、驚かない 152 西洋人が科学において成功をおさめたこと、原因推測において間違いを犯しやすいこととは、同じ由来。,,,目的の達成に役にたつように状況をモデル化しようとするし、また逆に起こった出来事についても、結果から原因へと「逆向き」にたどりながらモデル化しようとする。 158 「カテゴリー」vs「関係」[161ページの分類は、まったく理解できない!] [わたし自身は英語教育で「動詞」に力点を置いていて、実際、動詞の使い方を理解できれば、文章は創れるとおもっているので、東洋人は「動詞」、西洋人は「名詞」というのはまったく理解できない。もっと言語学者の知見を知りたい] 174 東洋人にとって対象物の属性はかならずしも安定的なものではない。 算数が苦手な子どもは「数学的能力が乏しい」か「学習障害がある」 東洋では、そうした子どもは、「もっとがんばる」「先生が努力すべき」「学習環境を変える」などと考えられる。 177 西洋人はカテゴリーへの関心が高い 英語は「主語優位型」 日本語、中国語、韓国語は「話題優位型」 180 言語構造の知がいと思考プロセス 181 「等位型」バイリンガルと「複合型」バイリンガル 187 論理に関心をもたなかったがゆえに、必然的に東洋人は「脱文脈化」に不振を抱き、抽象的な基本命題のみにもとづく推論を嫌った。 195 東洋の弁証法的推論の3原則 変化の原則世界は絶え間なく変化している 矛盾の原則すべての中に、矛盾しあう2つの側面が共存 関係性、包括性の原則 西洋 「同一律」 「矛盾律」 214 西洋人だけを対象として実験を行い、そこから人間の知覚や認知のプロセスについての結論を得たとしても、決して一般的なものとは言えない,,, 226 文化相対主義にとどまらない 西洋の思考の習慣 ・形式主義 ・両義的な論理=二者択一的立論 ・基本的帰属錯誤 232 東洋の思考の習慣 ・矛盾 ・複雑さ 近代化と西洋化は違う。 近代化=産業化、職業構造の複雑化、富や社会的流動性の増大、読み書き能力の向上、都市化、 多極化するのか、収斂するのか 253 一方から他方へ、他方から一方へという双方向的な変化の力によって、「両者が交わることはある」,,,あらゆる文化のいちばんおいしいところが入っていることを望む 訳者あとがき 260 「包括的思考」「分析的思考」[なぜ、本文にはない言葉で対照されるのだろうか?]
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| 2004-07-20 18:46
| ■週5プロジェクト04
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