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君のためなら千回でも

224-4(1095)君のためなら千回でも
カーレド・ホッセイニ、早川書房、2007
原著 The Kite Runner, 2003

映画を見て、本を読んで、よくできた映画だと思いました。原作は、ある一点を自分の人生の転換点だ、と宣言するところから始まっているために、読み進むことが謎解きになっていきます。映画では、一本の電話から、回顧談が始まるしかけになっています。

原作のタイトルは「カイトランナー」アフガニスタンの凧揚げにはつきものの「凧追い」。カブール名物の凧揚げとは、けんか凧。つまりは凧糸をからめて、お互いに相手の糸を切る。その撃墜した凧を入手して初めて「撃墜」が名実ともに名誉なものになるということだ。

よく切れる凧糸に仕上げるためにはガラス片を糸にくっつける作業が必要だが、主人公の少年と、その遊び友達で召使いの息子は、凧揚げ大会で一位になる。
凧追いとしてとても優秀なその友達との関係が、ある事件をきっかけにぎくしゃくしていく。

召使いとその息子は、ハザラ人で、アフガニスタンでは多数派のパシュトゥーン人によって差別されている。その差別と、召使いという上下関係が、主人公の感情に屈折したかげを落としていく。

そして、アフガニスタンへのソ連侵攻から、主人公の父親はパキスタンに亡命することを決意。このストーリーは、パキスタンからさらに米国に亡命し、そこで大学にまで進学し、結婚し、小説家の夢をかなえつつある主人公が書いているという設定だ。

アフガニスタンからパキスタンに逃れていた知り合いから始まった回顧談は、実際に、その電話の依頼に従ってペシャワールを訪れるところから、現在進行形になる。

実は召使いの息子だと思っていた少年は、主人公の父親の不倫によってできた子どもだったこと、つまり腹違いの弟だったこと。その弟は、アフガニスタンの主人公の育った家をタリバンから守ろうとして死んだ。息子を残して。

弟の息子を救うためにアフガニスタンに入国する主人公。

2001年8月、救出に成功し、ビザの取得もなんとかクリアして米国に戻った二人。

9.11が起こる。

1973年の王の暗殺から、1979年のソ連侵攻、そして1996年のタリバーンによるカブール制圧。少年時代からずっと歴史に翻弄され続けた人生の流れと生と死の人生の物語が紡ぎ合わされていく。

ベストセラーだけある。映画はダリー語と英語だが、ダリー語の響きが心地よい。チャールス・ブロンソンがイラン人だなんて誤解は、こういう映画の作り方をしていたら、起こらないね。

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by eric-blog | 2008-04-02 13:49 | ■週5プロジェクト08
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