49-3(206) グレートジャーニー
"グレートジャーニー「原住民」の知恵" 関野 吉晴;ちくま文庫; ¥ 840 1 "グレートジャーニー—地球を這う〈1〉南米~アラスカ篇" 関野 吉晴;新書; ¥ 998 森嶋通夫さんがなくなられましたね。先日、この週5でも「49-1(204) なぜ日本は行き詰まったか」を紹介したばかりでした。 1923年生まれで、今年81才になられるのでしょうが、新聞では80才とありました。 紹介した本は、1980年代から90年代に書かれた論文の集大成というべきもので、すごい意欲だなと感心していましたが、これが最後のお仕事だったのですね。 こういうことを見ていると、「発現型」と「遺伝子型」に加えて「遺産型」、つまり、森嶋さんの著書という「発現型」に触発されて動くわたしのからだが、この人間社会に存在していて、社会の総体をなす一部になっている、ということを感じます。(表現型とヘンダーソンの訳語はなっています。「35-8(149) 地球市民の条件」) さて、関野さんは、1970年代、南米に行った時、先住民と出会い、ともに居たいと願う。そして「彼等の中に入って行く方法」として「医者」として入ることを決意。日本に帰国して医学部に進学した。という経歴の持ち主。以来、30年に渡り、通い続けている。 アフリカの人類発生の土地から5万キロメートルを移動して南米の先端に着いたという人類の拡散の旅路を、逆行する、つまり、南米の最南端から北米、ベリンジアを渡ってアジア大陸、中近東を経てエチオピア、そしてタンザニアというルートをたどるプロジェクトにかかり出したのが1993年。8年の月日を経て、2001年にアフリカまで到達。自分の足で、というところが、こだわりだ。 ルートに沿いつつ、なるべく原住民としての生活を守っている人々との出会いを求め、特に彼等に焦点を当ててレポートしているのが"グレートジャーニー—地球を這う〈1〉から(13)のシリーズ。そして、"グレートジャーニー「原住民」の知恵"は、彼等の生き方に学ぶ視点でのまとめである。ただただ「先住」していた人々、というのではなく、そこの自然と密着したライフスタイル、生活文化を育んでいる人々を、関野はあえて「原住民」と呼ぶ。 natives, aborigines, indigenous Aborigine=Australian aboriginal Native American nativesを「非白人で遠隔地に居住する人々に対して使うのは避ける」ようにという注釈がOxford English Dictionaryには出ている。 1980年代に、原住民という言葉の差別性が指摘され、それが「先住民」と言い替えられた時代を、関野も生きてきているのだが,いつから「原住民」と呼びたい思いになったのかは明らかにはされていない。 いずれにせよ、関野が彼等との出会いで心打たれるのは、「ハンモックに横たわりながら、周りを見渡しても、目に入るものはすべてこの近くで得られるものばかり」であるというそのライフスタイルである。自然を破壊しないその生き方に、わたしたち現代人が学ぶところは大きいのではないかという。 ちょっと、わたしは、かけ離れすぎていて、何を学べばいいのか、わからないけれど。原理原則はわかるけれど、そこへの筋道が見えない。結局は、「珍しいもの」「目新らしいもの」「感動・出会い」「ウルルン滞在」的に、受け取ったことにしかならないのだろうな。 写真が多く取り入れられている写真集のような本です。 教材として使うのであれば、カラーコピーでしょうか。 「身の回りのものが、身近なところで取れる素材である」という点での、わたしたちの生活との比較ができるのではないでしょうか。いま、「ゴミ問題」についてのまちづくり町民会議での分析の枠組みを活用して、時代の特徴を図示するのもおもしろいでしょうね。未来の世界はどのような方向に行けばいいのでしょうか。5年10年ではなく、わたしたちは、子どもたちに50年100年で展望する力、そちらに向かって歩む力、歩み続ける力をつけたいと思っているのかもしれません。 668年以降に法隆寺の金堂が建造されており、607年の創立時のものではないことがわかった、というのも今日の新聞報道にありましたが、すでに、わたしたちは、1336年前に、「身の回りの素材」で満たされることや誰でもできる手作りとは違う位相を文化の一局面に取り入れたのですよね。たぶん。大多数は、まだまだ原住民的であったとしても。 そのころ、ローマでは、,,,,また、それは別の『ローマ人の物語』。はてしない物語、ですね。「語られないことは、伝えられない」。一人ひとりが「伝えたいこと」こそが大切なのだと思います。 グレートジャーニーがベリンジア(ベーリング海峡)を渡ったのは1万2000年前ごろと言われていますが、人類は互いにどのように交流しあってきたのでしょうね。
by eric-blog
| 2004-07-16 14:16
| ■週5プロジェクト04
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